金髪の先輩とスイーツ店!?
放課後、私と先輩は2人でスイーツのお店に向かって歩いていた。
学校が終わってから、先輩が校門の所で待っていた時は凄くびっくりした。
屋上でしか会えなかった先輩と放課後に帰るなんて、何だか不思議な気持ち。
先輩は、帰宅の生徒達の注目の的だった。
あの金髪じゃ、目立つよね・・・。
思いっきり校則違反だし。
当の先輩自身は何も気にしてないみたいだけど。
「どうした?」
先輩は、考え込んでる私に声を掛ける。
「あ、いいえ、何でもないです。先輩は、ここの道は帰り道なんですか?」
私は、先輩が店の前を通るって言っていたのを思い出して質問する。
「ああ、通り道。フルーツのデザートの看板が美味しそうだなとは思ってたけど、入るのは無理だった」
「ふふ。そうですよね。スイーツ店に男の人一人は勇気が、いりますね」
私が、笑うと、先輩も表情を柔らかくする。
「そうだな。でも、今はお前がいるから大丈夫だ」
「あ、はい・・・っ」
そう笑いかけられると、何となく調子が狂ってしまう。
私と先輩は、それから少しして、可愛らしい内装の店に辿り着いた。
「先輩!!美味しそうですよ〜!」
私は思わず店のショーウインドウに並ぶサンプルを見ながら先輩の制服の袖を掴んでしまう。
「そうだろ?美味しそうなんだよな。入ろうか?」
先輩は、さり気なく私の袖を掴んでいた手を外して、手を握って店の中に入った。
て、手を握られてしまった・・・。
私は恥ずかしくなって、どうしていいかわからないまま席に座る。
席に座ると手も離されて、再びメニューに目を奪われる。
「うわぁ、迷っちゃいます。どうしよう。このマンゴーづくしのパフェもいいけと、南国のフルーツてんこもりプリンアラモードも捨てがたいです」
私が、メニューを握りしめてメニューを吟味している姿を見て、先輩はなぜか笑っている。
「え?先輩、何で笑ってるんですか?」
「いや、楽しそうだなと思って。来たかいがあったな」
「あ、そうですね・・・」
先輩の笑みを見てると急に恥ずかしくなってしまう。
「決まった?迷ってるなら、俺が、片方頼むから半分にしよう」
「え・・・」
半分・・・て、それは、あれでしょうか?間接・・・。
「あっ、でも、あの・・・」
私が、あたふたするのを見て、先輩はどーした?と首をかしげた。
「あの、私が食べたのを先輩食べても大丈夫・・・なんですか?」
「あー・・・」
先輩はハッとしたような顔をして口を開いた。
「そっか、じゃあ、一口分だけ食べる前に分けようか?」
「はいっ」
私は先輩の提案に勢いよく頷いた。
私と先輩は、デザートを頼むと、頼んだものが来るまで空想の話をしたり、最近の趣味や、天気や他愛もない話をした。
どうしてだろう。先輩と話すと楽しい。
空想の話をできる人だからかなって思ってたけど、普通の会話も楽しい。
先輩が基本的に私の話を楽しんでくれてるって分かるから、きっと私も気兼ねなく話せるんだと思う。
そうしているうちに、南国フルーツのパフェとプリンアラモードがやってくる。
「先輩、プリンアラモードとパフェ、どっちを食べますか?」
「どっちでもいいよ、お前が選んで」
「あ・・・はい」
私は2つをじっくり見た末に、プリンアラモードを選んだ。
その姿を先輩にまた笑われてしまった。
「一口分とフルーツ、交換しましょうね」
私は、先輩のパフェにはないフルーツとプリンをすくってパフェの上に置く。
先輩も、私にプリンアラモードにはないフルーツとパフェを一口分置いてくれて、私はもらったパフェとフルーツを口に入れる。
「美味しいです!南国ですねっ」
私が、南の風を感じながら言うと、先輩は笑った。
「なんだよ、その感想」
「だって、食べてみてくださいよ。何ていうか、ヤシの木の生えた海岸でハンモックに揺られながら食べてるような・・・そんな感じです」
「南の島かー」
先輩は私の言葉を聞くと、自分もパフェとフルーツを口に入れる。
「うん、確かに。南国だな。この独特の酸味がいいよな。波の音、聞こえて来そうだな」
先輩がたのしそうに言うから、私もついつい空想がはかどる。
「そう、そこにウクレレの音が響いてくるんですよ。カラフルな鳥が飛んで、優しい波の音を聞いてると、そのうち夕日が沈んで・・・」
「海も雲もオレンジ色に染まってキレイだろうな。南の島。鳥もオレンジに見えるかもな・・・」
先輩も、空想に入り込んでいるのか、ぼんやりとした表情だ。
「先輩、南の島に一つだけ持っていけるなら何がいいですか?」
私は不意に思い付いた質問を先輩に尋ねる。
「定番の質問だな・・・そーだな」
先輩は一瞬考え込むと、チラッと私を見る。
「お前がいれば、退屈しなさそうだけど」
「わ、私ですかっ?」
意外な言葉に声が上ずる。
