第8話 異界同士が衝突せし場所
修正済み
夕飯の片付けを終えて、アルが焚き火をぼんやりと眺めているとアルバートが暖かいお茶を入れてきてくれた。
「アル、お茶が入りましたよ」
「ありがとうございます、師匠」
「そんなに呆けてどうしましたか?」
お茶を口に入れ一息ついてから話始める。
「はぁ、境界都市へ向かうことになって色々ありましたけど、まさか境界都市へ向かう当日からスタンピードに出会うとか災難だなぁって」
「こればかりは自然の摂理ですから仕方ありませんよ」
「まぁそうなんですけど、もう少しゆったりと向かいたかったです」
「そうですね、安全に行けることに越したことはないですからね」
アルバートと、のんびり会話を楽しむ。
アルバートから話の話題を振ってくる。
「アル、そういえば<魂装>は扱えるのですか?」
「魂装ですか....魂装ねぇ、やはりトラウマが尾を引いてる影響で五年前から一度も呼び出せてませんよ」
<魂装>とは魂の中にある存在核(パーソナリティまたは自己を自己たらしめる核)をエネルギーに変換して魂から引き出し、武具として呼び出す<魂創霊装>と呼ばれる特殊技能である。
<魂創霊装>略して魂装は、まず己の魂の自覚から始まり、揺るぎない確固ある信念がある場合に限り武具として呼び出すことが可能である。
通常の人間には存在核に揺らぎがあり、ひとつの純粋なエネルギーとして魂から引き出すことが出来ない。
引き出せたとしても存在核が引き離されてしまった魂が形状を保てなくなり身魂共に消滅か、外界に晒された存在核が外界の圧力に耐えれなくなり存在核が消滅し、廃人になるかの二択である。そのため扱える者は極小数である。
それだけの危険があるが、魂装を扱えるようになるメリットは計り知れない。まず存在核を武具として扱うことなだけあって使い手によって能力は千差万別、その力は魔法や魔術では説明できない超常能力を有しており魂装が扱えるともなれば魔法など関係無い程の絶大な力が手に入るだろう。
アルバート言うようにアルも一応魂装の使い手である。しかし五年前の魔獣事件以降トラウマが尾を引いて存在核に揺らぎが生じてしまい、五年前以降魂装を呼び出すことに成功した事は一度もない。
「やはり、トラウマが影響しているのですか?」
「ええ、五年のトラウマにより存在核に揺らぎが生じてしまい、あれから一度も魂装を呼び出すことに成功してないです.....」
「そうですか.....それは仕方ありません、魂装とはその人の感情や思念に左右されやすいものですからね。境界都市へ向かうにあたって"魂装を再び扱えるようになる"ってのも、ひとつの目標としていいかもしれませんね」
「そうですね....先は長いし境界都市で自分が成長するって意味でもアリかもしれませんね」
アルバートが入れたお茶を堪能しつつ、会話に花を咲かせるのだった。
「さて、夜も遅いしそろそろ寝るとしましょう」
「ええ、そろそろ寝ますか。それでは師匠、今日はお疲れ様でした。おやすみなさい」
「アルもお疲れ様です、ゆっくりと体を休めなさい」
アルとアルバートは別々のテントに入り床に就く、アルはテントの中で眠りにつこうするが、魂装のことが頭から離れない。
「魂装か....姉さんを助けるために使って以来一度も僕の声に反応してくれない.....やっぱりまだまだ精神的にも未熟なんだな、自分って」
その日は過去に憂いつつ眠りに着くのだった。
次の日、日の出と共に目が覚め、テントから外に出て軽い準備運動をする。
「おはようございます師匠」
「おはようございますアル」
アルバートは先に起きて、朝食の用意をしてくれていたようだ。
「朝食は既にできておりますよ」
「僕がなにか手伝うことありますか?」
「あとは盛り付けるだけですので席に着いて待っててもらっていいですよ」
「分かりました」
