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酒罵微忘碌  作者: 久世
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占い稼業もてぇへんでぃっ

 夜のお店で知り合った女の子たちでも、お店以外でのお付き合いが多くなる子も結構いる。特にうちの会社が行きつけにしているお店は、安いキャバクラキャバクラしたところとはちょっと違うのもあり、在籍する女の子たちも割と長くいるので必然的に付き合いも長くなる。同伴やアフターにとどまらず、プライベートや会社のオフィシャルなイベントごとに、ひょっこりと数人の夜の蝶や元蝶たちが参加していることもしばしば。特になにをするわけでもなく、楽しくおしゃべりして、飯食って呑んで帰るだけなのだけど、ごく普通に宿泊もしたりするので詳しくは伏せておこう。ここで書いていることは、全てフィクションではあるけれど、社員のご家族等に知られるとまずいこともあるかもしれない。フィクションだけれど。


 さて、そんな蝶たちの中に占い師を生業にしている子がいた。


 その子とも長年のお付き合いだったが、それはそれはいろいろとバイタリティを持ったお方でありまして、夜のお仕事以外にも、デザインの仕事や、海外にしばらく移住してそっちでも何かしてたりと、結構幅広く活動していたようだ。そんな中の一つに「占い師」としての顔があった。タロット占いをメインとしていて、会社のイベントにもタロットカードを持ってきていることがあったりして、そういうときは色々と占ってくれていた。

 大人同士でも占いというのは割と盛り上がるもので、特に酒の肴的にはうってつけで話題に事欠かない。だいの大人がよってたかって占ってもらい、あーでもない、こーでもないと、夜を明かしたりもする。

 一方、僕はというと、あまり占いというものに特別な関心はない。みんなが盛り上がっているところを傍目に、一人隅っこからそれを眺めながら酒を煽っているタイプ。仮に占ってもらったとしても、良い結果であれ悪い結果であれ、特に受け止めることもなく、「ふぅん」で終わってしまうし、「あなたはこれこれこういう性格の人です」みたいなものを言われたとして、合っていれば「すごーい」というし、外れていれば「へえ」という。本当に興味がないのだ。


 そんなことよりも、その子、(ここから「先生」とする)がとても美人でね。性格もスパっとしていて、かっこ良いし、自分にないものを持っていて憧れもある。そして、少しだけ、そう、ほんの少しだけ先生に恋心を抱いていた。


 僕は恋に恋しがちなおじさんである。恋おじ爆誕。


 聞けば、先生は占いの館的なところにお勤めだという。都内に数店舗あって行ったり来たりしているそうだが、新宿にも店舗があるようだった。先生の占い師としてのネームもありがたく拝聴し、メモった。ホームページを見ると、あるじゃないか、先生の名前が。あとは、新宿店舗にやってくるタイミングを見計らってぽちっと予約。そう、先生には何も告げずに。


 とはいえ、予約名は、先生にも通じるであろう、僕らの間での僕の通称とした。気づくかな?


 意気揚々と館に出向く恋するおじさん恋おじ。待合室に入り、時間を待つ。風俗の待合室もこんな緊張感なんだろうか? とか思いながらそわそわしていると、あっという間に予約名を呼ばれる。いざ、入室。


「え、○○じゃん! びっくりした。何してんの!」

「先生。こんにちは。占って欲しくてきました」

「え、バカじゃん。こないだ言ってくれれば占ってあげたのに」

「いえ、仕事としてきちんと占って欲しいんです!」

「名前が○○だったから、ちょっと○○のことがよぎったけど、まさだよ。驚かせないでよ〜」


 ってな具合で。ちょっとしたサプライズが好きな僕ですが、ストーカー行為はしませんので、ご安心ください。


 一応、客として迎え入れてもらい、いざ、ここからが勝負の時。


「それで、何占って欲しいの?」

「僕と、先生の恋愛運を!」

「え、ヤバ。マジでバカじゃん?」


 にこにこしながら、そういう先生。にっこりする僕。


 そういうネタでもあり、でも、ちょっとした告白でもあり。タロットに良い結果が出れば、それをネタに先生をゆすって……ではなく、それを口実にちゃんと告白すれば良いわけだし、そうでなければ、「あー残念!」で、お噺のネタに昇華する。


 僕、策士、現る。


「ええ、まあいいけど。普通に占うね〜」


 そういうと、先生はタロットを手際よく並べ、パタパタと開いていき、このカードは云々……とキビキビと説明し始める。さすが、本職である。


 ただ、タロット知識ゼロの僕には、説明された内容がどうあれ、その真実性はわかりようがない。


 怒涛の勢いでカードがめくられ、よどみなく、すらすらと先生から発される言葉の数々。


「これとこれは正反対を意味するもの」

「このカードとこのカードは、相性よくない」

「未来に悪い何かがあるって出てる」

「成就することはないでしょう」

「別に良い相手が見える」

「ちなみに、私彼氏いるからね」


 先生、最後のは余計ではないか?


 詳しい文言までは覚えていないけれど、おそらくそんな感じで、きっとカード内容どうこうはおいといて、めちゃくちゃ本心からのお断りのお言葉を湯水のように頂戴する。


 そこまで気持ちよくぶった斬らなくても良いと思うんですけどね!


 テキパキとふたりの相性の悪さをお伝えいただき、しかと受け止め、相当早めに占い? は終了したので、いちおう終了時刻までは雑談タイムだ。風俗で早漏すぎたときのやつではないか……。


「そういえば、今日仕事終わってから女子会やるけど来る?」


 お誘いいただいたので、もちろん馳せ参ずる旨を伝え、数時間後に再合流。そこには先生と同い年ぐらいの、僕からしたらだいぶ年下のギャルが二人ほど。三人の女子会に、場違いな恋敗れおじさんが一人。もちろん話題は、「○○がアポ無しで私との恋愛運を占いに館に来て振られた噺」である。大ウケだったので感無量の夜だった。


 夜の蝶やその友達たちはノリが酔い。

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