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ビルロボ  作者: ゲスメガネ
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ビルロボット

 20xx年○月×日

 今日から日記を書くことにしました。

 日記を書くのは初めてですが、未来でこの日記読む貴方にとってお役に立てれば幸いです。

 これも数少ない当時の記録の一つになるでしょう。永遠に読まれないかもかもしれませんが…


 …途中で日記を書く手が止まる。


 耳鳴りのように聞こえてくる悲鳴。


「またか…」

 ため息をつきながらボソッとつぶやく。


 俺の住んでた家は既に無く、家族も死んだ。保証されている筈の最低限の文化的生活すらも行えない。

 今日も公園で野宿だ。


 まだ三日しか経ってないがもう慣れた。

 パタンと日記を閉じ悲鳴が鳴る方へ目を向ける。


 ヤツだ。

 家を壊し、家族も殺し、何百人もの命や財産を奪ったヤツだ。

 今日もまだ満足してないらしい。

 破壊と殺戮を繰り返し休憩しては繰り返す。


 ただ、一つ不可解なのはヤツがビルで有ること。




 …………ヤツが動き出したのは三日前の事だった。

 その日は日曜日で町は賑わい気持ちのいいそよ風が吹く。俺は友達のユウと適当に暇潰ししてた。

 マックで早めの昼食を食べ店から出た瞬間だった。ヤツが初めて動いたのは。

 ヤツはビルだった。特別大きかったり小さかったりもしてない普通のビルだった。

 

 地響きが鳴った、最初は地震かと思ったが何かが違う。

 マックとビルは国道を挟んで向かい合わせになってる。そのビルだけが揺れていた。


 そしてまさにトランスフォーマーのようにそのビルは人型に変形した。

 別にガンダムのように格好良くも無い。長方体に関節の無い手足のような物をくっつけ、おまけにちょこっと立方体の頭を胴体に乗っけたような形になった。


 ユウと俺は声も出ない。

 それどころか幼稚園児が妄想したような光景を目の当たりにして足がすくむ。

 おかまいなしにビルで出来たロボットは俺達に向かって直進する。

 道路を横切り、走っていた車を潰し、俺達をまたぐと直ぐ後ろのマックを壊しながら進んで行った。


 明らかにおかしい。

 またがられる時見えたが、ロボットの手足は胴体から数十センチ離れていて胴体と手足を結ぶ物はパイプ一本すら無い。

 何も支えの無いロボットの胴体は空中で浮く。

 ありえない。


 俺達に限らず周りの通行人は呆然と立ち尽くすだけだった。


 …辺りに響き渡る静寂を壊したのはユウだった。

「カメラ! 皆さんカメラでアレ撮ってください!! 証拠撮らないと!」

 ユウの呼びかけで周りはざわめき、皆スマホを手にし写真や動画を撮る。


 だけども中には唖然と立ち尽くす人たちもいた。

 ロボットの進行方向には住宅街が有り、目の前の更地となったマックと同様の光景が広がる。

 そこには俺の家が有った筈だった。


 いても立ってもいられなくなり。俺はユウを置いて自分の家へと走る。

 歩いて15分程度、直線にしたら1キロも満たない距離を全力で走る。

 建物が邪魔でロボットはチラッとしか見えない。

 頭の中でこだまする緊急車両のサイレン。

 着いたときにはもう、遅かった。


 ピンポイントで俺の家は壊されそして火事になっていた。

 燃えさかる家に消防車。消防士達は必死に周りの建物に燃え移らないように水を掛ける。

 もうだめだった。


 そこからの記憶は曖昧で、確か消防士に家族が居るかもしれないと伝え、帰る場所が無くなり、泣きながら壊されたマックに戻った。

 ユウはそこで警察の事情聴取を受けており、戻ってきた俺を慰めてくれた。

 行く当ての無い俺は児童相談所で一時保護されるはずだったが、その児童相談所がロボットの進路上にあって壊れていて、結局はホームレスになった。

 

 後からユウに聞いた話だがそのロボットはこの辺りを一周し、元々ビルの有った場所でただのビルに戻った。そして中に居た人達はロボットに変形したことに気づかなかったらしい。

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