席に着いて待っていると、昨日昼食で食べ損ねたサンドウィッチと夕飯で食べたバトルバイソンのコンソメスープが運ばれてくる。
朝早く冷えた空気の中、温かな湯気を立ち昇らせて現れるコンソメスープはとても魅惑的だ。アルは冷えた手で恐る恐るコンソメスープの器を持ち、口に運び込む。
(あぁ....温かい.....こういう時地球側では犯罪的な美味さというらしいが、その意味が実によく分かる!こんな寒空の下、温かい物を求めて待ちわびる僕はまさに生者に群がるアンデッドと同じだろう。地球側の人間もよく言ったものだ)
朝食を食べ終え、アルバートに今後の予定について話しかける。
「師匠この後の予定はどうなってますか?」
「まずテントなどの野営道具を片付けてその後、昨日燃やした魔獣の死骸が魔力溜りにならないように浄散のポーションを振り撒いて対策し、その後境界都市へ向かうという手筈です」
「僕が魔獣の方を片付けるよ」
「それじゃあ任せますね、それでは片付け始めましょうか」
アルバートと別れクレーターの方へ向かう。
大量の魔獣の死体を燃やしたり埋めたりした場合は必ず浄散のポーションをかけないといけない。
何故かと言うと魔獣達の死体には多かれ少なかれ魔力が宿っており何も処置せずに死骸を一箇所に放置していると過剰な魔力が溜まりができてしまい、そこで死んだ魔獣達がアンデッドになって蘇り、スタンピード化する場合があるからだ。
過去には浄散を怠りアンデッドのスタンピードで滅んだ国もある。
それを防ぐためにもアースガルズの国々では(国毎に少し違うが)ほとんどの国が浄散を義務づけておりそれを怠った場合、罪に問われる可能性もある程である。
普通の魔獣狩りぐらいならば死体を放置していても自然と魔力が霧散するので問題はないが今回のように大量の魔獣を殺害した場合は数が数なため、自然には魔力が霧散しきれずスタンピード化してしまうのだ。
浄散のポーションは聖属性を込めてると言われるが、世間一般的に光属性と呼ばれる魔法を込めて作られているポーションである。
そのため浄化系の光魔法が扱えるなら必要ない代物だが、人で浄散仕切るのにも限度があるため浄散のポーションが使われることが多い。
浄散のポーションは教国産がほとんどであり他のところで作成される物もありはするが、効果が教国産に比べるとワンランク落ちてしまうので大半の者が教国産を使う。
アルは魔導ポシェットから浄散のポーションを取り出し、少し魔力を込めてから横一文字に大きく振りかぶり、風魔法を用いて広い範囲に拡散させる。浄散のポーションの効果で辺り一面に淀んで溜まっていた魔力が霧散し、綺麗な光となって散っていく。
「いつ見てもこの光景は綺麗で美しいな」
晴れ晴れとした気持ちでアルバートの元へ戻る。
「浄散は終わりましたか?」
「ええ、滞りなく終わりましたよ」
「こちらも出発の用意が完了していますので、そろそろ境界都市へ向かうとしましょう。一応組織側にはスタンピードで遅れると連絡しておりますが、ここからでもまだ半日はかかる距離ですし、これ以上日程を遅らせることは向こう側にも迷惑でしょう」
「ならさっさと向かいましょう、師匠」
早速自動車に乗り込み最終確認をする。
「アル忘れ物はありませんか?」
「大丈夫ですよ」
「なら境界都市へ向かって出発しますよ」
腹の奥底まで響くエンジン音と共に境界都市へ向けて出発するのだった。
境界都市近辺では異界同士が繋がったことによりマナ濃度が異様に高く、その影響で大気中のマナが飽和状態になり気体を維持できず、霧として発生している。
霧は境界都市へ近づけば近づくほど濃霧になり、境界都市行き専用の道路を通らなければ境界都市へたどり着けないほどの濃霧である。
「そろそろ大穴に着きますよ」
「もうそこまで来たのか.....」
<大穴>とは大変革によって地球側とトルメキア霊峰が繋がりアースガルズと地球を行き来する巨大トンネルこそ、大穴と呼ばれる異界ゲートである。
