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第十話 不審な影

祝!十話まで到達しました!

うん、こんな作品でもここまで来たよ!

 一人の男がパソコンの画面を睨みつけていた。眼鏡を掛けた切れ長の目、若干茶色に染めた髪に、長身で筋肉質の体をしている。上半身は裸で首にはタオルを捲いていた。髪が少し湿っているところからして風呂上がりなのだろう。

「ったく、何で俺がヤクザなんかの手伝いをしなきゃいけないんだよ……」

 男はそう言って席を立ち、冷蔵庫を開けて中から瓶に入った牛乳を取り出した。蓋を開けると一気に飲み干し、大きく息を吐く。

 男のいる場所はマンションの中の一部屋で、リビングはとても広く、高価そうな絨毯が敷かれていた。バルコニーへと繋がる大きな窓からは都心の夜景が一望出来て、夜でも非常に賑やかな様子がうかがえる。

「さて、仕事を終わらせるか」

 男はTシャツと黒いジャケットを着て、赤いキャスターバッグを転がし、部屋から出て行った。


 

 

「彰介、起きろ! 遅刻するよ!」

 明樹は彰介の部屋の前でそう叫んだ。しかし、一向に彰介が起きてくる気配がない。はぁ、と大きく溜め息をついて明樹は彰介の部屋へ入った。

 カーテンで窓が覆われいる薄暗い空間。そこそこ整理された部屋なのだが、やはりフィギュアが無駄に目立つ。明樹はそれを横眼で見ながら静かに彰介の布団の中に入り、耳に軽く息を吹きかけた。

「うわ、何だよ! 止めろって!」

 耳元に吹きかかる生温かい吐息で眠気から解放されたのだろうか。上半身を起して、顔を赤らめた。

「うん。今世紀最高のお目覚めだね。そして昔から耳は弱いんだ」

「今世紀最低の間違いだろ?」

「毎日こうして起こしてあげようか?」

 彰介はすぐさま立ち上がり、隣で寝ている明樹をまたいで部屋を出て行った。毎日あれで起こされたら堪ったもんじゃない。薄暗い部屋を出ると太陽の眩しい日差しが彰介を襲う。

 居間へ着いてみたら、いつもと違う風景が広がっていた。

「……あれ?」

 彰介の視線の先はテーブルを布巾で拭いていた蓬奈だった。その隣には奏衛門がいて、何故か遥子と幸秀が不在。

「あ、彰介おはよう」

 たぶん夢ではないだろう。この朝日の眩しさは夢では表現できないし、何しろ耳元に吹きかけられた吐息の感覚が未だに残っている。

「姉ちゃん、父さんと母さんは?」

「お父さんは出張、お母さんは職場の研修旅行。お母さんは明日帰ってくるけど、お父さんは二日間帰ってこないよ」

「で、何でこの二人がここに?」

 夕方ならまだ不思議に思わないのだが、蓬奈と奏衛門がいるのは早朝だ。朝起きたら近所の人がいました。これは大体の人間が驚愕するだろう。

「お父さんは組の集会が朝早くあるみたいで、それにお母さんも同席なの。たぶん夜も遅くなるから、夕食の時も来ちゃうかも」

 と、蓬奈が説明した。組の集会というのが妙に気になるのだが、そこは口にしない。でも、とりあえず状況は把握した。この家に料理の出来ない彰介と、料理は一応出来るが悲惨な事態を招いてしまう明樹しかいないとなると、一日どころか半日過ごせるかどうかという状況に陥る。だから料理の出来る蓬奈を呼んだのだろう。ついでに奏衛門も付き添いで。


 

 この日の授業はやたら眠気が襲いかかってきた。夏にしては涼しく、風が教室のカーテンを躍らせて、いつの間にか午前の授業は終了した。彰介は大きな欠伸を漏らしながら学食へと向かった。普段は弁当持ちなのだが、今日は遥子が不在。代わりに蓬奈が弁当を作ると言ったのけれど、同級生に甘えるのもなんだか悪い気もするので断った。

 学食へ着いたら予想以上の混雑で、中に入れないほどだ。これを待っていたら昼食の時間が無くなると判断し、彰介は購買部の売れ残った菓子パン数個とジュースを購入。天気も良いから屋上へ行き、そこで食事を済ませようとした。