「空想は聞かせられますけど、サバイバルはちっとも役立たないですよ」
プリンアラモードをすくいながら、私は悲しげに言ってみせた。
「ははっ、まぁいいじゃん。2人で空想してれば。マッチ売りの少女みたいに」
「ちょっと先輩、マッチ売りの少女は最後は死んだんですけど」
そんな話をしながら、スイーツを食べていると、時間が経つのがあっという間だった。
店の会計で、私の分は自分で払うと言ったけど、先輩は、いいから、と言っておごってくれた。
誘ったのは俺だから、と。
年上で頼れる先輩だなぁと思う。申し訳なさもあるんだけどな・・・。
それから、途中の分かれ道まで一緒に帰宅することにする。
「今日はありがとうございました、先輩、すみませんっおごってもらっちゃって・・・」
私が恐縮して言うと、先輩はふぅとため息をついた。
「それ、もう何度目?気にしなくていいって言っただろ?俺の方が先輩なんだし」
まぁ、それはそうかもだけど・・・気になっちゃうんだよね。
「でも、やっぱり、おごってもらうだけじゃやなので、今度は私にもおごらせてくださいね」
私は、そう先輩を見て言った。
「んー。まぁ、いいけど。じゃあ次は任せたぞ」
「はいっ、了解ですっ」
私がそう言うと、私と先輩はお互い顔を見合わせて笑う。
「何かさ・・・お前と会えて良かったよ、俺」
突然歩みを止めて私を見る先輩。
私も慌てて被せるように言う。
「私こそ、本当に良かったです!先輩がいるから学校が凄く楽しいですっ!」
私は先輩に笑いかけた。先輩に会えて本当に本当に気持ちが救われて、軽くなったから、いくらお礼を言っても足りないよ。
先輩は、なんだろう私にとって・・・・。
「私にとってお兄さんみたいな存在です!」
私の言葉に一瞬先輩は目を丸くした。
「は?兄ィ?」
その後、目つきが少し怖くなった気がする。
「あっ、何かだめでした?私一人っ子なので、こんな風にお兄さんがいたら話せてたかなぁって・・・」
「あー・・・そうなんだ」
先輩は頭をかきながらそう言った。何だろ?
「でも、俺は兄じゃないぞ」
彼の言葉に私は頷く。
「それは分かってます。空想の話をこんなに出来たのは初めてなので、私にとって特別ってことを言いたかったんです」
私がそう言うと、先輩の顔が何だか優しくなる。
「それなら、特別な存在って方がいいな」
「はい、じゃあそれで。どちらにしても感謝してるんですよ」
私は心からそう言った。
「俺もだ、毎日学校行くの楽しいよ」
先輩の明るい顔を見て、私はホッとした。最初はもう少し雰囲気が暗かったような気がする。
最近は一緒にいると、良く笑ってくれるし、優しい雰囲気を感じるんだ。
私と先輩は、そのまま分かれ道で解散したけど、その後、一つの問題が持ち上がっていたことをその時の私達はまだ知らなかったんだ。
「川本」
教室での10分休憩、担任に呼ばれる。
なんだろう?教師に呼ばれる事自体珍しかったけど、素直に前に行った。
「はい?何ですか?」
すると先生は声を潜めるようにこちらを゙向いて言った。
「昨日の放課後、3年の青宮海斗といたって聞いたが本当か?」
「え・・・?」
3年?っていえば、あの先輩だよね?考えてみれば名前聞いてなかったからその人と同一人物か分からない。
でも、昨日の放課後待ち合わせたのはあの先輩しかいない。
「えっと、その人って髪が金髪ですか?それならそうです」
先輩の特徴の大きいのがそれしか分からない。名前、聞いとけば良かった。
「そうだ。校則違反のサボり魔で、3年の担任も手を焼いてるそうだ。川本は大人しいだろ?何で昨日一緒だったんだ?脅されたりしてないか?」
私はその言葉を聞いて、背筋が寒くなるのを感じた。
先生は私が先輩におどされてると思ってる?
「いえっ、違います。普通に友達です」
私の中は怒りの感情と誤解を解きたい焦りの感情が混ざっていた。
「友達・・・?青宮は、素行もあまり良くない。近づかない方がいいぞ。何か悪いことがあってからじゃ遅いんだからな」
先生の言葉に、私は怒りの感情が怒涛のように沸き上がってくるのを感じた。
どうして?どうして見た目で判断するの?決めつけるの?
先輩は・・・そういう目に今までもさらされていたんだろうか。
「先生、私、先輩のこと話してて楽しい大事な友達だと思ってるんです。心配ありがとうございます。でも大丈夫です」
そう言ってペコリと頭を下げると、担任が何が言っているのを無視して席に戻る。
こんな風に先生に言い返したりしたのは初めてかもしれない。大人しい私があんな事を言ったから、先生も驚いているだろう。
でも、先輩があんな風に悪者にされるのは、我慢できなかった。
昼休み、すぐ屋上へ駆け上がる。
先輩の顔を早く見たかった。
ドアを開けると、そこには先輩が床に座ってこちらを見ていた。
何か悲しそう・・・?