アルの目の前に写るのは雄大に聳え立つ世界屈指の標高を誇る山々こそ、龍王国の始祖が眠る場所とも言われているトルメキア霊峰だ。
「大穴近くに来るとやはり霧が濃くなるね」
「ライトをつけていないと先を見通せない程ですからね」
車は大穴の中に突き進んでいく。
「境界都市へ着いたらどう動く予定ですか?」
「組織に挨拶をするのは明日の手筈になっておりますので、とりあえずは境界都市へ着いたら私達の住まいとなるアパートに向かい、荷解きをする予定です」
「行動については了解したけど、僕と師匠はどういう体で組織に加入するの?」
「私が退役した元軍人でアルはその弟子という素性で、昨今特殊事案の増加傾向に対し、優秀な人材を龍王国から派遣する。という設定になっておりますから特に問題はないでしょう」
「普段から師匠のこと師匠と呼んでるし、客観的に見ても王子とその従者に見えないはずですもんね」
「それにアルには王族としての風格がありませんからね」
「あのぉ、しれっと僕が地味に気にしてることディスってくるのやめて貰えます?」
「おやおや洒落のつもりで言ったのですが図星ですか.....」
「絶対この人遊んでるよね!?チクチク地味に嫌なこと言ってこないでください!」
こうして僕と師匠は和気あいあいと(一方的に)いじり合いながらながら境界都市へ続くトンネルを進むのだった。
霧が立ち込めるトンネルはあと少しで途切れ、目の前には燦々と輝く太陽の光がトンネルの中に差し込んで来ている。
街の中には、そらを覆う雲にすら届きそうなビル群が立ち並んでおり街中を見渡せば人間、エルフ、ドワーフ、獣人、蟲人etc…。
多種多様な種族が街を闊歩し事件、騒動、悲劇、出会いと別れ、地球アースガルズ両世界共に新たなる歴史が生まれんばかりの熱気と混沌に包まれたこの街こそ、世界と世界を繋ぐ狭間に出来し街
<境界都市グレンツェ>だ。
夕飯の片付けを終えて、アルが焚き火をぼんやりと眺めているとアルバートが暖かいお茶を入れてきてくれた。
「アル、お茶が入りましたよ」
「ありがとうございます、師匠」
「そんなに呆けてどうしましたか?」
お茶を口に入れ一息ついてから話始める。
「はぁ、境界都市へ向かうことになって色々ありましたけど、まさか境界都市へ向かう当日からスタンピードに出会うとか災難だなぁって」
「こればかりは自然の摂理ですから仕方ありませんよ」
「まぁそうなんですけど、もう少しゆったりと向かいたかったです」
「そうですね、安全に行けることに越したことはないですからね」
アルバートと、のんびり会話を楽しむ。
アルバートから話の話題を振ってくる。
「アル、そういえば<魂装>は扱えるのですか?」
「魂装ですか....魂装ねぇ、やはりトラウマが尾を引いてる影響で五年前から一度も呼び出せてませんよ」
<魂装>とは魂の中にある存在核(パーソナリティまたは自己を自己たらしめる核)をエネルギーに変換して魂から引き出し、武具として呼び出す<魂創霊装>と呼ばれる特殊技能である。
<魂創霊装>略して魂装は、まず己の魂の自覚から始まり、揺るぎない確固ある信念がある場合に限り武具として呼び出すことが可能である。
通常の人間には存在核に揺らぎがあり、ひとつの純粋なエネルギーとして魂から引き出すことが出来ない。
引き出せたとしても存在核が引き離されてしまった魂が形状を保てなくなり身魂共に消滅か、外界に晒された存在核が外界の圧力に耐えれなくなり存在核が消滅し、廃人になるかの二択である。そのため扱える者は極小数である。
それだけの危険があるが、魂装を扱えるようになるメリットは計り知れない。まず存在核を武具として扱うことなだけあって使い手によって能力は千差万別、その力は魔法や魔術では説明できない超常能力を有しており魂装が扱えるともなれば魔法など関係無い程の絶大な力が手に入るだろう。
