059 サーナラバの危機
◇
俺たちは、サーナバラに帰って来た。
「ラズリ、ただいま」
「ん、お帰り、バレンナ」
「目が治ったんだね、よかったよ」
「ん、ありがと」
「サブロー兄さんから聞いていたけど、本当に大きくなっている」
バレンナはラズリの頭の高さと胸を見て言ったのを俺は見ていた。黙っているのも兄心だ。
「ん、サービス」
「サービス? でも良かったよ、ラズリ大きくなって。心配してたんだよね、小さいままだったらどうしようって」
「ん、大丈夫、大きくなった」
「ラズリ」
「ん?」
「聞いていい?」
「ん」
「どうして、髪切ったの?」
「短いのも、いい」
そうなんだよね。サーナバラに帰ってきて、出迎えてくれたラズリの髪は短くなっていた。それもバッサリと。金髪のショート、でこは出さないぐらいの前髪、両目ぱっちりの髪型だ。
うん、可愛いぞ、ラズリ。
「んー、ラズリ可愛い」
ナビがラズリに抱き付き、頬ずりをしている。ラズリはナビにされるがままだ。
むむ、ナビが羨ましい。俺も頬ずりしたいぞ。
「ラズリ、バレンナ、久々に串焼食べに行こうよ、ソルは護衛よろしくね」
「ん、食べる」
「いいよ、行くよ」
「承知」
「……」
ねえ、俺は?
◇
俺を除く4人は町に串焼食べに行った。どうせコネロド商会にも、お菓子を食べに寄るだろう。
みんな、俺のこと好きじゃないのかな? 俺は、みんなのこと好きなんだけど。
「領主様」
うるせえよ、俺は、この角の床にのの字書くのに忙しいんだ。ほっといてくれ!
「領主様、サブロー様」
のの字、のの字と……和むな。
「領主様、このままですと破産です、領主様」
なぬ、破産? だれが? 俺か?
見上げるとホスバが俺を見ている。俺は立ち上がり事情説明を求めた。
「簡単に説明しますと、ソルさんの塩の調達もなくなり収入はありません。それとは反対に、村人が増え食料や生活資材の支出が増えました。赤字です、赤、赤、真っ赤っかです。近いうちに破産ですね」
ですねって、そんな他人事のようにと文句言おうとして止めた。ホスバの目が死んでいる。相当苦労したようだ。
すまん。ブラックで。
「何か手はないのか? ソルには、塩の調達をお願いしよう」
「ソルさんだけじゃないっす。みなさん全員に金を稼いでもらいます、いいすっね」
ホスバが迫ってくる。
わかったよ。働くよ。だから迫ってこないで。
「働かざる者、食うべからずっす!」
ホスバ、戻っているぞ。言葉が。
収入がないのは困った問題だ。移住して来た住民は5年間は無税にしたし、コメカリの収穫もまだ先のようだ。カエルを売るか、魔石を売るか、貰ってきた馬を売るぐらいしか今は手がない。魔石や馬は今後のために手はつけたくないし、カエルだけでやっていけるかは微妙だ。今のところ食糧不足ではないので、何とかコメカリ農業が軌道に乗るまでもたせたい。
どうしよう。
◇
サーナバラ領主とその関係者が集まっている。サブロー、ナビ、バレンナ、ラズリの領主一族、ソル、ホスバ、オドンの家臣たち、そしてサーナバラ村の自治会の3人だ。
オドンは南端の村の村長を辞めて正式にサーナバラ軍の隊長だ。軍といっても今はオドンだけ、その内増える予定だが。サーナバラ村の自治会には、シスターも参加している。
「みんな、よく集まってくれた。サーナバラに危機がやって来た。一致団結してこの危機を乗り越えて行きたい。では、ホスバ説明を」
集まった場所は、作りかけの領主の館の広間だ。まだ何も家具がないので、みんな大工用の簡単な椅子に座っている。
「それでは、私から説明させていただきます。簡単に説明しますとこの領地に破産の危機が来ました」
「「おぉぉ」」
「「……」」
「そこで皆さんには働いてもらいます、いいですね」
ホスバが血走った目でみんなを脅す。みんな、ホスバが怖いのかコクコクと頷く。
「ナビ様、ラズリ様、お二人は引き続きコネロド商会のアドバイザーを御願いします。ですがアドバイス料は領地会計に入れてもらいます」
