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077 もしや、あなた様は

 ◇


(もしや、あなた様は……)


 ドラゴンの重厚な声が頭の中に響く。するとキャーと言いながら、ナビが両腕を大きく振り回しながらドラゴンへと突進した。


 ナビ、ご乱心?


 ナビは何かを(わめ)きながらドラゴンへと突進するが、滝の水が落ちる音にかき消され、ナビがなんと言っているのかは、俺たちが居る場所には聞こえない。ドスドスと前に進む翼の無いドラゴン、両腕を振り回しながら突進するナビ。それを見ているしかない、俺、バレンナ、ラズリとフィナ。


 やがて、ドラゴンとナビは会合した。


 ドラゴンは立ち止まり、ナビの頭の高さまで首を下げナビの話を聞いている。ナビは身振り手振りで何かを伝えている。ナビの動作が終わると、ドラゴンの首が一回だけ縦に振られた。すると、ナビはドラゴンの鼻面をバシバシと叩き、ビシッと腕を伸ばすとドラゴンに向かって親指を立てた。


「「……」」

 何でもありだな、ナビ。


 ナビが俺たちに向かって、おいで、おいでと手をヒラヒラさせて呼んでいる。


「どうする、行くか。大丈夫みたいだぞ」

「ん、サブローが行くなら」

「うん、私も」

「私もサブロー様が行くなら付いて行きます」


 フィナが、ぎゅっと俺の手を握る。フィナは健気にも俺に付いてくると言ったが、やはり巨大なドラゴンに近づくのは恐いようだ。


「バレンナ、ラズリ、フィナはここで待っていてくれるかな。ちょっとナビと話してくるよ」


「サブロー兄さん、私もいっしよに行くよ」

「バレンナ、ありがとう。ナビの事だから大丈夫だと思うんだけど、まずは、俺だけで行ってくるよ。大丈夫って確認したら3人を呼ぶからね」

「う、うん」


 3人には落ち着いて待っているようにお願いして、ナビとドラゴンのもとに歩いて行く。だんだん近づくにつれてドラゴンの様子が良く分かる。ドラゴンは、頭から尾の先までが20mぐらいあり、翼はなく薄い青色の体をしている。近くに寄ると、その色は身体中を覆っている鱗の色とわかる。俺の頭より大きい鱗が一枚一枚重なっているのだ。


 異世界物だったら、この鱗を使って鎧とか作るんだよなと思っていると、ドラゴンと目が合った。拳ぐらいの瞳孔が7つ、俺をジロリと見る。


「ひっ」

 こええぇ!


 一口で俺を丸のみ出来そうな口が、俺を待っているようで怖い。ナビの奴、良くバシバシとドラゴンの鼻面を叩けるもんだ。ある意味、尊敬するよ。


「サブロー、遅い。なんで、みんな来ないのかな?」


 いやいや、無理無理、俺もガクガク膝が笑っているよ。いつでも腰を抜かせるぐらい体中が震えているよ。


「ご、ごめん。お、俺が待っているように言ったんだ」

「そうなんだ」


 ドラゴンが俺を見定めるように顔を寄せてくる。


 だから、怖いって。声まで震えるだろ。


「ナビ様、こやつが例の……」

「そうそう、サブローだよ」


 ドラゴンがしゃべった! どこから声を出しているのかはわからないが。


「サブロー、こっち、ドラちゃん」

「ナビ様、わしにも名前があるのだが」

「まあまあ、いいから、いいから」

 とナビは再びドラゴンの鼻面をバシバシと叩く。まあ、あの鱗だ、ドラゴンからしたら痛くも痒くもないのだろう。それにしてもドラちゃんは無いだろう、ドラゴンが全部ドラちゃんになっちゃうじゃないか。良いのかそれで。