アルバート言うようにアルも一応魂装の使い手である。しかし五年前の魔獣事件以降トラウマが尾を引いて存在核に揺らぎが生じてしまい、五年前以降魂装を呼び出すことに成功した事は一度もない。
「やはり、トラウマが影響しているのですか?」
「ええ、五年のトラウマにより存在核に揺らぎが生じてしまい、あれから一度も魂装を呼び出すことに成功してないです.....」
「そうですか.....それは仕方ありません、魂装とはその人の感情や思念に左右されやすいものですからね。境界都市へ向かうにあたって"魂装を再び扱えるようになる"ってのも、ひとつの目標としていいかもしれませんね」
「そうですね....先は長いし境界都市で自分が成長するって意味でもアリかもしれませんね」
アルバートが入れたお茶を堪能しつつ、会話に花を咲かせるのだった。
「さて、夜も遅いしそろそろ寝るとしましょう」
「ええ、そろそろ寝ますか。それでは師匠、今日はお疲れ様でした。おやすみなさい」
「アルもお疲れ様です、ゆっくりと体を休めなさい」
アルとアルバートは別々のテントに入り床に就く、アルはテントの中で眠りにつこうするが、魂装のことが頭から離れない。
「魂装か....姉さんを助けるために使って以来一度も僕の声に反応してくれない.....やっぱりまだまだ精神的にも未熟なんだな、自分って」
その日は過去に憂いつつ眠りに着くのだった。
次の日、日の出と共に目が覚め、テントから外に出て軽い準備運動をする。
「おはようございます師匠」
「おはようございますアル」
アルバートは先に起きて、朝食の用意をしてくれていたようだ。
「朝食は既にできておりますよ」
「僕がなにか手伝うことありますか?」
「あとは盛り付けるだけですので席に着いて待っててもらっていいですよ」
「分かりました」
席に着いて待っていると、昨日昼食で食べ損ねたサンドウィッチと夕飯で食べたバトルバイソンのコンソメスープが運ばれてくる。
朝早く冷えた空気の中、温かな湯気を立ち昇らせて現れるコンソメスープはとても魅惑的だ。アルは冷えた手で恐る恐るコンソメスープの器を持ち、口に運び込む。
(あぁ....温かい.....こういう時地球側では犯罪的な美味さというらしいが、その意味が実によく分かる!こんな寒空の下、温かい物を求めて待ちわびる僕はまさに生者に群がるアンデッドと同じだろう。地球側の人間もよく言ったものだ)
朝食を食べ終え、アルバートに今後の予定について話しかける。
「師匠この後の予定はどうなってますか?」
「まずテントなどの野営道具を片付けてその後、昨日燃やした魔獣の死骸が魔力溜りにならないように浄散のポーションを振り撒いて対策し、その後境界都市へ向かうという手筈です」
「僕が魔獣の方を片付けるよ」
「それじゃあ任せますね、それでは片付け始めましょうか」
アルバートと別れクレーターの方へ向かう。
大量の魔獣の死体を燃やしたり埋めたりした場合は必ず浄散のポーションをかけないといけない。
何故かと言うと魔獣達の死体には多かれ少なかれ魔力が宿っており何も処置せずに死骸を一箇所に放置していると過剰な魔力が溜まりができてしまい、そこで死んだ魔獣達がアンデッドになって蘇り、スタンピード化する場合があるからだ。
過去には浄散を怠りアンデッドのスタンピードで滅んだ国もある。
それを防ぐためにもアースガルズの国々では(国毎に少し違うが)ほとんどの国が浄散を義務づけておりそれを怠った場合、罪に問われる可能性もある程である。
普通の魔獣狩りぐらいならば死体を放置していても自然と魔力が霧散するので問題はないが今回のように大量の魔獣を殺害した場合は数が数なため、自然には魔力が霧散しきれずスタンピード化してしまうのだ。
浄散のポーションは聖属性を込めてると言われるが、世間一般的に光属性と呼ばれる魔法を込めて作られているポーションである。
