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092 戦いに備えて

 ◇


 急げ、急げ。俺たちには時間がない。パオースとサーナバラの防衛力を向上させないと。


 俺は、パオースの市議会と相談しパオースの町の西門を高くした。そして、町の中の空き地に大量の土砂を集めた。そして、毎日泥んこになりながら罠を造っていった。


 サーナバラ領軍は、西街道から南街道へと別れる分岐点から南街道そのものを隠す作業だ。もともと南街道は獣道程度まで荒れ果てていたが、念には念を入れ偽装というより道自体を無くす作業となった。そして、その作業が終わるとカエル取りだ。捕まえたカエルは、サーナバラ温泉ランドに造った簡易沼に飼うのだ。いざというときの食糧のために。


 ナビとラズリは魔石探し。近くの魔石は堀尽くしたのか、遠くまで泊まりがけで遠征している。二人だけでは危ないのでソルが護衛だ。そのソルだが、出来たばかりの二本の大刀を左腰に差し、俺の琴線を刺激してくれている。


 メイド姿に日本刀、痺れるぜ、ソル。


 残った小刀二本は、バレンナとラズリが一本つづ持つことになった。なぜなら、俺じゃない俺が造った刀同士は、魔力を通すと刀を通じて会話できる事がわかったからだ。バレンナとラズリに持ってもらったのは、俺と他の誰かが持つよりも角が立たないという俺の日本人気質が理由だ。俺とナビが持つ線もあるが刀が無くても会話できるしね。暇ができたら俺も刀を作ってみよう。


 ホスバは、大工の棟梁たちにサーナバラ温泉ランドに倉庫兼避難場所の建設を依頼し指揮している。そして、板ガラスを沿海州に売った金で近郊の農村から食糧を買い集めて、出来上がっている倉庫に積み上げていく。


 領主館をガラス張りにするのは、少し先になりそうだ。まずは、戦費の確保が先になる。


 バレンナは、いざという時のためにサーナバラ村の避難計画を作り、村の自治会といっしょに避難練習をして、避難計画の不備を直したりしている。また、村人に賃金を支払いサーナバラ温泉ランドの遊休地に畑を作っていく。


 みんな、戦いに備えて大忙しの毎日を送った。


 戦いは恐いし悲しい。準備で終わってくれれば、それに越したことはない。だが、ヨーマインからの知らせでは、南地方の貴族が軍を率いて東征を開始し、ヨーマインに敵対していた貴族たちが次々と飲み込まれ、大きな勢力になっているということだった。


 戦乱が近づいて来ていた。


 ◇


「サブロー兄さん、やっと見つけたよ、探したよ」


 俺が、サーナバラタワーの上で工作をしているとバレンナもタワーに昇って来たようだ。


「ごめんな、バレンナ。俺を探してくれってホスバに頼まれたのか?」

「うん、そうなんだけどね」


「ホスバの話はたぶん金の話だと思う。また、板ガラス造んないと。やっぱり戦ってお金かかるんだよな。もっと別なことにお金を使いたいよ」


「でも、大工の棟梁たちも、近隣の農家さんたちも、村のみんなも喜んでいるよ。お金がもらえて暮らしが楽になるって。サブロー兄さんが、お金を使ってくれるお蔭だって、みんな言っているよ」


「みんなが喜んでくれるなら、まあ良いか。なかなか、領主家が贅沢三昧とはいかないなあ」

「そうだね、アハハハ、ハァ」


 バレンナも、仕方ないよねという顔で笑ってため息をついた。


「ところでサブロー兄さんは、こんな所で何やっているの。ん、それはガラス玉かな?」

「そうだよ、これはガラス玉なんだけど。ちょっとガラス玉の種類が違っていて、レンズって言うものなんだよ」

「レンズ……それで何をするの」


「こっちのレンズをこの筒に、こう填めてっと。落ちないのように、ここに止めをいれてっと……完成かな」

「サブロー兄さん、その筒って大工の棟梁が作っていたもの?」

「そうだよ、俺が、注文していたんだ」


「そうか、何かの部品の一部だったんだね。大工の棟梁も何に使うんだろうって、頭を捻っていたけど、わからないはずだよ」


 俺は、筒を伸ばしたり縮めたりして可動を確認する。そして、覗き込む。


「ばっちりだ。これで望遠鏡の完成だ」

「望遠鏡?」


「バレンナ、これを持って、ここを覗いてごらん」

 俺は、バレンナに望遠鏡を渡して、持ち方と見方を教える。


 凹凸レンズを造るのは、俺には簡単だった。ガラス玉を造って土魔法で削るだけ。魔法で削るので磨いたように滑らかになる。


「すごーい。なにこれっ、遠くが大きく見えるよ。すごい、すごい」

 バレンナが興奮しながら、あちらこちらを望遠鏡で見ている。


「そうなんだ、バレンナ。それは遠くを大きく見る道具なんだよ。近くなったわけじゃないからね」


「サブロー兄さん、ひどーい。私だって近くなったわけじゃないくらいわかるよう」

 バレンナが、頬を膨らませて怒る。


「ごめん、ごめん」

「これを使って、このタワーの上から敵を監視するんだね。そして、刀を使えば……サブロー兄さん、サブロー兄さんが考えていることってそういうこと」

「正解。バレンナが思った通りだよ。ここから監視して状況を伝えるんだよ。ここにいれば魔法の攻撃も届かないだろうから」


「すごい考えだよ、サブロー兄さんは、やっぱりすごいよ」


 バレンナが、キラキラとした目で俺を見る。俺は、照れて頭を掻いた。


「じゃあ、みんなの所に戻ろうか。板ガラス造らなきゃな」

「うん」


 ◇


 バレンナとサーナバラ領軍といっしょに板ガラスを造っていったら、ナビとラズリとソルが情報と共にサーナバラに帰って来た。


 敵がやって来たと。





戦の準備は出来ました。そして、敵がやってきました。


次回、我輩は天才である


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刀の数え方は「本」に改訂します。順次改訂する予定です。


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