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073 火魔法と肩凝り

 ◇


「サブローから試してみようか。土魔法と同じだからサブローは魔法できるよね。まずは指先から火を出して」


 おう、補助輪はいらねえぜ。俺は、これでも土魔法のプロだからな。

「みんな、手本を見せてやるよ。良く見てな、せいっ!」

 二の腕ぐらいの長さに燃え上がる炎をイメージしながら、魔力を指先から出す。


 ぽっ


「「すごい」」

 バレンナとラズリがパチパチと拍手してくれ、ふたりの目がキラキラと俺の指先を見ている。


 あれ、小さっ。炎の大きさが指の第一関節の半分も無いよ。もっと魔力を注ぎ込んでと、おお、き、く、な、あ、れ。


 ダメだ。あんまり、変わらない。俺、火魔法と相性が悪いのか。


「サブロー、手本役ご苦労さん、もう炎を消していいよ。ん、どうしたの涙目で、感動したの。まったく、いつまで経っても純真なんだから」


 そうじゃないんだ、ナビ。お、俺は、火魔法はダメみたいだ。プチ挫折だ、ナビの胸に飛び込んで、大丈夫よって、なでなでしてもらいたいよ。


「じゃあ、次はバレンナがやってみようか。サブローみたいに自分の指先から火が出でている姿を想像して、炎よ指先に灯れって声に出して言うのよ。慣れたら言葉にしなくても思うだけでいいわよ。魔力の出し方は手伝ってあげるから、そんな不安そうな顔をしなくても大丈夫だよ」


「うん、ナビ姉」


 おっと、そうだった。自分の事は後回し。今は、バレンナとラズリの魔法だ。バレンナに頑張れって言ってあげたいが、プレッシャーになりそうなので止めた。


 ナビがバレンナの肩に触れ、魔力制御の補助をする。バレンナが呪文を唱えると、指先に炎が灯った。指一本分の大きさの炎だ。


「やった、私も出来た。あっ、消えちゃった」

「大丈夫よ、何度も何度も練習してね。でも、魔力切れには注意するのよ。魔力切れを起こすと気絶するし、最悪帰って来れないからね」

「うん、わかった。練習するよ」


「次は、ラズリの番だね。やることはバレンナと同じだよ、もう一度説明する?」

「ん、大丈夫、魔法する」


 今度は、ラズリを肩に手を添えて補助をするナビ。ラズリが呪文を唱えた。

「ん、炎、灯れ」


 ぶおっ


 手のひらぐらいの大きさの炎が、ラズリの指から出た。ラズリの目が真ん丸だ、きっとびっくりしたのだろう。ラズリの目が戻ると、徐々に炎が大きくなり、二の腕ぐらいの炎になった。


「ラズリ、上手い上手い。もっと大きくなる? でも、無理しないでね」

「ん、魔力、入れる」


 ぶっぶわわぁぁ


 突然、炎が倍の大きさになり、ラズリは頭を反らせて、再び目が真ん丸になった。


「ラズリ、止めて、止めて、天井が燃える。危ないよ」


 ナビがラズリの肩から手を離すと同時に炎が消えた。危ない火事になるところだった。火の扱いは気を付けないと、火魔法を家の内で使うのは危険だ。


「ラズリ、凄いじゃないか。家の中は狭すぎてラズリの魔法には合わないな、もっと広い場所じゃないと。狭すぎる家の中は、俺みたいな小さい火魔法だけな、ラズリ」

「ん、わかった」


「これで、みんな魔法覚えたね、後は実践だよ。火魔法は広い場所でね」

「うん、わかったよ」

「ん、わかった」


 バレンナもラズリも火魔法を無事覚えたし、さっきの俺の火魔法についてナビに聞いてみた。


「ナビ、あのさ、俺の火魔法なんだけど、かなりの魔力を込めたつもりなんだけど、あの大きさの炎で精一杯だったんだよ。土魔法とは魔力の出し方とか違うのかな」


「うーん、違いは無いと思うんだけと、見てみようか。ここに寝てみて」

 とナビは長椅子を指す。


 長椅子か、このパターンはろくなことがない。俺は、記憶の良い男だ。だがしかし、火魔法のために俺は寝る。でも、長椅子の下や周りに紐や縄などが無いことを確認してからだ。


「サブロー、何やっているのよ。早く寝なさいよ」

「うし、確認オッケー、ナビ先生お願いします」


 俺が長椅子に寝ると、ナビが俺の頭のつむじのある辺りを拳で軽くコンコンと小突く。うーん、と唸り声。続いてナビは、俺の首筋につつつっと指を這わせて肩に触れた。また、うーん、と唸り声。ナビは一旦、俺の体から手を離し顎に手を当て天井を見ながら考え込み出した。


 なになに、俺の体、問題ありなのか?


 バレンナとラズリが心配そうに俺を見下ろしている。大丈夫だよと目で答えた。俺たちは、ナビの告知を待つ。


「たぶん」

「たぶん?」

「たぶん、肩凝りだね」

「はあ?」


「良かったよ、サブロー兄さんが肩凝りで。もっとすごい病気かと思ったよ。ドキドキしちゃった」

「ん、ドキドキ、良かった」


 いや、ラズリ、それは変だから。

 いやいや、そんなムッて顔されても。


「ナビ、肩凝りで魔法が使えないのか? 土魔法はバリバリ使えていたぞ」

「そうだよ、土魔法の使いすぎで、火魔法が使えない肩凝りを起こしているんだよ、たぶん。サブローは土魔法でたくさん気絶とかしてたよね。その影響かも」


 肩凝りっていったい何だよ。筋肉的疲労な意味じゃないんだな。魔法的疲労な感じのイメージがわからん。


「ところで、その肩凝りって直せるのか? 揉みほぐしてとか」

「サブロー、良くわかっているね。勉強でもした。肩凝りは揉みほぐすのが一番効果的だよ。すぐやる?」

「……」


 そのまんまじゃねえか。もっと捻りはないのか、ナビ!


「お願いします。ナビ先生」

「わかったよ。じゃあ起き上がって座って」


 俺は、ナビに指示された通り起き上がり、右腕はこっちと言われれば、右腕を言われたように動かし、左腕はこっちよと引っ張れ、左右の足も動かしてヨガみたいなポーズをさせられた。その上でナビは俺の頭を円を書くようにくるくると回す。


「じゃあ、行くね」

「?」


 バキバキバキッ


 のへー


 バキバキバキッ


 べごー


 なにさらすんじゃあ、ナビ。気持ちいいじゃねえか。

 その時、祭壇の間の扉が開き、神殿の管理人の大柄な女が現れた。女はナビが俺をバキバキと整体している姿を見て、恥ずかしそうに言った。


「申し訳ない、あんたが連れてきたのは整体師さんだったんだな。勘違いしてすまない。サーナバラ領主のボンクラ息子が女を連れ込んだんだと勘違いしたよ」


 ひどい言われようだが、誤解が解けてよかったよ。




サブローは、肩凝りのため火魔法がうまく使えません。バレンナ、ラズリは無事、火魔法を覚えたようです。


次回、メイドの優雅な生活

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