「えー、仕方ないなぁ」
「この危機を乗り越えるまでです」
「わかったよ、ラズリもいい?」
「ん、いい」
まあ、この二人は日頃からコネロド商会で何やらやってたみたいだから順当な仕事だな。
「次にバレンナ様とオドンさんは、コネロド商会の兵士として臨時雇いが決まりました。これまでと同じで剣術の稽古や町の補修などです。わずかですが給金が出るそうです、頑張ってください」
「もらった給金はホスバに渡せばいいのかな?」
「はい、よろしくお願いします」
「おっ、わかったぜ、任せておけ」
ドンと胸を叩くオドン。
この二人も順当な仕事だ。よろしくな。
「ソルさんには、塩の調達と南端の村に残っている家財道具の回収を御願いします」
「承知した」
ソルには貰ってきたメイド服を着てもらっている。当人も気に入っているらしい。
これで我が領主一族に家令、メイド、軍ができた。あとは料理人と庭師が欲しいな。料理人はトアちゃんに頼んでみるか。
「村の方には、自宅の建設、コメカリの育成と収穫、カエルの捕獲のこれまで通りと追加で馬の管理も御願いします」
「わかりました、ふたつばかり質問しても良いですか?」
「どうぞ」
「馬についてはどこで飼いますか? また、馬を農作業で使っても良いでしょうか?」
「湿地帯より南の土地の草地は押さえました、そこで馬を飼ってください。そして、農作業の件ですが、基本的に軍馬なのであまり農作業には向かないと思います。どうしますか、サブロー様?」
「そうだな、使えるんだったら使っても良いよ。馬で困ったらナビに相談してくれ。馬はナビの言うことを良く聞いてくれるから」
「そうそう、私に言ってくれて良いよ。私もたまに馬の世話しに行くよ」
たまにかよ。でもナビって動物全般、いや、魔物とも意志疎通できんのか?
「自分はこれまで通り、塩の売買と食糧調達、諸々の支払などをやります。皆さんに困った事がでたら言ってください、なんとか調整しますから」
ホスバ、いろいろ調整ご苦労さん。これからも村の発展のためよろしくな。
さて、最後は俺だな。何をするのかな?
「サブロー様ですが、パオースの町の外壁の拡張を受注してきました。もともと町が手狭になってきたので今の外壁の外側に倍の高さの外壁を作るそうです。そこでサブロー様には石の切り出しと積み上げを担当してもらいます」
「おう、任せとけ、それは得意だ」
「それから、町の下水道工事も受注してきました。汚物処理や臭いが昔からの町の懸案だったんですが、サーナバラ方式を取り入れるとのことです」
「ふたつもか、まあ何とかなるかな」
「さらに、東西街道の拡張と整備です。これもサーナバラで見て気に入ったみたいです、車道と歩道の分離式が」
「それも俺なの?」
「もちろん、大丈夫ですよ、まずは湿地帯内の街道だけとのことですから」
「……」
パオースの町が景気が良いのは知っていた。サーナバラに新しい村ができ、いろいろな物や人手が売れるのだ。その税金で町を拡張しようとしているのだ。
「最後に」
「ちょっと待った! まだあるのか?」
「もちろん、今までことは当座しのぎ、本命は恒久的に稼げる物を作ることです。以前、スーパー銭湯ランドなるものが領主様の生まれた国にはあって繁盛していたとのこと。是非この地に作りましょう。よろしく御願いします」
ホスバが俺に頭を下げる。
なんたるブラック。俺死なないよね?
領主ってなに? それ美味しいの?
◇
後日、ラズリの髪を切った理由をホスバから教えてもらった。ラズリは切った髪を売り、その金をホスバに渡していたそうだ。領地がピンチなのを知って。
ラズリ本人はサブローが髪を切ったからと言っていたそうだが。
ラズリ、ありがとう。俺も頑張るよ。
サーナバラが破産の危機です。みんなで稼ぎます。
サズリが髪を切りショートに可愛さ倍増です。
次回、要塞、サーナバラ温泉




