居候先、決まりました
「リトルじいさんのお友達?」
突然、レインボーモヒカンの孔雀に声をかけられた。
派手ですね。
というか、リトルじいさんって、見た目そのまんまの名前だったんですね。
孔雀と普通に会話できるって、新鮮な感覚だな。
「おじいちゃんの事、知ってるんですか?」
そういえば、小さいおじいちゃんのことを何も知らなかった。
「知ってるわよ~。ひと月くらい前に、16歳の女の子と結婚式して私も参列したのよ~。
数年前に、前の奥さんを亡くしてすごく落ち込んでいたから心配してたけど、まさか、こんなに若くて可愛い奥さんが来てくれるなんて良かったわね~って、祝福ムード満載で結婚式は大盛り上がりだったのよ~。一晩中、皆で踊りあかしてね~。
それなのに、これから新婚旅行に行くって時にリトルじいさんが盗賊にさらわれちゃって」
「私、この世界の者じゃないんです。ひと月くらい前に、露店で売られてたおじいちゃんの鉢植えを買ったんですよ」
「あなた、異世界から来たの?
リトルじいさん、徹夜で騒いだから疲れてて、植物の姿になって光合成してたのよ。そしたら、そのまま眠っちゃって、盗賊にさらわれた後、あなたの世界で売られていたのね」
お爺ちゃんに同情しながら孔雀さんはうなずく。
「なんで盗賊がおじいちゃんをさらうんですか?」
「それはズバリ、三角関係ね!」
三角関係? おじいちゃん、やるなぁ。
「リトルじいさんは花の妖精だけど、もともと優秀な妖精だし、長生きしたせいか魔力も上がって、かなりの魔法の使い手でもあるの。
だから、リトルじいさんに魔法を習いにいく妖精や動物も多いんだけど、その教え子の一人がリトル爺さんに熱を上げて、花嫁になったのよ」
16歳の少女に熱を上げられるって、おじいちゃん凄すぎるよ!
「リトル爺さんは200歳くらいだっていうのに、枯れ専だよねぇ」
16歳で枯れ専? おじいちゃん、よかったねぇ。
「花嫁に片思いしてる青年がいてね、リトル爺さんさえいなければ振り向いてもらえるんじゃないかと思ったのか、盗賊に頼んでリトル爺さんをさらったみたいなんだよ。爺さんがいなくなってから、ずっと花嫁を追いかけまわしているんだけど、ちっとも相手にされてないみたいだけどね」
「おじいちゃん、愛されてるんですね」
「私たちには分からない、枯れ専の魅力があるんだろうねぇ」
そっか。じゃあ、今頃は感動の再会で盛り上がってるんだろうなぁ。
「このひと月の間、今自分が何処に居るのか、この世界にどうしたら戻れるのか、一生懸命考えていたんだろうねぇ」
この世界に戻れて、真っ先に最愛の奥さんに会いたかったはずなのに、私に魔法を教えて話せるようにしてから行くなんて。
おじいちゃんの、そんな思いやりのある優しいところが奥さんも好きだったのかもしれないね。
「これからどうするんだい? 名前は何て言うんだい? 何か力になれることがあれば言っておくれ」
レインボーモヒカンが心配そうに揺れる。
孔雀さん、今の一言、胸にグッときました(涙)
「私はルカって言います。孔雀さんは?」
「私? 私はレインボーだよ」
あなたもそのまんまなんですね。
「話は全部聞かせてもらったよ」
低いセクシーボイスが背後から聞こえ、振り向くと、そこには虎耳のイケメンが金毛の子虎を抱えて立っていた。ラフな普段着なのにモデルのように美しい。
ていうか、人の世間話を堂々と全部聞くんかいとか思ったけど、イケメン過ぎて突っ込めないわ。
「うちの子が、じっと見つめてハートマークを飛ばしてくる子がいたっていうから、どういう子か見てたんだけど。よかったら、うちに来てこの子の子守りをしてくれないか? リトル爺さんの家に行っても、サイズが小さすぎて家に入れないし、奥さんとふたりにしてやれよ」
もしかして、イケメンのイクメン?
「この子って、お兄さんの子供?」
「そうだ。可愛いだろ? 大きくなったら、人の姿にもなれるんだ」
そう言って、溺愛パパは高い高~いを始めた。
「本当に、お世話になってもいいんですか?」
「男に二言は無いぜ!」
ビシッと親指を立てるイクメン。子虎も親指立ててる~!可愛すぎるよ~!
「よろしくお願いします!」
角度90度のお辞儀をする。
ルカ6歳。イケメンのイクメンのお家に居候することにしました!