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竜と境界の都市グレンツェ  作者: 瀧澤流泉
プロローグ
1/25

異界衝突



一応プロローグは読まなくても物語を把握できると思いますが読んで貰えると物語について深く理解ができると思います。



修正済み


よく晴れた昼下がりの日曜日、アメリカ合宿国ロサンゼルス洲でその出来事は起こった、いや起こってしまったと言うべきだろう。

突如地下奥底からロサンゼルスではありえないような巨大地震が発生する。



天高くまで伸びるビル群は次々に倒れ、道路には歪な亀裂が至る所に広がる。

私達がいつも(それは本来ありえないことだが)見上げている遥か彼方まで広がる空までもが、割れているのだ。



比喩や抽象的な意味では無い、本当の意味で空が割れているのだ。

おかしい、何かがおかしい、本来こんなことは起こせないはずだ。空間に作用する魔法を使っても(私が知る限りだが)ロサンゼルス全体の空を割るような真似は魔法の領域を越えておりそれはもう魔術の領域だ。



例え魔術で大規模儀式を行ったとしても地球のマナ濃度ではこの規模の術式を維持するのは現実的では無く、この儀式を誰にも悟られず行うなど、到底成し遂げられるはずがない。

だが現実は無情にもただただ事実だけを突きつけてくる。


空(いやこの現状を見る限り空間)が割れ始めると空は分厚い雲に覆い尽くされ、雷鳴が轟き始める。徐々に徐々に空間に存在する自然魔力マナの濃度が上がり始めている証拠だ。


普通はマナ濃度の上昇など知覚するものではなく、計測機器を用いて確認するものである。それなのに私には肌にピリッと張り付くような感覚に苛まれる。

この感覚は相手と自分の魔力量の差が大きい場合に感じ取れる感覚だったり、著しいほどに大気中のマナ濃度が濃い時や、体内魔力と大気中のマナ圧力の差によって感じ取る場合が多い。


総じて魔力圧の差で感じる場合の現象だ。分かりやすく言えば気圧の差のようなものだろう。

魔力とマナの圧力の差で感じ取ることもあると言ったが、本来人為的に起こさない限り大気のマナと体内の魔力圧の差で知覚することなどなく、自然現象で知覚するなどマナ濃度が高くない(比較するものは無いが)地球ではありえないことなのだ。


再び大きな振動が街を包んだと思えば足元から神々しい(いやこの場合禍々しいというべきだろう)光がロサンゼルスの街のあらゆる裂け目から漏れだしてくる。



振動が収まり始めると少しづつだがふわっと砂、小石、公共ゴミ箱、ビルの破片などが浮き上がり始め、徐々にだが浮き上がる規模も拡大していく。


まさしく天変地異、カタストロフィ、アポカリプス色々な言い方はできるが私にわかるのはこの街がこの先、決して元に戻ることが無いということだけだろう。


神は我々を見捨てたのだろうか。

我ら人類に呆れられてしまったのだろうか。

私は浮かび上がった(到底道とは言えないような)瓦礫の道を歩き人々が集まっている病院へとたどり着く。




院内はまさに戦場と言わんばかりに医師や看護師達が次々と運ばれてくる怪我人に治療を施している。

健常な者達は数人でかたまり毛布を被って震えあっている。

これも仕方がないことだろう、今先程までロサンゼルスは休日の昼下がり真っ只中だったんだ。

そんな状況でこんな天変地異に巻き込まれたのだから気丈に振る舞えって方が酷な話だろう。

私も医師達の邪魔にならないよう院内の端で毛布に包まる。



なぜこのような災害が起きたのだろうか?自身が持ちうる知識で大まかな考察をしてみる。

まず規模からして単独犯の可能性は薄い、よってこの事件を起こしたのは組織単位での犯行であるはずだ。

これほどの規模の改変を他組織に見つからず可能にするなど何処の組織だろう?


ロサンゼルスを書き換える現象を起こすなど、我々の組織ができるモノではない。

これほどの災害を起こすのに仮定として、魔術が挙げられるがロサンゼルスの街全域あるいは、他の洲にまで影響するような広大な魔術儀式を施すなど、果たしてそれは可能なのか?


