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第170話 魔法扉

 気を取り直して、イノとルビアは二人の監視兵が守っていた鉄扉に向かう。



 その扉は見るからに頑丈で、たとえ鍵がかかっていなくても人間一人の力では開けられないほど重たい。


 鍵穴はなく、重々しい魔法のオーラを纏っている。



 魔法で鍵がかかっているということだろう。



「どうだ? この扉は開きそうか?」



「やはり思った通りでしたね。術式によってロックされた典型的な魔法扉です」



 結構面白そうな術式がかかってますよ。軍の最先端なんですかねぇ。


 オスカーは舌舐めずりをしていて、なぜか嬉しそうだった。



 だが、そんなオスカーを押しのけてイノが前に出ていく。




「よし、じゃあここは俺が————」



「いやいやいや」



「ちょっとちょっとちょっと」




 二人が漫才でもやってるかのようにイノを止める。


 セシリアが胸をバンと叩き、豊満な胸を揺らした。



「いい? これは術式が埋め込まれた扉、つまりは魔法具(デバイス)になるんよ。だったらあたしの出番でしょ?」



「いえいえ、この術式は思っていた以上に緻密です。魔法構造をしっかり把握し、繊細な作業が必要になるので僕の出番かと」



 セシリアの言に被せるように、オスカーも主張を始め、二人はむっと顔を見合わせる。



 まさかとは思うが……



 この魔法扉を誰が開けるかで取り合おうとしている……?



 イノはやれやれといった表情をしていた。



「あのなお前ら、難易度の高い術式であればこそ、俺がやった方が一番早いんだよ。二人は周囲の警戒をしていてくれ」



 そう言って、イノは二人を押しのけて前に出ようとする。


 そんなイノを必死に引っ張り、セシリアが噛み付いた。



「ちょっと! イノはさっき十分見せ場作ったでしょう! あたしにやらせてよ! こんなおもしろそうな魔法具、あたしにしか扱えないんだから!」



「いえいえいえ、セシリアに任せてしまったらその馬鹿力でなんかこう変になって終わりです。ここは僕が魔眼を使ってこの面白そうな術式を見破って見せましょう!」



「なんだとごらぁ!!」



「ああもううるさい! 第七班のリーダー権限で命ずる。俺にこの扉を触らせろ!」



「「横暴だ!!」」




「いい加減にしろぉ! この魔法オタクども!!」




 流石に見ていられなくなったルビアは、自分の人生で一番豪快なツッコミを入れたのだった。




 結局、じゃんけんで決めることになり、勝利したセシリアが扉の解錠をすることになった。



 ()()()としてのプライドは全くないが、()()()()としてのプライドは誰よりも強いようだった。



「よーし、君はどんなやつだぁ?」



「あくしろよ」



 セシリアは鉄扉をしばらくじっと見つめた後、カチャカチャと何かをし始めた。


 と思いきや、数十秒するかしないかで扉を解錠してしまった。



「うーん、あんまり目新しい術式でもなかったかも。確かに初めて見る新しい封印魔法なんだけど、前まで国の標準になっていたやつのマイナーチェンジでしかなかったなぁ」



「外れですね〜」



 そんなガッカリする……?


 この魔法扉を作った魔法技師を泣かす気か。



 封印魔法は難なく突破され、セシリアの馬鹿力(アビリティ)によって扉が開かれる。



「まあいいや。セシリア、このまま行け」



「え?」



 すると、イノから新魔法の魔石が入ったケースを渡され、先を促される。



「ここを見張っている人間も必要だろう。俺とオスカーでそれはやっておく。セシリアは確実にこの先にいるアイナにその魔石を渡すんだ」



 それに、きっとお前が会いに行けば喜ぶ。


 イノはそう付け加えた。



 確かに作戦前日で、アイナの心はデリケートになっているはずだ。


 同性の方が彼女に負担をかけなくていいだろう。



「分かった、アイナに会ってくるね!」



「はいはい、いってらっしゃい」



 セシリアは身を翻して、暗い通路を走っていった。



 イノはセシリアを見送った後、オスカーと顔を見合わせて、ここを防衛する準備を始めた。


 ————と言ってもやることは簡単で、イノ達が監視兵になり代わり、誰も寄りつかないように見張っておけばいいのだ。



 だが、自分たちの軍服と監視兵のものは少し違う。


 そのために、イノ達はぐっすりと眠る男二人の軍服を脱がし、自分達のものと取り替えた。



 そして、軍帽を深く被り扉を挟むようにし、さながらずっとここを監視していたかの如く、仁王立ちをした。




「————って私は!?」




 役割のもらえなかったルビアが、慌てて素っ頓狂な声をあげる。



 監視兵は二人なので、ルビアは一人余っていた。




「ニューロリフト准尉殿、一緒に見張りをされていきますか?」



「もうっ!!」




 口調を変えてからかい出したイノ。



 それに対し、ルビアは果実のように顔を真っ赤にして、ぷりぷりと怒りをあらわにした。




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