飛び降り、目覚め、友達
目が覚めたとき、俺がいたのはベットの上だった。
なぜ、助かってしまったのだろうか。
両親も、兄弟たちも、クラスメイト達も、教師たちも、みんな泣いていた。
よかった、助かってよかった。
そういいながら。
俺は2か月も眠っていたらしい。
みんな、俺を心配していたらしい。
薄情な奴らだ。
今まで話したことがない奴が、俺を勝手にライバル視してきた奴が、俺を無視していた奴が、みんな声をそろえて俺の無事を祈っていたなんて。
笑えるだろう?
俺はなぜあんなことをしたのか聞かれた。
でも、答えなかった。
答えられなかった。
だって、声が出なかったから。
担当医が言うには、一時的なショック症状らしい。
そのうち治るんだとさ。
両親は後悔していたらしい。
兄弟たちも…
別にどうでもよかった。
なぜ、今になって気が付くのだろう。
だって、俺はもう感情が凍っていた。
喜怒哀楽が、分からなかった。
嬉しいってなんだろう。
怒るってなんだろう。
悲しいってなんだろう。
楽しいってなんだろう。
心配って、なんだろう。
後悔って、なんだろう。
分からない。
そんなもの、俺は見たことも聞いたこともないからだ。
俺の肉体が回復しても、精神的なものはなくならない。
退院した後もそうだった。
俺は1人で部屋に閉じこもった。
みんな、何も言えない。
後悔しているから。
でも、俺は違う。
1人で稼いでいた。
ネットで、勉強しながら稼いでいた。
そんな生活を続けて、2年が経った。
ネットで知り合った人とオフで会うことになった。
相変わらず声は出ないけれど、その人は俺の事情を知っている人だ。