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☆ ふたりの物語
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愛する人についてぼくが語る言葉と愛する人についてあなたが語る言葉を白いサラダボウルに集めよう。集めた言葉を目の細かな記憶の布で絞れば星のように発光して青く滴るはずだから。
その青い雫を万年筆に吸い上げてふたりで物語を書こう。青い雫から生まれたインクで白いノートに綴れば青い文字は誰も知らないはずの記憶に触れて流星のようにきらめくはずだから。
煌めくのは一瞬。けれどぼくたちはふたりの物語を書き続けるだろう。本当のぼくたちはどこにいるのだろうと思案しながら――
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