表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/226

第25話 拒絶

 クルト・イステル。




 『サン・ミッシェル王国』出身のエルステリア人である。



 帝国の首都『アルディア』の戸籍に登録されたのは、四年前。


 中央街『レグルス』の西側、『ダンテ』という街で、喫茶店『イステル』を経営している。



 コーヒーのうまい店だ。



 もちろん、イノは名前を知っていた。


 彼のことを知っていた。



 帝国軍少尉により、『エンゲルス』、その隊長に任命された名前。


 それは昨日の夜、頭の中を何度も巡った名前だ。



 それがルビアが探している人だと。



 大切な人間だと言っていた。



「厳密に言うと、ルビアが探しているのは奥さんの方なんだって。奥さんは元貴族の人らしくて、ルビアが幼い頃とてもお世話になったって————どうしたの? イノ」



 セシリアは説明している最中に、イノの様子がおかしいことに気づく。



 オスカーもアイナもイノの異変に気づき、作業を止める。




「だめだ……」




「え?」




 突然の拒否の言葉を、他のメンバーは聞き取ることができなかった。


 イノの顔は暗く、体が小刻みに震えている。



「ルビア、もうお前帰れ」



 イノはかつてないくらいに低い声を出して、ルビアに言い放つ。


 さっきまでのちょっとした軽口がまるでなかったかのように。



「二度とここに来るんじゃない」



 突然のイノの言葉にルビアもチームの三人も動揺する。


 こんなにあからさまに誰かを拒絶するイノを、ルビアもチームメンバーも今まで見たことがなかった。



「き、急にどうしたの!?」



「ひどいよ! そんなこと言うなんて」



 セシリアとアイナがイノのあんまりな言動に抗議する。



 しかし、イノの態度は変わらなかった。 


 これ以上、ルビアをこんなところに居させるわけにはいかない。



「……私の行動が(わずら)わしかったなら、素直にそう言ってくれ」



 ルビアは苦々しい声を出す。



 彼女は自分が悪いと思っているのだろう。


 そんなことはないと弁明したいところだったが、今のイノには考える余裕がなかった。



 素直になんて話せるわけがない。


 今のクルトに、彼女を会わせるわけにはいかなかった。



 ただ乱暴にルビアのことを突き放す。



「いいから帰れ!」



「何も言わずに拒絶されるのは納得いかない! 訳を話してくれ!」



 ルビアはイノが突き放そうとしても引かない。


 真っ直ぐとイノのことを見るのだった。



 その純粋な視線をイノは受け止めることができず、目を伏せる。



「私の初めての友人なんだ……」



 ルビアはイノに訴えかける。


 その目には涙を浮かべていた。



「こんなことで、もう会えなくなるなんて嫌だ!」



 彼女の声が、訴えが、イノの胸に刺さる。



 ルビアは何も悪くない。



 だが、彼女を遠ざける必要があった。



 このまま、事実を、現実を知ってほしくない。



 彼女の大切な探し人が『自爆魔法士』となること、その魔石を、イノ達が作ること。


 これを伝えてしまえば、全てが壊れてしまうだろう。



「なんとか言ってくれ、イノ……!」



 みんなの視線が、イノの元に集まる。



 しかし、イノは何も言えない。



 ルビアを帰らせるだけの咄嗟の理由が思いつかなかった。 


 ただ、ルビアに頼むしかない。



 頼む。



 今は帰ってくれ。



 イノが心の底から、ルビアに懇願している、その時だった。




「何やら,騒がしいですなぁ」




 空気を読まず、教室のドアが開かれ、男の声が聞こえる。



 そこに立っていたのは、帝国軍人であった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