「先輩?」
私が呼びかけると、先輩は、私に手招きをした。
大人しく側に行くと横に座る。
「何か言われなかった?先生に」
「あ・・・」
ピンときた。先輩も先生に言われたのかな?私との関係のこと。
「言われ・・・ました」
だからそんな悲しい顔してるんだね、先輩。
「悪かったな。嫌な思いさせて。俺といるとお前も悪く見られちまうな」
先輩は床に手をつくと空を見上げた。
「俺とはあまり関わらないほうがお前の為かもな」
「嫌です」
私は先輩の言葉に被せるように言う。
驚いた先輩の表情も気にせず、話し続けた。
「そもそも、ここは私の場所なんです。先輩がたまたま居合わせたんですよ。だからこの場所に私は来る権利があります。それに、先輩は、もう私の特別な存在なんですよ。昨日いいましたよね?だから関わらないなんて無理です」
私がそう言うと、先輩は、戸惑ったように言う。
「でも、お前の評判が・・・」
「別に、もともとそんなに良い評判でもないですよ。大人しいし、目立たないし。それに私は先輩と話すのが楽しいから学校に希望が見えるんです。先輩と話せないんじゃ学校来る意味ないですよ」
私がそう言うと、先輩は微笑んで私の手を握った。
「ありがとう、そう言ってくれて嬉しいよ。でも、お前、大人しくもないだろ?」
「クラスでは大人しいんです、私と話合う人いないし」
「そーなのか?もったいないな。こんなに面白いのに」
先輩が私に言ってくれる言葉が嬉しい。
何か心がむず痒くなる気持ち。
「先輩だけですよ、いつも話聞いてくれてありがとうございます。ところで・・・今更なんですが・・・」
私は気になっていたことを話す。
「今朝、担任の先生に言われて気づいたですけど、私、先輩の名前知らなくて・・・。青宮海斗、さんで合ってますか?」
私は先生に聞いた名前を言ってみる。
「あ?そうだったな。ああ、俺は青宮海斗だ。お前は川本瑞樹なんだってな」
あ、先輩も先生に名前聞いたんだ。
「はい、そうです。何か、名前も知らずに話してたんだなって思って。一応確認していこうと思って・・・」
名前も知らずにずっと会話してたと思うと、それはそれで凄いことだよね。
「お前ってずっと呼んでるのもなんかな・・・。瑞樹って呼んでもいいか?」
な、ななな名前呼び?いきなり?!
動揺したものの、断る理由もないので、私は頷く。
「そっか、よろしくな、瑞樹」
先輩は嬉しそうに言った。先輩が嬉しそうだと何だか私も嬉しくなるな。
「あの。私は何て呼べば・・・青宮先輩でいいですか?」
「え?何で?」
その言葉を聞いて、眉をひそめる先輩。
何か悪いこと言っちゃったかな?
「あ、じゃあ何て呼びましょうか?」
私の問いに、先輩は即答する。
「海斗って呼んで」
「海斗・・・さん?」
そう呼ぶと先輩は首を振る。
「呼び捨てでいいよ」
「それはさすがにっ、先輩なんですから」
私が恐れ多くてそう言うと、先輩はちょっぴり不満そうな顔をした。
「俺は別に敬語とか使ってほしくないんだけどな」
「あっ・・・じゃあ、がんばって少しずつ、直します・・・直すよ」
私がそう言うと、先輩は、ニコッと笑う。
「じゃあ、呼び捨ても練習しようか?」
「え・・・・」
呼び捨ての練習かぁ。ハードル高いなぁ。
「か、海斗・・・」
「うん、頑張って自然に言えるようになれよ」
何でこんな事になってるんだっけ?
私は何故か赤面しながら考えていた。
屋上では、今日は空想しなかった。
名前呼び練習という謎の練習をして、放課後一緒に帰ることになったからだ。
周りに変な目で見られても私は構わない。
私だって空想好きの痛い人って周りに思われているだろうし。
それに、先輩は悪い人じゃない。絶対に。
だから、何も恥ずべき所はない。
放課後までの時間、退屈な授業を゙延々と聞かされながら、やっと放課後を゙迎える。
その途端、私は急いで校門へと走る。
先輩は、もう先に来て門の横に座っていた。
「瑞樹」
ドキッ
いきなり名前を呼ばれて心臓が跳ねた。
名前呼び、体に悪い・・・
「あ、ごめんなさ・・ごめん。遅くなっちゃって」
敬語が反射的に出てしまうので、修正しつつ会話する。
先輩は、笑って、行こうか、と手を差し出した。
・・・・ん?
これは手を繋いでいくの?
私が迷っていると、先輩が私の手を掴んで歩き出す。
友達とかあまりいない私は、これが普通なのか今いち分からない。
でも、そのまま大人しく手を繋がれたまま、私は先輩と帰り道を歩き出したんだ。