 ナビはドラゴンから様付けで呼ばれている。ナビはドラゴンより上位設定なんだとわかった。


 俺は、小声でナビに確認する。

「ナビ、このドラゴン大丈夫だよな。俺たちを食べたりしないよな」


「おい、聞こえているぞ小僧。わしは人間なぞ食べん。踏み潰すだけだ」


 げっ、もっと悪いじゃねえか。


「大丈夫、大丈夫、ドラちゃんはそんな事しないよ。そんな悪い子じゃないもんね。ひょっとして、そこが心配だった?」

「そうじゃぞ小僧、わしは悪い子じゃない」

「……」


 ナビに誉められたのが嬉しいのか、得意気な顔をしているように感じた。たぶん、どや顔をしているのだろう。


 わかんねえよ、ドラゴンのどや顔なんて。


「サブロー、じゃあ神殿に行こうか。でもここに入れるのは私とサブローだけなんだよね。どうする?」

「俺だけってなんで? ベリーグの神殿のようにみんなで魔法を覚えるんじゃないのか」


「小僧、ここを、その辺の神殿といっしょにするでない。ここは」

「ドラちゃん、ドラちゃん、しーだよ」

「はっ、そうでした。ナビ様、この小僧が」


 いやいや、俺じゃないでしょ。自爆だよね。


「ナビ、俺は神殿に行くのは良いが、バレンナたちはどうするんだ。ここに残ってもらうのか?」

「そうだったね、バレンナたちに残ってもらうから、ドラちゃんを紹介しておかないとダメかな。ドラちゃんに守ってもらうんだから」

「えっ」


 ドラゴンもここに残るのか? バレンナ、ラズリ、そしてフィナは平気かな。


 ナビが走って3人のともへ行き、事情を説明しているようだ。


「おい、小僧。貴様、先程からナビ様を呼び捨てにしよってからに。あのお方はな、貴様ごときが呼び捨てに出来るようなお方ではないのだ。畏れ多くも」

「ドラちゃーん」

「はい、ナビ様なんでしょうか?」


 このドラゴンは、なんて調子の良い。

 はっ、ナビ、お前、本当はご隠居様だったとか?


 ナビが、バレンナとラズリとフィナの3人を連れて戻って来てドラゴンに顔合わせをする。


「バレンナ、ラズリ、フィナちゃん、紹介するね。こっちがドラちゃん、ちょっと強面だけど、良いドラゴンだから安心してね。こうやってバゴバゴ叩いても平気だから」

「「「……」」」


 こらまて、ナビ、目の前でドラゴンを叩くな。ドラゴンが暴れるんじゃないかと気が気でない。ほら、3人とも固まっているじゃないか。


「ドラちゃん、こっちのバレンナとラズリは私の妹よ。そして、この子が我が家の新人メイドのフィナちゃんよ。大切な家族なんだからちゃんと守ってよ。3人とも可愛いだからって甘噛しちゃダメよ」


「「「……」」」


 おいこら、ナビ、フラグになりそうな事を言うな。ドラゴンに甘噛されたら只じゃすまないだろ。ほら、3人ともカッチンコッチンに固まっただろう。


「ナビ様、わかりました。この、ドラちゃんが必ずやこの娘たちをお守りいたしましょう。娘ども、お前たちを守るゆえ、わしから一歩たりとも離れるでない」


 このドラゴンついに、自分のことをドラちゃんって言っちゃたよ。ドラゴンとしてのプライドは無いのか。


 ギロッ


 あっ、すみません。すみません。ペコペコ。


「ごめんね、3人とも、ちょっと野暮用で滝の奥にサブローと行ってくるよ。ドラゴンの棲みかだから、私とサブローしか入れないんだよね」

「3人とも、ちょっとナビと行ってくるから、待っててくれ」


「サ、サブロー兄さん」

「ん、サブロー兄、ずるい」

「サ、サブロー様」


 ああ、3人とも涙目だ。ごめんよ、頼りにならない兄で。


 何があるのかわからないが、俺は、ナビに連れられて滝へと足を進めた。




ドラちゃんが、バレンナ、ラズリ、フィナを守ってくれます。3人は涙目ですが、サブローは安心して滝の裏の神殿へ。


次回、神殿の最深部


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サンタさんのプレゼントか? 年末までは毎日更新出来ような雰囲気です。

あくまで雰囲気なので、本編投稿できなかったらSSS更新となります。

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