答えはNOだ。


ありえない、いやありえてはいけないのだ。

この規模の儀式を施すなど前述した通り()()()()()()。可能だとしても、どこの組織にもバレず国すら欺いて儀式を完成させるなど、それこそまさに神の所業とでも言われなければ私は到底.....目の前で起きている現象に納得などできない。


街中の現象について考察をしているとバチッと静電気が走ったかのように紫の閃光が院内にほとばしる。

紫の閃光が一瞬ほとばしったと思えば徐々にその頻度が増していく。

この現象は院内にとどまらず、外を見渡せば雷鳴が強く鳴り響き、紫の閃光がバチバチッと頻繁に弾けている。

先程から感じ取れるマナの濃さが急激に上昇してきている。


大気中のマナが飽和状態になり、耐えれなくなったマナが閃光として溢れ出て来ているのだろう。

なにかひとつきっかけがあれば飽和したマナが連鎖的に爆発しこの都市諸共、全てを荒野へと変えるだろう。

今はそれほどに危険な状態でありそろそろこの街の崩壊が近いようだ。


神は存在しないのだろうか。


我々人類は見捨てられたのだろうか。


進みゆく滅びをただただ受け止めるしかないのだろうか。


院内は騒然とした状況になり、あるものは家族と抱き合い、あるものは(この状況に気が狂ったのか)大声で笑いだし、またあるものは(敬虔な信徒なのだろう)手で十字架を切り神への祈りを捧げる。

今更こんな状況で祈ったところで無駄だろう、本当に神または神に匹敵する存在がいるのならば、この破滅を食い止めるはずだ。


神など存在しないのだ。結局我らが信仰などただの空想の産物でしかなく、祈りなど目の前の事実から目を背けるための都合のいい道具でしかないのだ.....。


祈りとはなんだろう


信仰とはなんだろう


救済とはなんだろう


()()とはなんだろう?


我々が信じてきたものは、全て妄想でしかなかったのか、今までの日常は無意味だったのか。

誰もが深い絶望と恐怖により顔を歪める。


救済などない


救いなどない


奇跡などない


()()()()()()()()()()()()()()()()()()


本格的にこの都市も崩壊が始まる。

外を見る限り向かいのビルは何も無い虚無に崩れ落ちていき、耳をつんざくような激しい雷鳴が頻繁に轟く。


ははっ滑稽なものだな。

人の文明とはこうもいとも容易く簡単に崩れ去るものなのか.....。

私はこの惨状に自分の命と都市の運命を諦め普段吸わない貰い物の葉巻を取り出し最後の一服を味わう。


「フゥー、これが最後の一服になるなんてな。人生どうなるかわかったもんじゃない」


あとわずかで完全に大気のマナが飽和限界に達し、この都市が歴史と共に全て吹き飛ぶだろうと達観した気分で空を眺めていると突如として遥か彼方から何かが飛来してくる。

飛来してきたのは光り輝く(魔術的な)十二の鎖であり、十二の鎖は都市中央で円を描きひとつの術式としてその姿を完成させる。

術式の内容からして都市そのものを結界魔術儀式で覆い崩壊を食い止めたようだ。


なんだよ、そんなことありかよ.....。


クック、はははははは!


大したもんだ、こんなにも現実は無情で残酷で身勝手で、最ッ高に()()()()()()

呆れる、呆れるよほんと。

こんなに都合がいいなら神に祈るなんて馬鹿らしいだろう。

やはり信仰など空虚なものでしかないのだ。

結局は神的存在など居ない、現れない、存在しないのだ。

もう疲れた、休日にこんな出来事に巻き込まれ無理やりにでも絶望を味わう羽目になるなんてもう御免だ。


雷鳴と分厚い雲に覆われた空は都市を覆う術式と共に晴れてゆき、雲の隙間から燦々と輝く太陽の光りが漏れだし都市を照らす。


ふっ、こんなことがあった後にも関わらず私達が見上げる太陽はいつもと変わらず輝いている。


「よし、この気を使い辞職するか。どうせ街の復旧作業のゴタゴタに紛れて辞めれるだろ」


なにかもう今回の災害で吹っ切れてしまった。こんな馬鹿げた茶番劇のようなモノを見せられた後にまであの窮屈な仕事などできるものではない。


同僚達は自由な奴らばっかなので私が辞職しようが気にしないだろうし、部下には私がいなくなっても働けるよう仕込んであるから大丈夫だろう。


雲の合間からほんのりと暖かい光で照らされる瓦礫の道を軽い足取りで、私は辞表を書くために帰宅するのだった。







????????????


深く...深く...闇の奥底深くナニかがそこにある。

深く深く闇の中、蠢く(うごめ)肉々しいモノが産声をあげる時はいつ来るのだろうか。


それは分からぬだろう。


わかっていいモノではないだろう。


関わってはいけぬモノだろう。


それは過去の異物であり


残り香であり


過去の残滓でもある


これを語るのはもういいだろう。

今は触れるものでは無い。



―――――――――――――――――――



そうこれは全ての始まり、全ての振り返り、過去の投影であり、一人の英雄が救いを求めたが故に起きた優しさと悲しみが織り交じる厄災であり、遺志と境界を紡ぐ儚き夢物語だ。



処女作なので拙いところがあるかもしれませんが多めに見ていただけるとありがたいですm(_ _)m感想やなにかおかしな点があればご指摘いただけると作品向上に繋がるのでどしどしくださいd(ゝω・´○)


次回「第1話終わりは突然現れる」

主人公と父親の話し合いになっており物語の舞台境界都市へ向かう前日譚となっております!

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