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MASKULL.K  作者: ホーリン・ホーク
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6.ハイパー・キリング・モード

 仮想訓練(バーチャルリハーサル)では飽き足りず、犀男(さいおとこ)ブライノスは仲間にも実戦を挑んだ。

 ハイスペックの二人、ネプラスとライオーが受けて立つ。

 海神を模すネプラスはブライノスを侮り、迂闊に組み合って一気に胴を貫かれた。


 ライオーは百戦錬磨、獅子の武人。

 ネオ・ナピスの武闘ナンバー2と言われる男。

 ブライノスは更に闘志を燃やし、ぶつかり合った。


 地下闘技場の壁や床がひび割れる、轟く雷鳴が基地内を揺るがす。

 響き渡る咆哮。……やがて膝をついたのはライオーの方だった。


 差し伸べられるブライノスの手。

 誇り高き武闘家同士、ライオーはブライノスと固く手を握り肩を叩いた。

「勝ってこいブライノス。その後またお前に勝負を挑む」



 ジェネラル・ガイセルは、武士然たるブライノスに「敗れれば後はない」と命じた。

 肢体を漲らせ、ブライノスは出陣した。



 ****



 ジェネラル・ガイセルは専用のコンディションルームに入った。

 完全な個室で銀の鎧を脱ぎ、酸素マスクを着ける。

 高感度スキャナーが体内部の映像をモニターに映す。

 朽ちた外皮が剥がされ、新たな人工皮膚が移植される。

 おぞましい素顔が憎悪を露わにした。


 ――Dr.フォレストン。わかってる。あんたは死んではいない。いったいどこでデモリスを操っている? あんたにはこのネオ・ナピスに加担した責任がある。必ず見つけ出してやる!


 ネオ・ブレインのコネクタがガイセルの後頭部に繋がれた。

 目を見開いた彼はそこを出て壇上に立ち、剣を天に突き上げマスカルズたちに命じた。


「Kを捕らえよ! 奴は究極の素体。ナピスの所有だ。デモリスこそ忌むべき存在!」



 ****



 街で暴れるブライノスの前に、メタルブロウを駆りKは降り立った。


「待っていたぞ。K!」

「場所を変えよう。ここは狭い。存分に力を出せない」

 ブライノスは承知した。



 Kが導いた先は人気のない採石場。

 飛行戦艦ドランホエイルから飛び降りた二・三メートルの巨体ブライノスが気を放電する。


「安心しろK。殺しはせん。生け捕りにしろとの命令。お前は貴重な素体なのだと」

 Kは拳を握り身構えた。

「とは言っても俺は死力を尽くして闘う。ここには一対一、全てを出し切る」

 ブライノスの言葉にKは頷く。

「君のような男もいるんだな、ナピスには」

「改造されても誇りは忘れん。さあ、俺のグラフェン製アーマーをお前は破れるか?」



 暗雲が立ち込め、稲妻が走った。

 眩くぶつかり合う二人。衝撃が耳を劈く。

 突き出た犀角をよけ、ブライノスの胸元に入るK。

 ブライノスの太い腕と脚はしなやかにKの体を絡め、回転しながら上昇した。

 その風をKはベルトのバックルから吸収する。

「させるか!」とブライノスは突如急降下し、Kを岩盤に叩きつけた。

 そして杭打ち機のように踏みつけた。


「……うぅ!」

「なんだそのザマは!」

 ブライノスは飛び、両脚で一気に踏み潰す。

 地に膝までめり込む、巻き上がる土埃と粉塵。しかしKがいない。

 すると百メートル程先に全身をスピンさせながら地表を割ってKが飛び出してきた。



「まだだ、K! 本領を発揮せよ!」

 Kの両目が光る。

 それは真っ赤にほとばしっていた。

 地獄からの使者、爆風を巻き起こす――

HYPER(ハイパー)KILLING(キリング)MODE(モード)、K!!〟。



挿絵(By みてみん)



 ブライノスは突進した。

「Kよ! かつてお前が倒したマスカルズ……コブラやエレファント、イカロスたちの能力を得た俺は無敵! 選ばれしキサマとは互角、いやそれ以上!」

「来い! ブライノス!」



 超硬合金のブライノスの背に翼が広がる。

 飛翔し襲いくるブライノスに対しKはスピンさせた体で両腕のブラストハンドを発動した。

 分子破砕線の青白い竜巻。二人の激突。

 そして爆裂四散するブライノスの両腕。

「……おのれ!」

 立ち上がり、その一角に二百万ボルトの全エネルギーを集中させた。



挿絵(By みてみん)



 金色に放電する犀男(ブライノス)と髪を銀色に逆立たせた死神()

 再度の衝突は天を裂き、地をも砕いた。

 唸り声を上げ、ブライノスは崩れ落ちた。



 着地したKはその息の根を止めるため、歩み寄る。

 冷酷に煌めくブラストハンド。

「……そうだK。()れ! 俺にトドメを」

 醜く顔が潰れたブライノスは堂々と座し、目を閉じた。


 Kは右腕を振りかざした。

 リブラスト粒子が形成するそれはまさしく死神が振るう大鎌だ。轟々と膨張してゆく光刃。

 だが、突如それは止められた。

 赤く怒り続けたその目も元の青に戻る。

 ブライノスは叫んだ。


「バカな! 何を躊躇うK。お前に敗れた俺には死しかない。無様な生より死を!」



 吹き荒ぶ風。

 黙したまま、Kは背を向けた。ブライノスは呼び戻す。

「頼む。武士の情けだ。腹を切る。介錯を……」

 Kは静かに告げた。

「生きろ。生き恥をさらしてでも。人には生きる使命がある」

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