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MASKULL.K  作者: ホーリン・ホーク
13/15

13.基地の崩壊

挿絵(By みてみん)



「……クローン……複製」

 Kは声に出し、また詰まらせた。

 リュウは燃え盛る目で睨みつけた。

「そうだ……俺の体細胞から造られたクローン。父はそんなお前を死神Kに造り変えた。笑うだろう。まさに悪魔の所業だ」


 その時、闘技場に響き渡ったのはゼブラスの声だった。

「諸君! 感動のご対面だな! 打ち震えてフォレストンの力も尽きたようだ」

 察した通り、フォレストンの念動力は弱っていた。

 五十メートルほど離れた闘技場の入り口から、ゼブラスはジャガールの腕を掴み引きずって来る。


 ゼブラスは戯け混じりに言い放つ。

「これはこれは前将軍のガイセル様……いや、死に損ないのリュウ・ドラグナイト様か!」

「……ゼブラス、貴様!」

「姫をくれてやる。死ねええええーーっ!!」


 ゼブラスは気を失ったままのジャガールをいとも軽々とリュウのもとに投げつけた。


 飛んでくる肢体。

 Kは床を蹴り爆風とともに両手を広げ彼女を受け止めた。

 衝撃で体が反った隙を襲ってくるゼブラス。

 Kはバックルから吐き出す逆風でその剣を避け、着地し彼女を床に下ろした。

 さらに剣を振るい飛びかかってくるゼブラスにKは渾身のキックで立ち向かった。

 その右足は紫紺に渦巻き、強大な破砕波を放つ……!


「うがああああ!!」

 ゼブラスの剣は砕け、赤縞の鎧も骨も肉も粉々に飛散した。


 そこで闘技場に灯りが点き始める。

 フォレストンはKに告げた。

『……ネオ・ブレインが復活する。副動力が作動し始めた。ここまでなんとか抑えてきたが……もう限界だ』


 虫の息でリュウは左手をかざした。

「……お、俺の……祖国……母よ……父よ」

  するとそこまで場を静観していたKのバイク・メタルブロウの中のグリーンが呼びかけた。

 フォレストンは感じていた。そこにグリーンの魂があると。


 グリーンはタイヤの足でリュウの傍らに移動してくる。

『……リュウ君。グレイヴス国に兵器を売り、焚きつけたのは他ならぬナピスだ。ギルミアを滅亡に追いやったのはナピスともいえる。組織はこの国だけではなく世界各国に武器を売り捌き、手玉にとっていた。君は利用され、洗脳されただけだ』


 うずくまるリュウの目には涙が。

 グリーンは続け、(たず)ねた。

『ネオ・ブレイン……いや、リガル・ナピスの亡霊が君の分身=Kの身体を使い、蘇ろうとしている。……もしや君はそれを阻止しようとしたのか?』


 リュウは突然むくりと起き上がった。

『……フッ……美談にする気などない。俺は俺を取り戻したかっただけだ』

 リュウはそう言い、黒焦げの体でよろめきながらグリーン=メタルブロウのシートに跨った。


『グリーンあんたも、父も……そして俺も責任をとらねばならない』

 デモリスヘッドのフォレストンはリュウの肩先に寄り、頷いた。

『わかっているとも』



 闘技場が揺れ、電子音が飛び交う。

 フォレストンはKに思念を送った。


『K、彼女を連れて早く去れ!』


 起動しているメタルブロウ=グリーンも送る。


『別れだK。だが私はいつも一緒だ。そして決して自分を卑下するんじゃない。その存在こそ尊いのだから』

 リュウはその上で静かに息絶えた。


『早く!!』と叫ぶフォレストンに圧され、Kはジャガールを抱きかかえた。


 鋼鉄の要塞からの脱出。

 爆風を纏い、Kは出口を目指した。



『すまなかった。グリーン私は……』

『我が師フォレストンよ。いいんです。私は自ら改造を申し出た。恩師であるあなたの力になれればと、ただそれだけで。そして私もあなたを救えなかった……』



 二人はリュウの亡骸と共にメインルーム地下、ネオ・ブレイン心臓部の主動力炉(メイン・リアクター)に突っ込んでいった……。



挿絵(By みてみん)

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