そうだ、那覇へ行こう! 「那覇の嬢は○○持ち」編
僕らは会社の家族連れ旅行で沖縄の割とメジャーな観光地をいくつも巡る旅行中だった。
最終日前夜のことだ。最後だし、独身組だけで夜の街でも社会科見学に行こうという話になり、数名集まってタクシーに乗った。
ここでいう独身組とは、単純に家族を連れてきていないだけであって、本当に独身というわけではない。その時リアルに独身だったのは、僕ともう一名ぐらいだっただろう。
および立てしたタクシーの運転手さんに、松山の夜の店を案内して欲しい旨を伝えると、割とノリノリでディープなお店をいくつか口頭で紹介し始めてくださった。
話だけではなかなかどこへ行こうと決めるのも難しく、それなら実際に見て決めようじゃないかということで、運転手さんにいざなわれるがままに、松山や風俗系が多い辻地区あたりの細い路地をタクシーでちょこまかと行ったり来たり。
「ディープな」というのは、いわゆる普通のキャバクラや普通の風俗店ではなく、例えば、言ってみれば違法ゾーンの……、そう、連れ出し系であったりとか、そういうところのことを指す。
基本的に僕らご御一行様は「独身組」ではあるものの半数以上が「妻帯者」である。しかも、今回は独身組として参加しているとはいえ、他の社員の「ご家族様」らは、同じホテルに宿泊しているわけであって、当然ではあるが、あまり羽を伸ばすわけにもいかない。だけれども、社会科見学に来たからには、一応検討するそぶりは見せつつ、行けるところまでは行くしかないわけだ。
特攻隊長として任命された最年少かつリアル独身の僕は、行く先々で、ただ一人店に派遣され、中の様子を確認し、店員と少しおしゃべりしてから、タクシーに戻って偵察した状況をみんなにシェアするという重要任務をひたすら黙々とこなしていた。
とはいうものの、どの店舗も、第一感として
「うん、ここはぼったくられる」
という至極当然の感触ばかり。この状態で、あと何店舗めぐったとて同じことの繰り返しだろうし、まあぶっちゃけそういうお店でどうこうしようなんて状況でもないよねということで、大人しく、ごく普通のキャバクラへと足を向けた。
「普通のキャバクラ」とはなんだろうか。ここで禅問答をしても仕方がないので、少し話題は外れてしまうけれど、沖縄のキャバクラの特徴をご紹介しておこう。
まず、沖縄のキャバクラは2名以上で行くとセット料金が安くなる。 一人客だと、客とキャストがマンツーマンになるため、セット料金も、地方都市とはいえ、松山あたりだと東京並みにか少し安い程度なるのだけれど、「保証」といって、この時間女の子を最低○名つけますというセット料金になると、一人のセット料金がググッと下がることになる。
1セットマンツーマンだと例えば5000円だけど、保証1名なら全員3000円といった格好だ。
これに、大体泡盛のハウスボトルが付いてくるので、暗がりのしっくな店内でも、沖縄の雰囲気は多少なりとも味わえる。
地元の方たちは、普段居酒屋に飲みに行く感覚でキャバクラを利用することが普通のため、アットホームなというかスナックノリの店舗も多く、あまりビジネスを感じたくない人には、割とお勧めでもある。みんなで集まってワイワイ楽しく飲むイメージだ。
ひとつ注意が必要なのが、キャストにも2種類の女性が存在するということ。
一方は、普通に地元の女の子なのだけど、もう一方は、都会から出稼ぎというかリゾートバイト的な形で短期間働きに来ている女の子たちだ。どの店舗にもだいたい両方の女の子がいるにはいるのだけれど、地元民が主力か、そうでないかで、値段や雰囲気も大きく変わる。
せっかく沖縄まで来て、色々話した結果「なんだ普通に東京の近所に住んでいる女の子じゃん」なんてことになると、ちょっと損した気持ちにもなるし、また次回沖縄を再訪する機会があったとしても、その女の子に沖縄で出会う可能性は限りなく低いということになる。
じゃあ、地元民を狙えば良いかというと(狙うというのがどういう意味かにもよるが)そうでもない。
というのも、地元出身でキャバクラで働いている女の子の8割(この割合は誇張されている可能性の方が高く、事実かはさておき、多いことは間違いない)はシングルマザーだったり、既婚の子持ちだったりするそうなのだ。離婚率日本一の沖縄で、働き口もそれほどないわけなので、必然的に夜の街に職を探すことになるので、当然といえば当然か。
那覇の嬢は子供持ち。
「子供まで含めて大事にします!」という気概があれば、地元の女の子を狙うのもよいかもしれないが。
ちなみに、沖縄のキャバクラには概ねオリオンビールも置いてあるのだけれど、女の子が「私、アサヒで」と、自分用のビールとしてスーパードライを頼んでいたら、間違いなく地元民である。味比べなら、やはりアサヒスーパードライに勝負ありとなるため、地元の女の子がわざわざオリオンビールを頼むことはないけれど、リゾートバイトで沖縄に遊びに来ている女の子からすれば、自分も旅の延長でもあり、東京で飲み慣れているアサヒではなく、オリオンという選択肢に、といった具合。
付け加えると、地元の子はそのまま本名で働いていることが多いんだとか。なぜなら、普通に地元の友達とかも来店するため、源氏名で働いている方が恥ずかしいようだ。
金城とか、島袋とか、それっぽい苗字とお店での名前の組み合わせで、Facebookなどを検索してしまわないように。絶対に!
そこには、我が子との赤裸々な日常が綴られているかもしれないのだから……。
そんな那覇の夜の街、那覇は松山へ、僕たち独身組は繰り出した。