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082 驚くことが5つ

 ◇


 サーナバラに帰ってくると、驚くことが5つあった。


 1つ目は、村の住人が増えていたことだ。


 ホスバの報告では、大工の棟梁がこの村は面白いとパオースの町から移り住んだのが契機となり、続々と町から移住してきていた。また、近隣の農家の次男三男たちや若い女性たちが移住するケースも多いらしい。


 領主の断わりなく宅地を勝手に割り当てできないと考えたホスバは、取り敢えず官舎用の敷地に簡易の長屋を作って対応していた。俺が、移住者たちに土地の用意と割り当てをしないといけないらしい。移住者たちへの仕事は、ホスバが手当てしていてくれたので。


 2つ目は、女性の服装の変化だ。


 ナビが、サーナバラにファッション革命を起こすんだと意気込んで、はや3ヶ月以上たった。南端の村出身者が多いので農作業に便利なズボン型の服装だったのを、カラフルなスカート型にしようと努力していたのだ。ところが生活習慣とは恐ろしいもので、なかなか変われない。


 農作業は、ズボン型の方がなにかと有利なのだ。特にコメカリの栽培には。ナビが諦めかけていたところだった。しかし、ベリーグからサーナバラに戻ってくると、小さな女の子たちがカラフルなスカート型になっていた。大人たちにも少なからずスカート型を見かける。ナビのファッション革命への炎が再び燃え上がった。


 スカート型が増えた理由を調べたら、ソルのメイド姿が格好良かったらしい。スカート姿のソルが、オドンを始めとする屈強な男たちを苦もなくのしている姿が。


 3つ目は、コメカリの収穫が終わっていて、次の田植えの準備が始まっていた事だ。


 田植えから収穫までは約4ヶ月かかった。次の実験も前回同様に4つのパターンで育成して収穫量や手間の具合をみる。後2度ほど実験した結果を見て、最終的な育成方法を決定する予定だ。また、農作業器具の作成と改良は今後の課題となっている。


 コメカリ農業については、俺も農業の経験がないので、知っている知識を領民に伝えて任せっきりだ。田んぼを拡げるときは俺がやるんだけどね。これで、米がたくさん食べられる。料理の幅が広がりそうで楽しみだ。トアちゃんにいろいろ作ってもらおう。最初は塩むすびが食べたいな。


 収穫したコメカリについては、領民の食糧消費計算をして残った余剰分は、半分備蓄、半分販売とした。備蓄はバレンナ担当、販売はラズリ担当で考えてもらう。少しづつ彼女たちの仕事を作っていこう、次代の領主と商会主なのだから。決して俺やホスバが大変だからじゃないよ。


 4つ目は、領主館の下働きと、商会の丁稚見習いが増えていた事だ。


 さすがに、ホスバひとりでは仕事を回せずに人手を増やした。孤児たちの中で、やりたいと手を挙げた者たちを割り振り試用期間で使っている。シスターは、孤児たちの行く道が開けていくことに、とても感謝していたらしい。


 シスター、感謝などいらないよ、その約束でサーナバラの村に来てもらったのだから。でも、子供たちには自分のできる範囲で努力はしてもらう。さらに、自分の未来を広げてもらうために。


 最後の驚きは。


 ◇


「なぜ、あなた方がここに?」


 俺は、サーナバラの領主館に滞在していた客人に聞く。領主館は所々が造りかけではあるが、機能は問題ない。俺たち領主一族が不在なため、ホスバが相手を貴人として待遇していた。ソルの知る相手でもあり身分に問題はない。


「出入りの商人から話を聞いてな。東のサーナバラという村には、温泉と言うものがあり、大層怪我の治りや病気の鎮静に効果があるとな。それで訪れた訳だ」

「あなた、それに塩やコメカリといった食糧もサーナバラの商会で取り扱っていますのよ」

「そうだった、そうだった。出来ればそれも取引したい。どうだろうかサブロー殿、取引願えないだろうか。サーナバラとヨーマインの友好のために」


「はあ」

 俺は、煮え切らない返事をヨーマイン太守夫妻に返した。

 なんで、この人たちがサーナバラに居るんだ。ヨーマインを離れて良いのか?