そのため浄化系の光魔法が扱えるなら必要ない代物だが、人で浄散仕切るのにも限度があるため浄散のポーションが使われることが多い。
浄散のポーションは教国産がほとんどであり他のところで作成される物もありはするが、効果が教国産に比べるとワンランク落ちてしまうので大半の者が教国産を使う。
アルは魔導ポシェットから浄散のポーションを取り出し、少し魔力を込めてから横一文字に大きく振りかぶり、風魔法を用いて広い範囲に拡散させる。浄散のポーションの効果で辺り一面に淀んで溜まっていた魔力が霧散し、綺麗な光となって散っていく。
「いつ見てもこの光景は綺麗で美しいな」
晴れ晴れとした気持ちでアルバートの元へ戻る。
「浄散は終わりましたか?」
「ええ、滞りなく終わりましたよ」
「こちらも出発の用意が完了していますので、そろそろ境界都市へ向かうとしましょう。一応組織側にはスタンピードで遅れると連絡しておりますが、ここからでもまだ半日はかかる距離ですし、これ以上日程を遅らせることは向こう側にも迷惑でしょう」
「ならさっさと向かいましょう、師匠」
早速自動車に乗り込み最終確認をする。
「アル忘れ物はありませんか?」
「大丈夫ですよ」
「なら境界都市へ向かって出発しますよ」
腹の奥底まで響くエンジン音と共に境界都市へ向けて出発するのだった。
境界都市近辺では異界同士が繋がったことによりマナ濃度が異様に高く、その影響で大気中のマナが飽和状態になり気体を維持できず、霧として発生している。
霧は境界都市へ近づけば近づくほど濃霧になり、境界都市行き専用の道路を通らなければ境界都市へたどり着けないほどの濃霧である。
「そろそろ大穴に着きますよ」
「もうそこまで来たのか.....」
<大穴>とは大変革によって地球側とトルメキア霊峰が繋がりアースガルズと地球を行き来する巨大トンネルこそ、大穴と呼ばれる異界ゲートである。
アルの目の前に写るのは雄大に聳え立つ世界屈指の標高を誇る山々こそ、龍王国の始祖が眠る場所とも言われているトルメキア霊峰だ。
「大穴近くに来るとやはり霧が濃くなるね」
「ライトをつけていないと先を見通せない程ですからね」
車は大穴の中に突き進んでいく。
「境界都市へ着いたらどう動く予定ですか?」
「組織に挨拶をするのは明日の手筈になっておりますので、とりあえずは境界都市へ着いたら私達の住まいとなるアパートに向かい、荷解きをする予定です」
「行動については了解したけど、僕と師匠はどういう体で組織に加入するの?」
「私が退役した元軍人でアルはその弟子という素性で、昨今特殊事案の増加傾向に対し、優秀な人材を龍王国から派遣する。という設定になっておりますから特に問題はないでしょう」
「普段から師匠のこと師匠と呼んでるし、客観的に見ても王子とその従者に見えないはずですもんね」
「それにアルには王族としての風格がありませんからね」
「あのぉ、しれっと僕が地味に気にしてることディスってくるのやめて貰えます?」
「おやおや洒落のつもりで言ったのですが図星ですか.....」
「絶対この人遊んでるよね!?チクチク地味に嫌なこと言ってこないでください!」
こうして僕と師匠は和気あいあいと(一方的に)いじり合いながらながら境界都市へ続くトンネルを進むのだった。
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霧が立ち込めるトンネルはあと少しで途切れ、目の前には燦々と輝く太陽の光がトンネルの中に差し込んで来ている。
街の中には、そらを覆う雲にすら届きそうなビル群が立ち並んでおり街中を見渡せば人間、エルフ、ドワーフ、獣人、蟲人etc…。
多種多様な種族が街を闊歩し事件、騒動、悲劇、出会いと別れ、地球アースガルズ両世界共に新たなる歴史が生まれんばかりの熱気と混沌に包まれたこの街こそ、世界と世界を繋ぐ狭間に出来し街、境界都市グレンツェだ。