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8月31日  作者: 狸寝入り
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8月31日①

 

 木下真里菜は楠学園中等部一年だ。

 唐突に転校させられ、今日からこの町で暮らすことになった。

 授業が終わり、父の書いた地図を頼りに新居に向かう。

 再婚相手の母の持ち家だそうなので少し緊張しながらも、向かう足取りは軽い。なぜなら、私の夢である一軒家に住めるからだ。

 これで転校もしばらくはないだろう。

 ブーブー。

 そんなことを考えていると制服のポケットで携帯が震えたので、立ち止まって確認する。

「お父さん?」

 珍しくお父さんからメールが一通来ていたので開いてみると……

(悪い! 申し訳ない!! パパは南極に行くことになった。ママも一緒だ、荷物は家に朝のうちに搬入したからな! 鍵はポストに入ってる。psお前の専用の部屋を二階に用意したから、怒らないでくれ)

 と、書かれていた。

「お父さん~! はぁ、仕方ない帰るか……」

 天に向かってため息を一つして、帰宅を再開する。

 お父さんはいつもこうだ。転校の話しを聞いたのも、昨日の放課後に先生からだった。夜行バスでこっちまで来ることになってへとへとだ。

 前もって、話してもらいたい。

「ここかな?」

 学園から二十分ほどの場所に家はありました。

 白い壁に赤い屋根の、二階建て住宅。

「お邪魔します……」

 誰もいないだろう家に、声をかけて上がります。

「わぁ……」

 家の中は新築のようなきれいさで、手前からドアを開けて探索を始めました。

 玄関直ぐのドアがトイレでその横に風呂場あり、リビングのすぐ横の部屋がお母さんの寝室になっています。

 そして、リビング。憧れのアイランドキッチンに四人掛けのテーブル。今まで四畳半のアパートに住んでいた私は、テンションが最高潮になってリビングに置かれたガラスケースをのぞき込みます。

「おぉー」

 中にはトロフィーや表彰状が置かれていて、どういった賞なのか見ていくことしました。

「野球部のトロフィー? 楠学園高等部のだ……中嶋圭一なかじまけいいち誰だろう……」

 不思議に思いながらも二階を見ていないことを思い出して、考えるのやめて二階にを見ることにした。

 二階には部屋が二つあり、手前のドアにはひらがなで真里菜と書かれたプレートがあり私の部屋だと分かる。もう一つドアには圭一とひらがなで書かれていた。

「もう、お父さん。お兄ちゃんができるなら言ってよ……」

 一人愚痴りながら、圭一と書かれたドアをノックする。

 中からの返事がないので、仕方なくドアのノブを回す……

 ガチャガチャ。

「ありゃりゃ。鍵かかってる。寝てるのかな?」

 仕方がないので自室に行くことにした。

「ふぅー。今日からここが家か……」

 部屋の窓側に置いてくれていた、ベッドにダイブして天井を見上げる。

 まさか、まさかの兄ができるなんて……優しい感じで、松潤みたいだといいな。それでそれで、一緒にご飯食べたり、お風呂も……。

「キャーッ。って。あ、今何時だろう?」

 妄想からふと、我に返りスマホで時間を確認する。

「やば!」

 十九時を少し過ぎていた。

「着換え……は諦めて、晩御飯の材料買いに行かないと」

 着替えが入っているだろう箱の山を見て、制服のまま買い物に飛び出します。

「うぅ……しまた。スーパーどこだろう?」

 家を出て歩くものの、スーパーの場所が分からずスマホも忘れてしまったため途方に暮れて立ち止まってしまう。

「木下さん?」

 直ぐ近くで名前を呼ばれたので視線を向ける。

 声の主は、眼鏡をかけたみつあみの女の子だった。

「えっと……」

「私、同じクラスの鳥飼三井名とりかいみいなです」

「これはご丁寧に……えっと、どうしたのその格好?」

 鳥飼さんの服装が割烹着で何故か岡持ちを持っていたため聞く。

「家の手伝いだよ。すぐそこで蕎麦屋をやっているの。木下さんは?」

「えっと、道に迷ったり? スーパーさがしてたり?」

 さすがに迷子と認めるには抵抗があって、そう濁す。

「それは大変です! 事件です。とりあえず来てください」

「え、え」

 鳥飼さんに手を取られて引っ張られるように歩く。

 連れてこられたの場所は、老舗のソバ屋だ。

「ただいま」

「おう、もう今日は上がっていいぞ」

 鳥飼さんの声に反応して、ガタイのいいおじさんが出てきました。

「はい。あ、お父さん。カツ丼お願いできますか?」

「できるが……どうしたんだ?」

「事件です。話を聞かなきゃなんです、取り調べです」

「なに、てことは後ろの子が何かあったのかい?」

 鳥飼さんの家であろう蕎麦屋の中で、ほかの人がいないもののこの状態は気まず。でも話すタイミングを逃してしまう。

「です、です」

「よし、部屋で待ってろ。直ぐ持っていくからな」

「はい。さあ、あがってください」

 厨房の奥のドアから家に繋がってるらしく、そこから上がり鳥飼さんの部屋に案内され、座らされる。

「で、何でこんな時間に出歩いていたんですか?」

「こんな時間って、まだ八時だよ?」

「八時に出歩くのは不良です」

「え、そうなの?」

「おう、入るぞ」

 鳥飼さんと話していると先ほどのおじさんがやってきた。

「お邪魔してます」

「ほら、カツ丼だ。で、どうしたんだい?」

 これ以上ややこしくなっても、不味いので洗いざらい話す。

「なるほど、なるほど。」

「なんでえぃ、そんな事かい」

「すみません。後、カツ丼美味しかったです。ありがとうございました」

「家出じゃないんですね、安心しました。では、今日は送りますね?」

「だな、ついでに明日はこの子の案内してやんな」

「いや、これ以上迷惑話かけるわけには……」

 深々と頭を下げて、申し出を断る。

「私がしたいだけなので、気にしないで下さい。ダメですか?」

「ううん。ありがとう鳥飼さん」

「ふふ、三井名でいいですよ」

「じゃあ、三井名。私も、真里菜って呼んでよ」

「はい。真里菜さん」

 今日この町に来たばかりだけど、早速友達もできてうまくいく予感がしました。それに今日の晩御飯として、この店のカツ丼がすごく美味しかったので、お兄ちゃんの分もテイクアウトさせてもらった。












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