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名探偵シャーロックの異世界事件簿  作者: 通りすがり。
犬のしっぽ亭編
2/2

01.出会い ~最初の事件発生~

 目を開けると、珍妙な恰好をした少女が上から覗き込んでいた。


 トラックに轢かれた後、謎の人物に見下ろされたのと重なった。


「大丈夫ですか?」


 少女は心配そうな顔をしながら話かけてきた。


 ハッとした私はすぐに上体を起こした。


「あいつは!?」


「はい?どなたかお探しなんですか?」


 どうやら、私が追っていた人物も、私を突き飛ばした人物も、どちらもいないようだった。


 いや、この少女が私を突き飛ばし、監禁して……

 と一瞬頭によぎったが、すぐにそれはない様に思えた。


 少女の純粋無垢な瞳は、とてもそんな悪事をはたらくような人物には思えなかったのだ。


「あの、ここは?」


 病院でないのは明らかだった。


「この辺りで一番の名宿「犬のしっぽ亭」です。名前だけでも、聞いたことなかったですか?」


 そんな宿の名前は聞いた事がなかった。


 そして、私の目に映るすべてのものが、現実のものでないように思えた。


 建物全体が木造の造り。

 明かりは蛍光灯ではなくロウソクで、今風のインテリアは何一つとしてない。


 イメージとしては、中世ヨーロッパのようでもあったし、ファンタジーの世界のようでもあった。


「あの~、体のどこか痛んだりしてないですか?」


「あぁ、大丈夫。それより、今、俺はどこにいるんだ?」


「だからー!犬のしっぽ亭ですって!」


「そういう事じゃなくって!」


 何一つ理解出来ていない状況下で、謎の少女と話すことで不思議と落ち着けた。


「ん~やっぱり、ゴブリンに襲われて頭でも打っちゃったのかなぁ?体の傷は治せるけど、頭の中までは治せないし……あーー、どうしよう。」


 少女はブツブツと呟いている。


 私はまず最初に解き明かさなければならない謎について解決しようとした。


「ところで、君、誰?」


「あ!申し遅れました!私、クリスティーと言います!神官で、これから王都の教会に向かう所なんですけど、冒険者としては半人前の状態なので、まだどこのパーティーにも所属せずにいるんです。でも、いつかは世界を冒険してみたいなぁ~、なんて思いもあったりもあって、あ!でも、結構天然(?)なところもあるみたいで、協会の神父様からは「お前一人で旅なんて大丈夫かー?」なんて言われちゃったんですけど、もうちゃんと大人って言っても差し支えない歳なんだからいつまでも子供扱いしないで欲しいですよね。王都までなんてすぐ近くですし、最近はゴブリンが出てきて危険だって言われだしましたけど、軽い魔法は使えるんですから、心配し過ぎですっ!あ、そうそう、好きな食べ物は甘いもの全般で、趣味はこれといって何もないんです。何か趣味も見つけたいんですけどね。そんなことより貴方のその服装、凄く珍しいですよね。王都ではそういうの流行ってるんですか?やっぱり都会の人の気持ちは分からないなぁ~。あ!でも、この前食べた王都の」


「ちょちょちょ、ちょっと待って!!!」


「はい?」


「ごめん、最初の二言ぐらいしか頭に入ってこなかった。」


 私はかなり、()()()()()の子に看病されてしまったようだ。


「とりあえず、君の名前はクリスティーってことだよね?」


「はい!そうです!」


「それで、えーっと、神官?で冒険?してるんだっけ?」


 私を医者に見せる前にこの子を医者に見せた方がいいな、と心のなかで思いながら確認してみた。


「そうですよー。そんなことより大変だったんですから!

王都に向かう道の途中で貴方が倒れてて、怪我とかはない様子でしたけどなかなか意識が戻らないんですから、半ば引きずるような形で無理やり近くのこの宿まで運んできたんですよ。」


 どうやら私はこの少女に助けて貰ったようだ。


 そして、私はどこか別の世界に飛ばされてしまったのではないだろうか。

 いや、そんなバカげた話があるわけがない。

 でも、この状況をどう説明する?


 段々、これが夢であって欲しいという思いが強くなってきた。


「ほんと、この宿高いんですよ。お金なんてほとんど持たないで出発したので、泊めてもらうの大変だったんですから!

