掴みのようでそうでないような話
始まりの街。ギルド窓口にて
『すいません、この条件でメンバー募集お願いします。』
そういって俺は受付のお姉さんに紙を渡した。
『本当に良いんですか?こんな条件だと中には反感を持つ人も出てくる可能性だって…』
『良いんです。よろしくお願いします。』
『は、はぁ。わかりました。』
受付のお姉さんはかなり困惑してたようだがまあいい。
確かにこんな条件だとメンバー募集は少しだけ時間が掛かる事だろう。
それまで、手紙でも書いて暇を潰すか。
手紙を書く相手、そいつは俺の愚痴や不満なんかに対しても優しく受け止めてくれるかけがえの無い存在だ。
『よし。始めるか!』大きく伸びをして気合いを入れる。
バックから取り出した黒ペンにインクをつけ、一文字一文字を丁寧に書いていく。ペン先はまるで喜んでいるように滑らかに進み、紙は嬉しそうにかりかりと心地好い音を鳴らしながら。
▽30分後▽
『出来た。間違いが無いか確認でもしておくか。』
我が友人 ルーサ=フィースへ
日増しに暑くなってきたこの季節、毎日寝苦しい夜が続いてるがそっちの方は色々と大丈夫か?忙しいか?
とりあえず伝えたいことがあってなこの手紙を書いた。
俺はあるものに対して苦手意識があるのはお前も知っているな?
俺だってそんな過去のトラウマとも別れたいがまだ出来そうに無い。
でもそんなことで躓いていては駄目だと思いもう一度冒険を始めようと思う。
冒険に出て気分転換すればそんなトラウマもふっ飛ぶかもしれないと思ったから。
今回こそは他の冒険者のように楽しんでやる。もう一つの理由としては貯めておいた金もそろそろ無くなりそうだったから。でもそんな心配は要らない。なんたってこの国にいる6だか7居る内の一人でも魔王を倒せばお金がたんまり入るからな。
冒険する前にお前に度々迷惑をかけたことに対しても謝りたいし、こんな俺を救ってくれたことに関してもありがとうと言いたい。
とりあえず始めにお前の所に会いに行くから待ってろよ。それでは。
始まりの街から アルフレッド=シエルより
『ふああ・・・』
さっきまですらすら手が動いていたのが嘘のように眠気が押し寄せて来た。
メンバーが来るのもまだ先だと思うし手紙も完成したから今日は寝るか。
次の日、ある事件が起こる。