序
二〇XX年、人類史は終焉を迎えた。
遺された書物によって終焉の理由は異なっており、大国の核兵器を用いた世界大戦、世界規模の地震や台風による大災害、地球外生命体による侵略等さまざまな記載がされている。
真偽はともかくとして、人類史は滅んだ。人類曰く、地上は原因不明のウイルスが蔓延し、大半の生き物は滅亡した。なんとか未知の脅威から逃れた人間の一部が、ウイルス(仮)の影響を受けない地下へ逃げ込んだ。列車のホームや地下街よりも更に底。太陽の光はもちろん届かず、酸素がなんとか送られるような深い世界。
閉鎖された地下世界で数百年、祖先を残すことに成功はしたものの、太陽の光も届かず、エネルギーも食料も限られた世界が持続できる時間は限られていた。
病が流行って全滅した集団も、ストレス過多による殺し合いで全滅することも珍しくない。
しかし、こうして完全に人類史が終わった世界であっても、たった一人の人間は生き延びていた。正確に言うと生かされていた。死んでも死んでも生き返る。人類が過去に欲した不死の力を、皮肉にも孤独な人間が授かったのだ。
世界最後の人間は、世界に生かされた。孤独な世界で、死ぬ苦しみに怯えながら、死ぬたびに死にたいと願う少女は数多の死の末、青い空を見る。
世界の滅びを願う一人の魔術師と、人間よりも人間らしいロボットと共に――