3 キャミとかワンピで、チラ見えするあれですよ。|д゜)
ひとまず近くの町に行き、国王からのもらい物を買取査定に出してみる。
一通りの作業が終わり、冒険の準備が整うと、サラが行動の理由をたずねてきた。
「ねぇ、どうしてあんなに面倒くさい事をしたのよ?」
「所持品の価値は知りたいだろ? 他の町で査定に出すと、そこから居場所を割られる可能性が有るからな」
答えるとサラがうなずく。
「成程ね。確かにあなたからしたら、お父様が信用できる人か分からないわ」
「悪かったな。別にサラのお父さんが信用できないんじゃなくて――」
「無能が信用できないんでしょ? 分かってるから大丈夫よ。お父様が悪徳商人みたいな男に、S級武器を渡した時には、私も目を疑ったもの」
サラに悪徳商人と言われて軽くへこむ。投資銀行員やトレーダーは悪徳なのだろうか? うん、悪徳だな。汚い大人の代表である。
「とにかくだ。金には余裕が有るんだから、最高の装備を買っておけよ」
サラが俺をにらんでくる。
「何か文句あるの?」
「いや、流石にそれは問題だろ」
サラはハイヒールを履き、シンプルな黒のワンピースを着用している。首には蝶があしらわれた藍色のスカーフを巻いている。
スーツの代わりにワンピースを着てお洒落した、金髪碧眼jkスチュワーデスという表現が適切……ヤバいな。
「可愛いと思うけど、流石に守りが薄すぎるだろ。あんまり心配させるなよ」
言うと、サラが俺の腕をつねってくる。
「あなたに心配されるほど、弱くないですから」
「あのな、強いのと怪我しないのは別なんだよ。もうちょっとマシなの選ぼうな。あと、強さ関係なく年下の女の子心配するのは当たり前だから、お分かり?」
一気に言うと、サラはわずかに俯き、小さくつぶやく。
「……だったら好きにしなさいよ」
その後、町で一番高級な服屋に連れて行き、サラに似合う服をいくつか見繕った。その後、古着屋に行って俺の服を適当に選ぶ。
ほくほく顔で帰ろうとすると、サラに袖をつかまれる。
「どうした? やっぱりさっきのヤツも欲しくなったか? あれもよく似合ってなよな」
するとサラは、腰を折って前屈みになり、俺の鼻に人差し指を当ててくる。
「買った服は、全部戦闘に関係なかったじゃない。……か、可愛い可愛い言うだけで、本っ当にバカじゃないの」
「だって、お前何着ても似合うじゃん。選んでて楽しいんだもん」
「楽しいんだもん、じゃないわよ。まともな事言ったと思って着いていった私がバカだったわ」
「そうだな」
「ほら、早く行くわよ」
「ちょっと待って、もう一回、俺の鼻に指当ててくれない?」
サラがきょとんとした顔をする。
「鼻に指? そんな事より――」
「いいからっ!」
俺の言葉に押されて、サラが俺の鼻にちょこんと指を当てる。だが、そうではない。分かっていない。いや、分かられても困るんだけどね……。
「さっきは前屈みだっただろ? もっと前かがみになって」
サラが前かがみになる。……素直でかわいい。
「こ、こうかしら?」
「そうそう、もっと前かがみで」
サラが着ているのはワンピースである。先程、サラが前かがみになったとき、見えかけたのだ。
おっぱいの小さい子がキャミソールを着て、前屈みするときに見える現象である。ラッキースケベは座して待ってもやってこない。積極的に狙っていかなければ。
『守りが薄い』はダブルミーニングだったわけだ。
「こうかしら? いきなりどうしたの?」
「いや、何か分かりそうなんだよ」
色とか、形とかね。
「――――ッ」
ワンピースの黒い布の下から、上気した白磁の肌が見え隠れして、堪らない昂りを覚える。
――もう少し、もう少し……。
しかし、彼女の緩やかな膨らみの頂点が露わになろうとした時、藍色のスカーフが邪魔をした。
「……スカーフの馬鹿野郎」
「いきなり何よ」
「サラ、そのスカーフは似合わないから外そう」
瞬間、サラが傷付いた顔をする。
「そ、そうよね。私みたいな子が、こんな可愛いちょうちょのスカーフなんて……」
「……ごめん」
白状して、大人しく殴られた。
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殴られてから30分程経ち、現在俺達は武器屋に居る。俺を殴った後、サラは俺の手を引いて武器屋の扉を叩いたのだ。
「本っ当に有り得ない。前かがみさせてエッチな事考えてたとか、最悪なんですけど」
「……ごめんなさい」
「まぁ、白状したから今回は許してあげたけど……余罪が有るなら今の内に言ってよね」
「ごめん、わざと短いスカート履かせたり、体のラインを楽しむために、ぴちぴちの服を着てもらいました……すみません」
いや、しょうがないよね。ちょっとドキドキしながら、大胆な服指してこれ良くね? みたいな事は言うよね?
サラは俺の懺悔を聴きながらため息を吐く。
「……本当にバカ。まぁ怜司も男性だし、しょうがないから許してあげる。一緒に武器を選ぶわよ」
この話はもうお終い、と言ってサラは武器や防具を選び始める。ブロンズの髪から覗く耳はわずかに紅く染まっていた。
サラが大人の対応をしたので、33歳として自分が恥ずかしくなる。
穴があったら入りたい。…………これはダブルミーニングじゃないぞ。