7月2日
次の日も何事もなく起きた私は、リビングに行き洗ってある食器を見て小さくガッツポーズをしました。
「良かった、食べてくれてる」
美味しかったかな? どんな味が好みなんだろ? そんなことを考えながら、二人分の朝食を用意します。
「ふ~ん。目玉は、半熟~」
鼻歌を歌いながら目玉焼きを作っていると、リビングにある電話が赤く光っていました。
「何だろ?」
フライパンに蓋をし火を止めて、余熱で焼きながら電話の前に行きます。
「留守電? このボタンかな?」
留守電と表示されていて、ボタンが赤く光っていたので押してみました。
「おう、娘よ。__はどうだ? 今、シリアにいるんだ__だろうけど、しばらく帰れそうにない。__」
所々ノイズがひどく聞き取れないけど、父の帰りはしばらく後のようだ。
聞き終えたところで丁度良くトースターから、パンが飛び出します。
「できた!」
スキップでコンロの前に行き、蓋を開けたると目玉焼きはよく焼きになっていました。
・・・・・・・・・・
「おはようございます、真里菜さん」
「あ、おはよう。三井名ちゃん」
「何だか、元気がない感じですか?」
教室に着くと三井名ちゃんが心配そうに、聞いてきました。
「へへ、そうかな? 今朝、目玉焼き失敗しちゃったからかな?」
少し照れながらそう返します。
「ふふ、そうでしたか……あ、一限目。体育ですので一緒に行きましょう」
「うん、荷物置いてくるね」
三井名ちゃんに案内してもらい体育館に移動しました。
「そういえば真里菜さんの家って、昨日のニュースで映っていた近くですよね?」
今日の体育はシャトルランのようです。
自分の番まで体育館の隅に座っていると、先に走り終えた三井名ちゃんが隣に座って、聞いてきました。
「うん、だから少し怖いんだ」
「お兄さんがいるのにですか?」
三井名ちゃんが不思議そうに聞いてきます。
「う~ん。なんていうか、会ったことないんだよね」
「え、それはどういうことですか?」
「ひきこもり? なのかな? 部屋から出たとこ見たことないんだよね」
「え、引っ越してきてからから一度も? でも、カツ丼は食べったって言ってましたよね?」
少し前のめりになって、早口で言ってきました。
「夜中に食べているみたいで見たことはないんだ」
「ますます、あの家は謎ですね」
「え、どういう意味? 三井名ちゃん。あ、呼ばれちゃった」
すごく気になりながらも先生に呼ばれたので、スタート位置につきます。
その後も先生の手伝いやすれ違いで、昼休みをむかえてしまいました。
「そろそろ聞いてもいい三井名ちゃん?」
うどんに一味をかけながら、向かいに座る三井名ちゃんに声をかけます。
「はい? 何か授業で分からないとこでもありましたか?」
「そうじゃなくて~」
ホントに覚えてないらしく、キョトンとしている。
「どうしたんだ? 喧嘩か?」
三井名ちゃんの横に座りながら、小鳥ちゃんが聞いてきます。
「喧嘩じゃないよ~。ほら、体育の時三井名ちゃんが言った、私の家がどうとか」
そう言うと、ああといった表情を三井名ちゃんはして、手をたたきました。
「そうです。小鳥」
「おお、どうしたんだよ」
三井名ちゃんの声に驚いて、小鳥ちゃんは手に持っていたスプーンをカレーの上に落としまいます。
「お化け屋敷です。調査しなきゃなんです」
「はぁ? おい、真里菜。この頭、お花畑が言ってくる事は気にしなくていいぞ」
跳ねたたカレーを気にすることもなく、小鳥ちゃんはカレーを食べ進めました。
「え、え、どうすればいいの? ってか、お化け屋敷てなに」
「もう、聞いてよ小鳥。真里菜さんの家はあの、お化け屋敷なんです」
「だから……え? マジか?」
小鳥ちゃんがカレーをすくうのを止めて、私の方を見てきます。
「いや、違う……よ?」
私は、三井名ちゃんの方に視線を向けました。
「あのね、真里菜さん。真里菜さん今住んでる家はこの辺りでは有名な心霊スポットなの」
三井名ちゃんが生き生きと言ってきます。
「ホント? 三井名ちゃん? 小鳥ちゃん?」
不安になって二人の顔をうかがいました。
「「……」」
「何で目をそらすの?」
「まあ、あの家なら行ってみたいな。一度、幽霊と戦ってみてーし」
「私も調査したいです」
「え? 何、二人とも」
目をそらしたかと思えば、今度は二人して私の方を見てきます。
「放課後、遊びに行っていいですか? 真里菜さん」
「え、うん。いいけど……お化け屋敷ってどういうことなの?」
「放課後、改めて教えてやるよ」
「え、小鳥ちゃんも来てくれるの?」
「行ったらダメなのかよ」
「ううん。ウエルカムだよ」
お化け屋敷の事は気になったけど、友達を家に招くという私のひそかな夢がかなったことが嬉しくて、この場では聞かないことにしました。