柊一真・四日目・01「神崎仁の能力」
昼休み、俺は神崎を捜していた。
神崎が能力者なのかどうかを確かめるためだ。
神崎は教室にはいなかったので、とりあえず屋上を見に来た。
屋上には姫宮が何やら怪しいことをしていた。
フェンスの近くにしゃがみこんで何かを探しているようだ。
「よう、姫宮。何か捜し物か? もしかして昨日買ってっやった宝くじでも落としたのか?」
俺は姫宮の背中に声を掛けた。
「うっさい! あっちいけ! 話かけるな!」
姫宮は機嫌が悪いのか、俺を邪険に扱う。
昨日の姫宮は素直で可愛らしかったのに、この姫宮は凶暴だ。
まるで別人のように。
「おお、怖い。はいはい分かりました。失礼しましたね」
俺は肩を竦めて、とっとと退散することにした。
屋上の出口に視線を向けると、ちょうど神崎が屋上にやってきたところだった。
「よう、神崎。ちょっと話があるから、一緒に飯でも食わないか?」
「良いですよ。柊さんが僕と話がしたいと言ってくると思ってましたから」
神崎はまるで俺の行動が分かっていたような口ぶりで、俺の誘いを承諾した。
俺と神崎は食堂に行って、適当なメニューを頼み、二人用の席に座った。
「昨日、街にいただろ? 彼女と歩いてるのみたぞ?」
俺はうどんを食べながら神崎に話かけた。
「これはこれは、お恥ずかしいところを見られてしまいましたね。その人は別に僕の彼女というわけではありません。たまたまその彼女が不良に絡まれてるのを助けたんです。そしたら好かれたしまったようで困ってるんですよ」
神崎もうどんをすする。
どうも神崎の言う言葉は嘘くさくてたまらない。
「おいおい、そんな漫画みたいなシチュエーションがあるのかよ」
不良に絡まれてる女性を助けたら、その女性に好かれる。
そんな都合の良いことがあってたまるか。
「大丈夫です。柊さんも僕と同じ体験をしますから」
神崎はにこやかスマイルで答えた。
何が大丈夫なのか俺にはさっぱり意味が分からない。
だが、漫画のような王道展開を体験できるなら面白そうだ。
というか、さっきから神崎は妙に意味深なことを口にしている。
やはり何かの能力を持っているから、そういうことを言っているのだろうか。
神崎と一緒に昼食を取っているのは、神崎が能力者なのか、そうじゃないのかを確かめるためだ。
本題に移ることにしよう。
「神崎、お前に訊きたいことがある」
「今から言う柊さんの質問に対しての答えは〝イエス〟です」
神崎は俺が質問をする前に答えを言っていた。
つまり神崎は俺がこれからどういう質問をするのか分かったのだ。
もしかしたら桜木さんと同じ心を読む能力なのかもしれない。
「お前も能力者なんだな?」俺は神崎の目を見据えて質問をした。
「先程も言いましたが、答は〝イエス〟です」
「心が読めるのか?」
「僕の能力は、未来予知です」
神崎は能力で未来を予め知ることができる。
だから俺がどんな質問をするのか先に分かったんだ。
桜木さんが読心、姫宮が透視、そして神崎は未来予知。
こんなにも俺の周りに超能力者がいるとは、もう笑うしかない状態だ。
「とりあえずお前の能力を見せて貰おうか。ただ言われただけで信じるほど、俺はお人好しじゃない。俺の目で能力を確認するまでは認めない」
「分かりました。それでは証明しましょう。今日、柊さんが家に帰ると部屋の中に一人の少年がいます。少年は酷く落ち込んでいるので、美味しい弁当でも食べさせてあげてください」
「……少年? それって泥棒じゃないのか?」
「泥棒ではありません。それに柊さんはその少年のことを一度見ています。見ただけで知り合いではないですけど」
「…………」
神崎の荒唐無稽な未来予知に言葉を失う。
俺の知り合いでもない奴が、なんで俺の部屋に勝手に上がり込んでいるんだ。
まあ、泥棒じゃないみたいだから良いけど、気味が悪い。
「なるほど。それがお前の未来予知か。つまり俺の部屋に俺の知り合いでもない奴が上がり込んでいるってことだな。もしお前の言った通りのことが起こったら、俺はお前の能力を信じることにする」
「ありがとうございます」
神崎はまるで、もう未来予知が当たったかのように頭を下げた。
神崎と別れ教室に戻ろうと廊下を歩いていたら、知らない女生徒に呼び止められた。
「あの、すみません」
「ん? 何か用?」
俺の前には髪をポニーテールにして凜とした雰囲気の女生徒が立っていた。
「さっき食堂で神崎仁と話をしてましたよね? 何の話をしていたんですか?」
女生徒が真剣な様子で訊いてくる。
いったいこの子は誰なんだろう?
神崎のことを知りたがってるみたいだから、神崎の追っかけか何かだろうか。
あいつイケメンだから、追っかけの一人や二人いてもおかしくないかもしれない。
俺には無縁の羨ましい話だ。
「普通の雑談だな。あとはあいつが昨日、彼女とデートしてたって話とかかな。神崎はイケメンだから、彼女はたくさんいるんだよな。羨ましいよまったく、ははは」
俺は何となくこの子と神崎が修羅場になったら面白いなあと思った。
神崎の余裕がムカつくので少しだけ悪戯心が沸いたのだ。
「デ、デートですか?」
女生徒が物凄い勢いで食いついてくる。
やはりこの子も神崎の事が好きなのだろう。
こんな可愛い子にも好かれているなんて、ホントに神崎の奴は羨ましい。
ここはデートの話を面白おかしく捏造してやろう。
「そう、神崎からのろけ話を延々聞かされて大変だったよ。彼女が積極的らしくてすごいらしい。最初は手を繋いで歩いて、次は腕を組んで歩いて、オンブして、だっこして、お姫様だっこして、最後はキスしながら歩いたって言ってた。バカップルっていう奴だな、あはは」
「…………」
女生徒は何も言わない。体がぷるぷると震えている。
どう見ても俺が適当な嘘をついたことに怒りを感じていた。
「ああ、ごめん。そんなに怒らないでよ」
「……別に怒ってません。ありがとうございました」
感情を押し殺した声で礼を言うと、女生徒は足早に去って行った。
去り際の目の鋭さは、まるで暗殺者のように冷たいナイフのようだった。
彼女の殺気で腕に鳥肌が立っていた。
俺は女生徒の殺気に能力名を付ける。
その名は鳥肌創造。
やはりこの学校には能力者がうじゃうじゃいるようだ。




