第178話 竜の涙
青い光が、落ちていく。
火花が飛び散る戦乱の中。
ドス黒い魔族の大群を目掛けて、辺りを照らす宝石が黒煙を突き進んでいく。
そんな儚くも確かな光に、そこにいた者も陰で見守る者も目を惹かれ始めていた。
額に汗が滲ませ抗戦をしかける帝国軍の兵士も。
本来、人間のような意志を持たないはずの魔族も。
帝国軍の上層部も。
小太りな権力者も。
とある魔法技師も。
戦場に目を向ける者の全てが、そこに突如現れた煌々と光る何かに目を奪われていた。
縛られていたものが、七人の魔法士のつながりを断ち、落下し続ける。
過去に、現在に、そして未来。
人々は、あらゆる時間軸において、ずっと縛られていた。
周りを巻き込んで力を増していった人は、解放された時に大きな力を発する。
因子と因子が複雑に絡み合い、まったく別の形に姿を変わったとしても。
もらったつながりは決して忘れない。
つながりは何かを成すための重要なファクターだ。
人々が意図せず周囲に発生するつながりは、決して鎖などではない。
その身を絞めつけるものでもないし、身動きが取れなくなるかどうかはその人次第だ。
世界は、決して監獄などではない。
つながりから解き放たれて、落ちて行くのは単一の原石。
唯一無二の、それ以上割り切ることのできない「素」
すべてを取り払ったまったく新しい可能性。
その爆発は、周りの全てを変革するきっかけとなりうる。
熱く燃やし、水に流し、風で飛ばし、地に固まる。
光を飲み込もうとする闇もあれば。
闇の中を照らす光となることもある。
どの属性にも、どの人種にも。
誰にだって周りを突き動かし、革命を促す力がある。
そのエネルギーには、変革の力が宿っている。
ついに、光が地面に落ちる。
その輝きは一層増していき、数キロメートル先からもそれが視認できる。
魔族の大渦の中でも、確かに存在している魔石。
青く輝く一つの点が落下していくのを、その場の全員が目にしていた。
その光は魔族達を全て包み込み、浄化することで召喚士との縛りから解放する。
つながりを断ち切って、闇の心でさえも救済を与える。
魔法名は『リヴァイアズ・ティアドロップ』
海のように広い心を持つ竜の慈悲深い涙。
雫が地面に触れた時ーーーー
その光は爆発的に広がり、瞬く間に魔族達を飲み込んでいく。
魔石から放出された『量子ビーム』が、魔族を構成するすべての魔素に衝突し、影響し、連鎖していく。
変化したエレメントが別のエレメントを変化させ、それがまた次のエレメントに変化を促す。
光の速さに匹敵する速度で魔素核分裂連鎖反応を引き起こし、術式が崩壊していく。
周りのすべてを押しのけて、すべてに影響を与える。
アイナやルビア。
そして、イノ。
この世の全ての人間が目にした、変革の光。
世界の再構築
この魔法は、その序章にしかすぎないのである。
これにて第4章は終了となります。
この投稿で、物語が一区切りつきました。
続編を作るかどうかは未定です。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。