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MASKULL.K  作者: ホーリン・ホーク
14/15

14.再会

挿絵(By みてみん)



 ****



 大峡谷は黒煙を吐き、地が揺れ、崖が崩れた。

 魔の巣窟、ネオ・ナピス基地の大爆発。

 地獄の炎が冷たい空に野望の死骸を巻き上げた……。



 ****



 とある海岸。

 Kは砂浜に辿り着き、膝を着いた。

 抱きかかえていたジャガールを静かに砂場に下ろした。

 彼女の頬を覆っていた真紅のマフラーを外す。

 彼女の顔は人の顔に戻っている。

 ブロンドの長い髪は傷み、鋼鉄の爪は折れていた。


 K――ケイはずっと彼女を見守り続けた。

 暗い海には四散した残骸が浮かび、残響が漂う。


 やがて彼女は目蓋を開けた。

 ケイは震える声で呼びかけた。


「ジュリア……僕がわかるかい?」

「……」

「僕だよ、ケイだ。やっと会えた……」

 ジュリアの手がケイの頬に。

「……あなたは……誰?」

「え? ……ジュリア、僕のこと」


 ケイは目を腫らしてボロボロ泣き出した。

 胸元まで流れ落ちる涙を撫でるジュリア。

 ケイは、長い年月で彼女が自分を忘れたのか、それとも全く記憶を失ったのか訊ねた。


「ジュリア、あれから半世紀近く経ったんだ。君は僕に優しかった。短い間でも君と旅したろう? ほら、君の見たかった海だ。これが海だ」

「……うん。海……」

「名前は? 僕はケイ、君の名はジュリア。覚えてるかい?」


 すると彼女の目に何かが止まった。

 それはケイのブレストアーマーの中に仕舞ってある画用紙、彼女の似顔絵。

 ジュリアはそれを引っ張り出し、広げてみた。


「……あ、それは君の」

「……これ……は」

「僕が描いたんだ」

 鉛筆で描かれたやわらかい線の、ジュリアの絵。

「これ、私ね?」


 惹きつけられたその目はキラキラと輝いた。

 ケイはジュリアを抱きしめた。

 彼女もケイの背中を強く引き寄せた。

「そ、そうだよジュリア。ずっと、君を想っていた」

「ケイ。知ってるわ。私も、あなたを愛してる」





 穏やかな波の音が聞こえる頃、後ろの松の木の枝から落ちてくる物体が。

 焼け焦げたその丸い物体は二人の手の届く位置まで転がってくる。

 ひやりと、ケイとジュリアは身を反らした。

 それはデスパイダーの頭だった。

 ケイに敗北しロボットと化し、またジャガール=ジュリアに倒されたマスカルズ・蜘蛛男の頭。

 ジュウジュウと音を立て、つり上がった目と複眼の額が二人をじろりと見つめた。


 デスパイダーはおぞましい声を発した。


「……フォ……レストンは……生き……ている」

 脳だけは人のままの、その眠っていた記憶が発した言葉。

「……Kよ……俺はあの時……追い詰めていたんだ……奴を」

 そこでショートし、デスパイダーの機能は停止した。


 ゆっくり立ち上がるケイ。

 見上げるジュリアの髪を撫で、ケイは言った。

「……わかっている」



 ****



挿絵(By みてみん)


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