「あの、聞いていいですか?」

「ああ、何でも聞いてくれサブロー殿」

「ヨーマインに居なくて良いのですか? また、敵の侵攻があるのでは」


「その事は大丈夫だ、周り敵対領主たちの力はことごとく衰退している。戦う金どころか日々の金に困っていることだろうよ。うちの優秀な嫁さんのお陰だ。愛しているよ、サクレ」

「こんなところで、恥ずかしい。私も愛していますわ、モシャバ様」

「おお、サクレ」

「ああ、モシャバ様」


 もう好きにしてくれ。


 モシャバの話では、ヨーマインの守りを騎士のナルベルトに任せ、傷をおった騎士兵士を連れて温泉治療に来たらしい。館の戦いの勝利のお陰でお金には困っていないので、長期の滞在を考えているらしい。


「ところで、サブロー殿。この村と後ろの砦は一体何なのだ。ここに、このような物があるなどとは、聞いたことがない」

「そうですわね、城壁の無い村と、見たことも無い規模の城塞、あまりにも異様です。このような物がこの地にあるなどとは、私も聞いたことがありません」

「それに、あの塔だ。この地の者はタワーと呼んでいたが、あの眺めは何なのだ。この地を攻めてくる軍が丸見えではないか」


「教えて下さいませ、サブロー殿、さあ、さあ」

「どうなのだ、サブロー殿、さあ、さあ」


 夫婦揃っての息の合った突撃に会い、たじたじだよ。仲の良い夫婦で羨ましいよ。うちの妹たちは、この夫婦を見たとたん用事を作って逃げ出したよ、面度くさそう、よろしくねお兄ちゃんってさ。


 この夫婦が、こんなに質問してきているには訳がある。俺たちがベリーグの町に行っていた間に、やって来た夫妻は、いろいろ体験して疑問がわいた。それを接待に当たったホスバに聞いても、質問に答えるには領主の許可が必要だと言って、答えていなかったらしい。


 仕方無いから、俺が相手しないとな。


「サーナバラの村は開発途中だから城壁が無いんです。そのうち作りますよ、それまでは領軍で警備しています。それから、サーナバラ温泉ランドで城塞じゃないですよ。もともと小山があったを切り崩したんですよ」


 うん、ちょっとウソが入ったけど、ほぼ本当の話だ。


「いやいや、サブロー殿、村の話しはともかく、城塞の話しは誰も信じないぞ。誰が見ても立派な城塞だ」

「まあ、何かあったらサーナバラとパオースの住人の逃げ場所になりますけどね。今は逃げ込んでも食糧備蓄も無いのでダメですけどね。今後倉庫とか作りますよ」


「ああ、そうした方が良い。それが領民を支配する領主の義務というものだ」

「ヨーマインさん、王国の内戦はこの地にも波及しそうですか?」


「わからん、可能性は少ないだろう。諸侯の目は、王都に向いている。王都を押さえたものが次代の王となるだろうから」


 王国の内戦は、出来れば王国の内で終わってほしいもんだ。俺は戦いには向いていないからな。剣の模擬戦ではバレンナに連敗中だ。


 ヨーマイン夫妻と、サーナバラ村や温泉そして王国内戦の動向の話をしていると、領軍の一人が領主館に駆け込んできた。


「サブロー様、執務中申し訳ありません。バレンナ様から火急の伝言です」

「問題ないよ、バレンナの伝言って」


「ハッ、南の牧草地に魔獣が現れました。現在、バレンナ様、ソル殿、領軍で交戦中です」

「へっ」


「サブロー殿、呆けている場合じゃないぞ。領軍を率いて駆けつけないと」

「は、はい。ヨーマインさん、申し訳ないですが、これで失礼します。ゆっくり温泉を楽しんでください」


「いいから、急ぎなさい。怪我がなければ我々も手伝うのだが、申し訳ない」

「ありがとうございます、お気持ちだけで。では、行くぞっ!」

「ハッ」


 俺は、領軍のひとりを引き連れ、領主館を出て牧草地に向かって走り出した。領軍はこれで全員なんだよなと思いながら。




082 SS 6つ目の驚き


ラ「ん、魔素が濃い、あの女」

ナ「そうだね。また来たようだね、あの女が」

バ「えっ、あの女の人が来たの」


サ「君たちね、あの女、あの女って言うけど合ったことないよね」


次回、仇を討ちたいの


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今年中は、この小説を読んで頂きありがとうございました。

皆さんの評価やブックマーク登録が励みになり、ここまで続けられることが出来ました。

来年も、引き続きご愛読のほどよろしくお願いします。  板越サブ


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明日の分はこれから予約投稿(初)します。

元旦の日の出時刻(東京)ごろに設定します。

よろしくお願いします。


(これから設定しますが失敗したらごめんなさい)



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