 彰介は屋上の扉を開けようとしたが、扉の窓を見てみると先客がいた。二人の男女で、男子生徒の方は何やら楽しげに笑っている。男一人であの空間に行くには勇気がいるので、彰介は引き返そうとしたのだが、男子生徒と一緒にいる女子生徒が気になって、しばらく窓の外を眺めていた。

「やっぱ……。そうだよな……」

 毎日一緒にいるのだから見間違えるはずはないだろう。女子生徒は大蔵山蓬奈本人だった。扉に背を向けていたので彼女の様子はよくわからない。彰介はあの場を見るのが何故か嫌になっていた。そして教室で購入した菓子パンを食べたのだが、そんなに美味しいとは感じられない。周りが賑やかで、食事に集中できないからだろうか。


 下校時間となり、学校の生徒は波のように校門の外へ流れて行った。普段なら校門で蓬奈は彰介を待っているのだが、今日は何故かいない。まだ学校内にいるのだろう、と彰介は生徒の波から外れ、校門の支柱に体重を預けて蓬奈を待った。

 五分ほどして、急ぎ足で蓬奈が来た。多少息を切らしていたが、すぐに回復。

「その(あざ)どうしたんだ?」

 彼女の左腕には青い痣が出来ていた。結構大きいもので、相当な力が加わらない限りこんな痣はつかないだろう。

「ちょっと階段から落ちちゃって」

 そう蓬奈は言うのだが、痣の位置があまりにも不自然過ぎる。階段から落ちたとしても、痣が一つ出来るだけで済むというのは考えにくい。唯一思い当たるとしたら、誰かに強く握られたか、それとも叩かれたか。彰介が剣道の練習をするときに入部したての一年生が籠手を外し、竹刀が彰介の腕に思いっきり当たって、蓬奈と同じような位置に痣を作ったことがある。

「ねえ、もう帰ろう」

 蓬奈は曇った顔で彰介の腕を引き、そして学校から逃げるように歩きだした。ちょっと不審な点があるのだが、そこはあえて口に出さない事にする。そっとしておいた方がいいだろうと彰介は思った。




「はい? 上がり込むんですか?」

 奏衛門が携帯電話を片手に驚愕した。場所は大蔵山の屋敷の縁側で、庭園を眺めながら誰かと通話をしているようだ。

「うん。今まで六堂組を捜査してたんだけど、向こうのガードが甘すぎるのよ。いかにも自分たちの事を調べて下さい、って言っているような感じでね。もしかしたら狙われている事に気付いて、私と同じ会社の奴に依頼を頼んだのかもしれない。私を殺してほしいって」

 携帯電話から聞こえてきたのは女性の声だった。落ち着きのある奇麗な声。

「殺すって……。同じ会社の仲間でしょう?」

「仲間? そんな言葉、私たちの世界じゃ通用しないわ。それに私のいる会社は報酬と引き換えに、頼まれたものは何であれ実行しなくちゃいけないの。たとえペット探しでも人殺しでも」 

 女性は淡々とした口調だった。まるでマニュアル本を片手にして言ったような、冷たい感情が伝わってくる。

「依頼された殺人の的が家族でも?」

「もちろん。それが友人や恩師だとしても同じ事よ」

 奏衛門は女性との電話を止め、縁側に座ってぼんやりと何も考えずに空を眺めた。カラスが鳴きながら数羽の群れを作って横切る。

「今日は疲れたなぁ」

 覇気のない奏衛門の声は、誰もいない静かな空間の中に溶けていった。

今回の後書きも長くなりそうです。

ご了承ください。



よく考えると小説って文字が並んでいるだけなんですよね。

その文字並べにプロ作家はご飯を食べて、いっぱ悩まされています。

悩むという点に関しては私を含め、ネット上で小説を書いていらっしゃる作家さんも同じ事だと思います。


そして並べた文字を読んでみると、この世界とは違った架空の世界が広がっています。

これって凄いと思いませんか? 並ばれた文字を読むだけで今とは違う世界が広がっているだなんて本当に不思議なことだとですよね?

そしてその世界を感じることができたら、それを創った人の考えを知る事が出来る。

人間って本当に面白い生き物だと思います。





と、妙な自論を書いてみました。

何言ってるかわかりませんね。全くもって。

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