2.ネオ・ナピス
地下基地に帰還する四体のマスカルズ。
うち瀕死のデスパイダーは巨漢ブライノスに担がれている。
組織の統括ジェネラル・ガイセルはデスパイダーの損傷を見る。
「……やはり敵対するか……K」
かつて手練れの者を向かわせたがその捕獲に失敗した。
ガイセルは蝙蝠型改造人間バルトの目に映した解析データを見つめる。
Kが発動するブラストハンド=分子破砕線の威力は四十八年前の開発時レベルを凌駕していた。
「それこそ我々マスカルズが成長する存在だという証」とマッド・マンティスが鎌状の手を舐める。
犀型のブライノスも頷く。
「確かに。我々は元より人間。全くの操り人形……ロボットではない」そして
「この哀れな蜘蛛男は旧式でKの認識が遅れた」と言い、デスパイダーを肩から下ろした。
ガイセルはその銀の鎧を煌めかせ、壇上に上る。
パネルにタッチすると虹色の未来都市が巨大スクリーンに浮かんだ。
「見よ。この均整のとれた統治国家の眺望を。我々は貪欲で脆弱な人類より進化した。満を持してこの現世を征する。始祖リガル・ナピスの意志〝ネオ・ブレイン〟が醜く歪んだ世を粛正するのだ!」
エルドランド国軍の武器弾薬兵器を秘密裏に開発していたナピス・ファミリーは一九六四年に壊滅した。
だが組織の残党が〝ネオ・ナピス〟を結成、人体改造による強化人間マスカルズを引き続き生み出していた。
統制コンピューター・ネオ・ブレインのもと、やがて彼らは世界征服を掲げた……。
一方、そこはプリテンディアの町外れの古ぼけた一軒家。午前十時。
ショーン・オノデラはテレビで街の惨状と死傷者数を見ていた。
目をこすりながら昨日の事実を回想する。
助けてくれた若者のことを思う。
怪物たちのことも。だが、それを収めたカメラはここにはない。
ふと、玄関のチャイムが鳴る。
気だるく出るとそこに立っていたのはあの若者だった。変身する前の、人間の姿で。
ショーンは震えながら頭を下げた。
「あ、あんた……き、昨日は、ありがとう」
百八十センチのすらりとした飾り気のない青年。
整った顔の青い目で柔和な笑みを浮かべる。
「無事でよかった」
「どうして、何故ここがわかったんだい?」
「一度触れたらその生体の波動を覚える。落とし物を届けに来た」
「え? 落とし物?」
彼はショーンの一眼レフカメラを手渡した。
そして「僕はケイだ」と名のった。