その上、「そんな変な恰好のやつ入れるなー!」って宿主さんが凄く嫌がって、それでもここ以外看病できるところないんでって無理やり説得したんですよ。

そういえば、まだ感謝の言葉を聞いてないなぁ~~~」


 その時であった。



「うわぁあああああああああああ」


 突如、男性の叫び声が下の方から聞こえてきた。

 それは、命の危機を感じる響きだった。


 クリスティーと慌ててベッドから起き上がった私は、部屋のドアを開けた。


 ドアを開けるとすぐに階段があり、下の階を覗いてみた。


 状況が掴めない。

 ただ「これは事件だ」それだけが探偵のカンから導き出されていた。


 次の瞬間、私はクリスティーを残して、走り出していた。


 自分を様々な謎が取り巻き、何一つ現状を理解していないにも関わらず、目の前の事件の匂いに、ただ立ち止まっていることが出来なかった。


 丁度他の部屋から誰か出てきたようであったが、それも気にせず急いで階段を駆け下りた。


 階段を降りるとすぐ左手にキッチンがあった。

 そして、コックと思わしき服装の男性が頭から血を流しながら倒れていた。

 周りには誰もいない様子だった。


 直ぐに男性の元に駆け寄ったが、既に脈はなかった。


 次の瞬間、巨大な影に気づいた。

 背後に誰かいる。


「お前がやったのかああああああああ!」


 野太い、まるで獣のような声が背後から響いた。


 振り向くと、目の前の光景に一瞬頭の中が真っ白になった。

 巨大なヒト型の獣が太い腕を私に伸ばしてきていたのだ。


「待ってーーーーーー!」


 次の瞬間、巨大な獣のさらにその後ろから、声が聞こえた。

 クリスティーの声だった。


「うるせぇ!今すぐこいつをぶっ殺す!」


 目の前の巨大な獣からとてつもない殺気を感じた。


 もう一度太い腕が伸びてくる。

 まずい。

 このままじゃ……



「待たれよ、ご主人。」


 凛とした青年が、突如として私と獣との間に姿を現した。

 そして、美しい剣を右手に持ち、私を守るように剣を伸ばしていた。


「あ、アンタは……」


 巨大な腕が引っ込んだ。


「でも、どうしてだ!こいつは大事なウチのコックを襲ったんだぞ!」


「本当にこの方が犯人かどうか分からぬでしょう。それに、もし卑劣な犯罪者であったとしても、法の下に裁かねばなりません。」


「ぬぅ……」


 私はただ茫然と座り込んでいた。

 クリスティーが巨大な獣の後ろから、心配そうに私を覗き込んでいる。


 獣人とでも呼べばいいのだろうか。

 一度は冷静になったかに思えた彼だったが、やはり怒りが収まらないようで、青年に対して怒鳴り始めた。


「じゃあ、アンタにはこいつ以外の本当の犯人が分かってるのかよっ!」


「それは、私には……」


「ケッ、結局分かってねぇんじゃねぇか。どう考えてもこいつしか犯人はいないだろ!」


「犯人捜しのスキルーっ!なんてのがあったりしたらいいんですけどね……」


「うるせぇ!嬢ちゃんは黙ってな!」


「ひっ、ごめんなさいー!昔から、思った事なんでも言っちゃう癖があって、神父様からもよく怒られてたんですけど、それで、それで、」



「あの~、犯人なら、自分が探しましょうか?」

 ・

 ・

 ・

「はぁ~!?」


 その場にいた三人全員が私に向かって言った。



 とっさに言葉が出ていた。

 どう考えてもおかしいのはわかっていた。

 何一つとして状況を把握していないのにも関わらず、ついいつもの癖で言ってしまった。


 私はいつも事件に巻き込まれる。

 そして、必ず解決する。

 長年、探偵として当たり前のようにやっていた流れが、この特殊な状況下でも出てしまったのである。


 薄々感じてはいたが、あの獣人や剣をもった青年を見て確信した。

 私は本当に異世界にやってきてしまったようだ。

 そして、また事件に巻き込まれてしまった。

 そして、また事件を解決せずにはいられないのだ。

ここまで読んで頂いて、ありがとうございました。


ようやく最初の事件です。

とりあえず、この事件の終わりまで読んで頂ければどんな小説か理解していただけるかと思います。

あと2話ぐらいの予定です。ネタバレとか言わないで下さい。ミステリーとはそういうものです。


もう少し、小分けにした方が良いかな?とも思っているですが、どうでしょうか?

他の投稿者さんのやつを読むと、もっと短いんですよね。

「小説家になろう」内では、サクサク読めるし、止めたいところで止められる様に、短すぎるぐらいの方がいいように思えます。

ただ、一話使って「事件起きませんでしたー」はミステリーとしてダメな気もするので、難しいです。

ほとんど、クリスティーのせいで長くなっちゃってるんでけど(笑)


皆さんは、天然早口キャラって好きですか?

異世界モノの王道ヒロインかなっと思って書き始めたはいいんですが、私は早速嫌になりだしてます。

どうやって早口キャラを上手く表現しているのか、他の方の作品をもう一回読み直して参考にしようと思います。

それでは、次回もお楽しみに。

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