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081 待たせて悪かった

 ◇


 俺は、祭壇の上に戻って来た。立ち上がり祭壇から降りる。


「お帰り、サブロー、どうだった?」

「ありがとう、ナビ。父さんには会えなかったけど、母さんと兄貴には、こっちの世界で生きることを伝えられたよ」


「そう、よかったね、サブロー」

「ああ、俺は満足だ。よーし、バレンナとラズリたちの所に戻ってサーナバラに帰ろうぜ、ナビ」

「うん」


「ところで、ナビ。何でナビは、俺といっしょに旅して、今もいっしょにいてくれるんだ?」

「はあ、それをサブローが私に聞く。サブローちょっとここに正座しなさい。それともこれとどっちがいい?」


 ナビは拳を握り締め、俺の目の前には突き出す。俺は、すぐさま正座した。


「私は、サブローの何?」


 いや、何って言われても……


「い、いもうと?」

「なんで、疑問系なのよ。私はサブローの妹でしょう。兄は砂漠に妹を放置して旅をするの? しないでしょ。そういうことよ、わかった。」


 はい、わかりました。


「申し訳ない」

「わかれば良いのよ、わかれば」


 そうだったな、ナビ。俺たちは兄妹なんだ。いつかは一人になるかも知れないが、今、いっしょにいる理由は単純だ。家族なんだから。


「ナビ、ごめん、ごめん。全然関係ない事だけど口元に何か白っぽい粉が付いてるぞ。待っている間に何か食べたのか」

「そ、そうよ、ちょっと小腹がすいてね」

と、口元を拭うナビ。


 待たせて悪かった、さあ、戻ろう。バレンナたちも待たせているに違いない。


 ◇


「ドラちゃん、ちゃんと3人を守ってくれたんだね。ありがとう」

「いえいえ、ナビ様。わしの役目ですので」


 ナビが、ドラゴンの鼻面をバゴバコと殴る。ドラゴンも喜んでいるようだ。あれだけの勢いで殴らないとドラゴンにも伝わらない、たぶん、あれがドラゴンを撫でるということなのだ。ドラゴンを撫でようと思うのはナビぐらいと思うが。


 俺は、ドラゴンの横で目が死んでいる3人の背を押しながら、ここを離れようとする。

「じゃあ、俺たちは、ここで」

「待たんか、小僧たち」


 バレンナ、ラズリ、フィナがビクッと直立不動になる。


「お前たち、くれぐれもナビ様の事、敬うように。不敬な事をしてはいかんぞ。もし、その時はわしが……わかるな?」


 俺たちの目の前で、ドラゴンは大きな7つの目で睨み、口を大きく開けてガギッ、バクッと歯をならして閉じた。


「ドラちゃん、ドラちゃん、ダメだよ、みんなを脅しちゃ。それは悪いドラゴンのやり方だよ」

「おお、そうですか。それはすまんです」

「「「……」」」

 このドラゴン、手が届いたらきっと頭をポリポリと掻いたに違いない。


「じゃあね、ドラちゃん。お世話になったね、ありがとう」

「えっ、ナビ様、もうお帰りに……では、わしもお供いたしましょう」


 げっ、本当か。


 ギロッ


 ふーふーふー

「ん、サブロー兄、吹けてない、でも、認める」

 ラズリが頑張って突っ込んでくれるが甘い。恐いドラゴンがいるせいか、突っ込みがいまいちだ。


「ダメだよ。ドラちゃんはここに居て、また魔素を増やさないと。今回ので使い切っちゃったからね」

「ダメですか……魔素が増えれば……わかりました。出直します、ナビ様」


 出直おす? なんのこっちゃ。


「うん。じゃあね、ドラちゃん。サブロー、みんな、サーナバラに帰ろうか」


 ナビはドラゴンに手を振ると、街道への道を登り始めた。俺たちも急いで後を追いかけた。ドラゴンの視線を感じながら、絶対振り向いちゃダメだと自分に言い聞かせて。


 ◇


 俺は、バレンナ、ラズリ、フィナと抱き合った。何もなくて良かったよ、ドラゴンはやっぱり恐かったとみんなで慰めあったのだ。あの大きさが恐かったのだ。


 今日は疲れたよと俺が言うと、みんなも頷いてくれる、ナビ以外だけど。今日は、このままここで野宿と決めた。ナビは動き足りないと言って馬と仲良く、遠駆けに行ってしまったけど。


「俺とナビが、滝に入って長い間待たせてごめんね」

「あんまり待っていないよ。サブロー兄さんとナビ姉が、滝の暗闇に入ってから半刻ぐらいかな」

「ん、半刻ぐらい、待った」


 俺の体感だと半日ぐらい時間が経過した感じだが、ドラゴンの結界のせいで時間の流れが違うのだろうか。

「そうなんだ、俺たちが滝に入ってからかなりの時間が経ったと思ったんだけどなあ。でもあまり待たせなくて良かったよ。ドラゴンは大丈夫だったのか?」


「ん、ドラゴンに怒られた。じっとしてろって」

「うん、じっと待つのも辛かったよね、ラズリ。ちょっとでも動くとドラゴンが口を開けて睨むから、守られているのか、食われようとしてるのか、わからなかったよね。フィナちゃんは?」

「はい、恐かったんだと思います。気がついたら、ここに戻っていたので」


 フィナはドラゴンに守られている記憶がないと言う。恐怖のあまり記憶が飛んだらしい。フィナ、頑張ったなと頭を撫でた。


「バレンナ、ラズリ、魔法の練習どころじゃなくなって残念だったな」

「私はそうでもないよ、ドラゴンが現れる前から魔力が切れそうだったから、ラズリは残念だったね」

「ん、残念じゃない。サブロー兄が滝の暗闇に入って、魔素が薄くなった、どんどん薄くなって、サブロー兄が出て来たとき、魔素が無く魔法使えない、だから残念じゃない」


 俺が滝の暗闇に入っている間は、魔素がずっと消費されていたらしい。そう言えば、ナビがドラゴンに魔素を増やせみたいなことを言っていた。俺が、こちらの世界に戻されたのも魔素が切れたからかもしれない。逆に言うと、魔素があれば俺の世界に戻れるってことだ。ナビも条件が揃っていないから戻れないと言っていたし、条件さえ揃えばいつでも行ったり来たり出来るのかもしれない。


 早めに夕飯を食べ、そのまま就寝した。フィナが焼き蒸し芋を食べながら、船を漕いでいたのが可愛かった。


 大変だったなフィナ、ゆっくりとお休み。


 翌日、遅い朝飯を取りサーナバラに向けて出発した。タフなナビが御者を勤めた。




サブローが異世界に戻り、3人娘がドラゴンの守りから無事解放。ご苦労様でした。


次回、驚くことが5つ

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