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MASKULL.K  作者: ホーリン・ホーク
3/15

3.愛しのジュリア

挿絵(By みてみん)



 マスカルズの究極体〝K〟を生み出したのは天才科学者Dr.フォレストンだ。

 Kの動力エネルギー源は組織が発掘した鉱石〝リブラスト〟。

 それはビッグバンの無限の力を内包した石。

 リブラストを埋め込まれたKは究極の改造人間と言えた。


 だが、手術後覚醒したKはある時暴走してしまう。

 研究所を斬撃し、基地を半壊させ、()()()()()()()、逃亡した。

 フォレストンはKの力を恐れ、その機能を停止すなわち抹殺を決意する。


 マスカルズ最強体のKを称揚する組織ネオ・ナピスに反し、フォレストンは破壊ロボット・デモリスを放ち、逃げたKを追わせた。そして自らもナピスを抜け出た……。



 ****



 ショーンは少し部屋を片付け、ケイを招き入れた。

 きょろきょろと壁を見回すケイをソファに座らせ、コーヒーを淹れる。


「お礼のコーヒー」

「あ、ありがとう」

「俺はショーン・オノデラ。三十五歳。新聞記者やってる」

「写真がいっぱいだ」

「この大峡谷、凄い景色だろう」

 ショーンも腰掛け、向かい合う。

「三流だがね。ズバリ()くが、あの怪物と君の正体、何者なんだ?」


 ケイは無表情に見つめる。

 ショーンは顔を寄せ、その目を覗き込んだ。

「綺麗な瞳だな。その青い目はカラコンかい?」

「から……こん?」


 まぁいい、という感じでショーンはどかっと背もたれた。


 ケイは語り出した。

「僕は改造人間。僕もあの怪物たちと同じ、ネオ・ナピスという組織が造った〝マスカルズ〟。でも抜け出した。そこを……四十八年前に」


 ぽかんと口が開いたままのショーン。

「僕はずっと逃げてきた。ジュリアを捜しながら」

「……ナピスという名は知る人ぞ知る……四十八って、君は今いくつなんだい? そんな歳には見えないが」

「わからない。改造されて老けもしないらしい」

「……ほう。俺よりずっと若く見えるのに俺よりずっと年上か。で、そのジュリアって人は君の」

「愛する人だ」



 ケイはたどたどしく語る。

 半世紀ほど前のことを昨日のことのように。

 ショーンはじっとケイを見つめた。



 ジュリア・メイスンは当時Dr.フォレストンの助手で、目覚めたばかりのケイを介抱した。

 話す練習も歩く訓練も彼女が寄り添った。

 ケイが覚醒したのは彼女への愛ゆえ、だった。



「ジュリアの話した海を見せたかった。彼女は海の近くで生まれたんだ」

「……そうか。彼女を連れ出し逃げたってことか。でもどうして」

「不覚にも、その後ジュリアをさらわれた。黒いロボット、デモリスに。Dr.フォレストンは奴を使って僕を殺そうとする」

「それは……君が危険だから?」

 ケイは頷く。そしてその手のひらを見つめた。

「……ジュリアはフォレストンのもとに。だが彼も組織を抜けたとデモリスから聞かされた」


 頬杖をつき深い息を吐くショーン。

「……ケイ君。君はどこで生まれたんだい?」

「え? あ、ああ僕は……それまでの記憶がないんだ。目覚めたらこの体で……元々何をしていたかも今も何も思い出せない」

 ショーンはコーヒーをすすり、こめかみに手をあてじっと考えた。

 彼の長い孤独を想像した。



 ケイは胸元から傷んだ紙を取り出す。折り畳んだ画用紙を。

 ケイはそれを広げ、ショーンに見せた。

「ジュリアの似顔絵だ。僕が描いた。……もし、記者だという君に頼めるなら……情報が欲しい」

 手に取った絵を見つめながらショーンは頷いた。

「……俺に協力してくれと?」

「そう。彼女の生体波動を求め、捜し続けた。そして現れたデモリスの後も追った。この街のどこかに、奴はいる」



 ジュリアの無事を切に願うケイ。ショーンが

「わかった。君は命の恩人だからな」と応えたその時、家が大きく揺れた。

 ケイは立ち上がった。ショーンは慌てふためく。

「じ、地震か?!」

 ショーンの背後の戸棚が傾くのをケイが止めた。

 いくつかのフィルムやフォトフレームがこぼれ落ちる。

 ショーンを守りながらケイは彼の肩を確と握った。


「違う。これは奴らの仕業だ」



挿絵(By みてみん)

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