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遺書

作者: 佐伯黒百合

「私」の遺書を見つけたよ

最期にたった二行の遺書だってさ

それしかあの人に言うことないのかよって思ったけど

それしか言えないんだよな

「愛してる」と「ごめんなさい」

それしか本当に言えないんだよな


何度も消えようと思った

あの人の前から、子供の、傷ついたままで

涙で目の淵が赤くなった

カッターが見つからない手を伸ばした先にあるのは万年筆

赤と黒が混ざって

曖昧な、私みたいな色になって


いつまで「私ごっこ」してるんだ

そうやって「私」を殺したっけ

「私」じゃなくてもあの人のところにいるけどさ

それもそろそろ難しいかな

幸福の意味を知った

不幸だったから

でもその中であの日々は

赤かったんだ

たった一平方ミリだけ

赤くて眩しくて綺麗な色で


何してるんだろうな

さっさと飛べよ、切れよ、吊れよ

でも出来ないのは、その赤が綺麗だった

それだけなんだよな

それだけで生きていける

思ってたんだよ


心が死んだって言葉は

まだ体が生きてるってこと

その逆もまた、しかり

せめて体だけでも

子供のまま

死んでしまおうよ


どうすれば良いんだろう

もう一度、遺書を書こうか

今度は「私」じゃなくて

体、そのものの。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 『遺書』と書いてあったんでビックリしましたよ! でもそうですね。自殺しようとするときに人って手紙の文字数のように大したものは遺せなかったりするんでしょうね。切ないです。 『少女』シリーズも…
[良い点] 危うい感性で書かれた切実な言葉が、心に刺さりました。
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