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第27話 魔法技師達の正体

「ただの爆弾工場ではございません。生きた人間を爆弾にする工場なのですぞ」



 五年前に成立された『ウォルフォギア』帝国と『サン・ミッセル』王国の同盟。


 同盟の内容は、帝国は王国の防衛と安寧(あんねい)を約束する代わりに、王国は帝国軍に兵を提供するというもの。



 しかし、その実態は帝国が開発した戦略魔導兵器、『ライト・ピラー』、その()()にするという非道なものだった。



 そして、その悪魔のような兵器が開発された場所が、第七兵器開発部。


 イノ達の前任者が設立したものであった。



 第七兵器開発部は、例の戦略魔導兵器を開発するために参謀本部が直轄で設立した開発部門である。



 帝国中の天才学者達が集められ、帝国の希望となるべく作られた機構であったが、そこから出来上がったものは、()()()()()()()という血も涙もない兵器だったのである。



 だが、それが帝国の危機を救ったのも確か。


 今、こうして落ち着いて日々を過ごせているのも、その兵器によって前線を敵地まで押し上げられたからこそだ。



 しかし、この事実は、ルビアにとってはとてもショッキングなものであった。



「何を言っている……」



 ルビアはペートルズから聞かされた話を、うまく理解できなかった。


 顔を伏せた状態で、じっとしたまま動かない。



「彼らは『悪魔』と呼ばれているのです。これまで何人もの罪のない人間を手にかけてきました」



 ペートルズの饒舌は止まることを知らず、次々とイノ達の所業を明かしていく。


 イノ達が弁明する暇も与えられなかった。



「『エンゲルス』に選ばれたエルステリア人はですねぇ、そりゃあもう阿鼻叫喚ですよ。誰だって爆弾となって爆破させられたくないですからねぇ、それを彼らはどんな目で見ていたんでしょうな」



「もういい……」



 ルビアは声を喉から絞り出した。


 しかし、ペートルズは話し続ける。




「人を爆破させる感覚というのは、一体どんな感覚なのでしょうなぁ」



「黙れ!」




 ルビアの怒号が教室内に鳴り響いた。



 その声にアイナがビクッと体を震わせる。


 肩で息をするルビアは、鬼のような形相をしていた。



「もういい、下がれ、父上に貴様のいき過ぎた発言を報告してもいいんだぞ」



 ペートルズに対し、強く警告する。



 ルビアは自分の家の話をするのを嫌う。


 自分が権力を持っているとは思っていないし、周りにもそう思われたくないからだ。



 そんな、ルビアが父親という存在を出して、相手を威圧していた。


 なりふり構っていられず、ただ目の前の不快な男を消したかったのだろう。



「これはこれは……穏やかじゃありませんなぁ」



 ペートルズはそう言われても憎たらしい笑みを崩さない。


 まだ話し足りないという顔であったが、ペートルズは一息吐き、教壇を降りる。



「ふむ、ではわたくしはこれくらいで失礼————おっと」



 ペートルズは教室を出ようと出口に向かったが、何かを思い出したかのように立ち止まる。


 そして、今度はイノ達の方を向いた。



「テーリヒェン大佐から言伝(ことづて)を預かっていたのでした————『次の特別作戦の執行が決定した、速やかに戦略魔導兵器の開発を開始されたし』とのことです」



 ではこれにて、とペートルズは教室を去っていった。



 教室には怖い表情のままのルビアと、どん底に突き落とされたかのように暗い顔をしたイノ達だけが取り残されていた。



 

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