006 魔法の乗り物
◇
乗り物と言ったらなんだろうか? 多くの人は自動車と答えるだろう。電車、飛行機、船などを思い浮かべる人もいる。また、自転車、自動二輪車なども乗り物だ。
さてここで問題だ。半日で自作できる乗り物と言ったらなんだろうか?
土魔法を使ってゴーレムを作ることを考えた。しかしゴーレムは歩みが遅い。ゴーレムに乗って移動したとしてもきっと途中で食糧が尽き、体力が尽き、魔力も尽きて旅は終わるだろう。
異世界ものでよくある自動馬車はどうか? 構造が不明なため半日では作れそうもない。
より簡単な構造で速度のでる乗り物。出来れば水瓶などの荷物を運搬するスペースもほしい。
車輪系か、多足系か、迷う。仮にムカデのような多足系の乗り物では、人や動物の敵愾心を煽らないだろうか? それに多足ゴーレム系を維持するには魔力に不安がある。短い時間しか保たないだろう。
「よし、車輪系にしよう、できれば3輪または4輪だ」
課題は何だ? 車体、操作機構、動力、車軸ベアリングだろうか?
「全部土魔法で作成するとなると衝撃強度も問題になるか、うーん、課題ばかりだ」
課題についてあれこれ想像してみる。
「ん! ひょっとしてセラミックは土魔法で出来るんじゃないか」
セラミックも強度に不安があるものの数日保てばいいのだ。夢が広がるぜ!
◇
「なんてこったい」
すべて失敗した。夢が破れた。
セラミックの素材を取集し固めることまではできた。しかし大切な焼きができなかった。そうセラミックはいわゆる陶器だ。焼成の工程が必要となる。土魔法じゃ焼けなかったよ。
固めただけの土くれは非常に脆い。乗り物なんて夢のまた夢だ。
せっかく魔法が使えるようになったのにチートではなかった。
練習や乗り物作りの間、姿が見えなかったナビが急に現れ、うな垂れている俺を見つけ声をかけてくれた。
「どうしたの、なにかあった?」
「ああ、乗り物が作れなかった、車輪の着いた乗り物だけど」
「ゴーレムじゃだめなの」
「そうだな、明日は小型のゴーレムで出発しよう」
「大丈夫だと思うけど、魔力が切れそうなになったら歩けばいいし、オアシス経由だったら問題ないように思うけど、そんなに心配?」
「水も食料も少ないし村にたどり、ん? 今なんて言った?」
「そんなに心配かって」
「その前」
「オアシス経由だったら問題ないように思うよ、かな」
「えっ、オアシスあんの?」
「あるよ、経由しないほうがいいの?」
「……」
すっかり夜も更けていた。
ぐったり疲れた俺は何かする気力も起きなく、すぐに寝息を立てたのだった。
◇
砂漠の大地を男を乗せたトカゲが歩いている。そのトカゲは土で出来ているようだ。額には黄色のガラス玉のような石が埋め込まれている。
男は目の下にクマがあり疲労困憊のようである。男は隣でふわふわ浮き従ってる幽霊ではない少女に言った。
「おまえって、サドだったんだな、容赦なかったぞ」
「えー、サブローのためだよ、今やらなくていつやるの、今でしょ」
「そうかもしれないがもっと寝させてくれてもいいじゃないか、もうだめだ無理だって言ってもゆるしてくれなし、もっと出せ、もっと出せって、もうカラカラだよ」
「ナビは不満なんだけど、もっとできたんじゃないの?」
「……」
「サブローは若いんだからすぐ回復するよ、今夜もやろうね」
「シクシク、頑張ればいいんだろ」
昨晩、俺は寝てからすぐにナビに叩き起こされた。
ナビにこっちに来い、そうしてここ掘れと言われ、眠い眼を擦り々々言われたまま穴を掘った。穴から出てきたのは片手に収まるぐらいの白い石。
「サブローこの石は魔石と言って魔力を貯めて置くことができるの、さあ魔力を注いで」
「注いでって言われても、どうすればいいんだ?」
「イメージだよ! イメージ、魔力の塊を作って石に、ぽいって入れるの」
いつもながら、よくわからん。
俺はいつもの通り目を瞑り言われた通りにイメージし石に魔力を注いでみた。石は薄い黄色に染まった。
「できたけど全然たりないよ、もっと注いで、もっともっと」
再び石に魔力を注ぐ。魔力が段々溜まってきた魔石はより黄色に、より透明になり、最後は黄色いガラスになっていた。黄色いガラスになった魔石を見てナビから合格をもらった。
「さあ、サブロー休んでないで次いくよ」
「えぇぇっ」
それから地面を掘る事4回、魔力を注入する事3回の結果、3つの黄色いガラス魔石と1つの白い魔石を入手して俺は落ちたのだった。
◇
俺は白い石を太陽に透かしながらつぶやいた。
「これが魔石か、魔力を貯め込んで任意で魔力を放出できるのか、まるで電池だな」
「そうだよ、だらかサブローが魔力を使わなくてもトカちゃんが動くんだよ」
トカちゃんってトカゲゴーレムのことかよ。トカゲゴーレムの背もたれに寄りかかり、疲れを癒すために目を瞑った。
ゴーレムは3メートルぐらいのづんぐりとしたトカゲ型とした。背もたれ、足置き、肘掛そしてハンドルを付け居住性は抜群。さらに魔石装備により俺が魔力を注がなくても形や命令が維持される。なかなかの優れものになった。さらに背もたれの後ろにはゴーレムと一体化してる土の箱が2つあり、たっぷりと塩が入っている。試運転を兼ねて塩の洞窟まで行ってきたのだった。そして大事な食料と水は箱の上の背に低い壺に収まっている。
「そろそろ、オアシスだよ」
ナビに声を掛けられ目を覚ました。前方を見てみるが石と砂の砂漠が続いている。
「どこにあるんだ? オアシスは。迷子じゃないよね」
「そうだね、どこだろ」
おいおい、ナビさんそりゃないでしょ。俺たちは砂漠で迷子になったのか?
車(三輪車)を造ろうと試行錯誤するも技術の壁は高かった。
がっかりサブローはオアシスに到着。
次回、なんの卵?