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エターナルブレイバー  作者: 榛原朔
3幕 誰にとっての悪なりや

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24-いざ攻め込まん、吸血魔城

中央に座するは、禍々しくも天を衝く居城。

それを取り囲むように、3つの駒は配置されている。


彼女たちがどこにいるかはわからない。

しかし、近づけば必ず察知されるのだから、居場所など関係ない。故に、敵の駒は城を取り囲む三角形となる。


必然、どこから攻めるか考えるのも無駄だ。

1人で対等に渡り合えるのもシスイしかいないため、5つの駒は今いる拠点から最も近いポイントにまとめられる。




「本当にこれでいいのか?」


最後の拠点と吸血魔城の中間地点。

集団の真ん中を走るベルが、今更ながら強張った顔で問いかける。


答えるのは、相変わらず屋根まで届くバッグを背負っているクーリエだ。隣を無音で走る彼女は、息を切らすこともなく涼しげに返事をしていた。


「言ったでしょ? 私たちに分散する余力はない。1番近くにいたやつを速やかに倒し、一点突破するしかないのよ」

「おーい、そんなことより雑魚が湧いてきたぞ。

俺はケガで戦えねぇから、サクッとやってくれや」


斥候として、少し前を走っていたアリババの声に、ベルたちは一気に意識を現実へ戻す。


前を見ると、視界には傷跡などものともせずに屋根から飛び降りてくる盗賊王。そして、彼を追うように屋根を駆ける、無名の吸血鬼たちの姿があった。


本当に斥候のつもりだとでもいうのか。

まるで敵を呼び寄せる撒き餌である。隠密が最善であるのに、そのための役割だったのに、迷惑この上ない。


「お前、クーリエ相手でも遠慮なくなってきたな……」

「ここまで来て協力切られるこたぁねぇからなぁ。

モルジアナの牢も開けねぇなら、へりくだる意味はねぇ!」

「私としても、今の方がいいわ。

あなたなんかに媚びられても不快だもの。ただ……」


ろくな連携もなく、雨のように空から湧き、降ってくる十数人の吸血鬼たち。各々血の武器を生成するさまは、なかなかに威圧的だ。


しかし、冷めた目をしたクーリエは気にもとめない。

スっ……と魔導書を構えるベルの前に出ると、山のような荷物から一振りの巨斧を取り出し、まとめて薙ぎ払ってしまう。


「役立たず、みたいに言われるのは不本意ね」

「ひえぇ……」


彼女の数倍はあるかと思われる斧が、ひらりひらりと軽やかに踊る。ぶつ切りにされた肉塊が降ってくる中、クーリエは冷徹な微笑を浮かべて立っていた。


「なんであなたが怯えるのよ」


素早く斥候に戻り、逃げていったアリババの代わりに、ベルは血肉を打ち払うクーリエに軽く睨まれる。


ふいと目を逸らす彼だったが、その先にも彼女の部下であるフレイがいて逃げ場がない。その笑みに観念すると、足元に転がる肉片を避けながら弁解する。


「だってオレ、まだ刃物使ったことねぇし。

リチャードもバラバラにするような戦い方じゃなかったから、ここまでグロいのは初めてだったんだよ」

「……こいつらは神秘じゃないけど、普段から身に宿していることでそれなりにタフにはなってるのよ。

下手に手を抜くと足元をすくわれるわ。

覚えておきなさい。これが、私たち凡人の戦い方よ」


斧に付いた血を振り払い、クーリエは再び隣に戻ってくる。

改めて気が引き締まる指導に、ベルは真剣な表情だ。


「わかってる。中と半ぱなことはしねぇよ。

あと、おびえたんじゃなくてちょっと引いただけな!」

「おーい、敵が‥」

「お前はちゃんと仕事しろ!!」

「あなたはちゃんと仕事しなさい!!」


またもや逃げ帰ってきたアリババに、ベルとクーリエは息を揃えて叱責する。降ってくる無数の雑魚に対し、今度こそ彼は魔導書を開いて応戦していた。




~~~~~~~~~~




……順調だ。怖いくらいに順調だ。

幹部の3人に見つかることはなく、見つかる雑魚も速やかにはい除できている。このまま行ければ、城はもうすぐだ。


けれど、だからこそ思考は何度も繰り返される。

不安に向き合う余裕ができてしまう。

本当にこれでよかったのか……?と。


分散する余力はない。そんなこと、オレだってわかってる。

わかってはいるんだ。けど、どうしょうもなく不安になってしまう。


本当に近くにいたやつを倒し、先に進むことができるのか。

まとまっているからこそ全滅させられ、誰一人女王の元まで辿り着かないのではないか、と。


例えばそう。たった今目の前に、空から3つの影が降ってきているように――


「ハロー、こんにちは。気分はどうだ?」


城が目前に迫った、人気のない大通り。

そこに、突如として3人の吸血鬼が立ち塞がり、赤い空気を錆びついた黒で満たした。



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