表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/50

紹介





   * * *




「なんとか片付いたわね」


 計三体の〈カヴォート〉の(むくろ)をさらすことになった砂漠地帯は、すっかり日が陰りつつあった。


「意外としぶとかったわね。とくに最後の奴。ナイトの攻撃にも耐え抜いてたわよ?」

「はい。機属を完全に破壊するには核となっている“コア”を破壊するまでは油断できないとか」

「? なんでアンタがそんなこと知ってんの?」

「いやその、な、なんでかなー、あははは……」


 まぁいいと言う風に肩をすくめるシスター・カナイ。


「カアスも、ひとまずお疲れ…………カアス?」


 カナイの言葉に反応を返さず、銀髪紅眼の人物は一心にナイトの方を見やる。

 そして、か細い声でたずねる。


「ナイトさま……先ほどの機属(カヴォート)との戦闘で見せた御力は?」

「ああ、こいつは転移者なの。異世界転移者」


 カナイが親指を突きつけて、あっけらかんと口にする事実に、ナイトは恐縮したように頭をかくしかない。

 シスターは言葉を続ける。


「それで、異世界転移者であるナイトが授かった、というか発現した戦装、みたいな感じのやつが、さっきのやつよ。名前は『ジズ』」

「そ、そういうこと、らしいです」


 自分で説明する手間が省けたことを喜ぶべきか嘆くべきかわからないナイトは、曖昧(あいまい)に微苦笑を浮かべる。


「──」


 カアスは無言を貫く。

 銀髪紅眼は何度も目を瞬かせ、ついで、腰のスリットから太腿をのぞかせながら異世界転移者へと歩み寄る。


「な、何か?」


 ナイトが疑問を呈する間もなく、カアスはその場に十字架を置き片膝をついて(ひざまず)いた。

 震える声が暗くなった砂漠の砂の上に落ちる。


「では、貴方が、あなた様が、神に選ばれた存在、予言の体現者なのですね」

「え、選ばれた? 予言の?」

「顔をあげな、カアス。まだ、ナイトがそうだと、決まったわけじゃあない」


 ですがと抗弁しかける後輩を、金髪褐色のシスターは眼の圧力によって黙らせた。


「なにより。ナイトは『元の世界に帰りたい』と望んでいるからな。『神に選ばれた』としちゃあ何とも言えん」

「そ、そんな! …………いえ、そうですね。転移者の皆さま方のほとんどが望むところは、そこなのですよね」


 自分の中で納得を得たらしいカアスは、少しばかり気落ちした風を見せるが、すぐさま元の快活な調子を取り戻す。


「ナイトさま。あらためて御挨拶を。私は天使(マルアフ)教団・第七戦装〈レリウーリア〉の使い手、名をカアス。以後よろしくお願いいたします」

「は、はい。こちらこそ」

「おなじ男性(・・)同士、仲良くしましょう!」

「……え?」

「──え?」


 日の落ち切った砂漠の底で、ナイトの絶叫がこだました。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