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038 サブロー倒れる!

 ◇


 まだまだ、続くよ、俺のターン。

 俺は、ナビたち妹、移住してきた新しい住民、町から来た大工たちに大事な話しがあると朝から声をかけ広場に集まってもらった。ソルとホスバは移住護衛と買付でいない。


 俺はみんなの前に立ち声をあげる。


「みんな、おはよう、集まってくれてありがとう。大事な話があります。俺は考えました、今、この新しい村に何が必要かを」

「「「おおぉ」」」

 盛り上がるみんなを、手で鎮め俺は続ける。


「今、この新しい村に必要なのは」

「「「なのは」」」

 お、みんな、ノリノリだな。おーし。


「今、この新しい村に必要なのは、それは村の名前です」

「「「……」」」


「俺は、考えに考えました。この村の名前は、サーナバラにします。じゃーん」

「「「……」」」

 あれ? 反応が?


「ラズリ、町で肉串買って、魔石探し行こうか」

「ん」

 ナビとラズリが町に向かって歩きだした。


「オドンさん、ガンオさんの訓練に遅れます、急ぎましょう」

「おお、そうだな」

 バレンナとオドンが町に向かって歩きだした。


「よし、お前ら、今日は館の一階を仕上げるぞ」

「「「へー」」」

 大工の棟梁が大工たちを引き連れ館の方向へ歩きだした。


「サブローさん、すまねえ、俺らも自分の家を作らないと」

「「「すまねえ、サブローさん」」」

 住民たちは自分の家に向かって歩きだした。


 サブローはひとりになった。


 あれ? あれれれ、なんで?


 ◇


 さすがに領主館の建築までは、住民たちの手が足らず、お願い出来なかったので町の大工たちを雇った。大工たちには、パオースの町との道が出来たので、町からの通いでお願いしたら二つ返事で了承してもらった。今朝、広場に集まった大工たちだ。


 大工たちの話では、大昔の火山灰層を原料としたコンクリートもどきがあるそうで、それと俺が煉瓦大に分割した石材を使って館を作り、最後に漆喰を塗って仕上げるとのことだった。

 この話しを聞いた俺は、すぐ住民たちに伝えて自分の家建築を中止してもらった。住民たちは泥に短く切った枯れ草を混ぜ繋ぎに使っていたからだ。住民と大工と相談して強度的には問題ないとのことだが、住民が作った部分は俺が壊し慰謝料としてお金を払い、コンクリートで作り直してもらっている。領主館の建築をストップして大工たちにも元の戻すまで手伝っもらった。


 住民は恐縮してたが、元に戻るまで野宿してもらったので、こっちが申し訳なく思っている。領主として出来ることをやっただけなのだから。


 ちなみに、コンクリート素材は当初こそ町から購入したが、俺が土魔法でコンクリート原料と漆喰原料を見つけてゴーレムにして村に運んである。大工も住民も今ではその原料を加工して使っている。


 それから、梁や屋根板等に使う木材だが、小山の木を使用することなった。乾かさなくていいのかと大工の棟梁に聞いたら、大丈夫だと返事された。魔法か魔石で乾かすのだろうか? 住民の分もお願いしよう。

 屋根板の上にのせる薄い厚さで石材も大量に準備させられた。これも棟梁の指示だったのだが。


 着々と街並みが出来てきた。


 ◇


 さあ、田んぼ作りだ。

 村の近くに実験用の稲田を作る。1町の広さの湿地から草木を抜き、水深10cmぐらいになるように土を集め攪拌する。6反分は1反ごとに畔を作り取水口を作る。残りの4反分は、稲田の区画がわかるように目印として石柱を立てておく。絶えず水の流れる稲田だ。


 田んぼの完成だ。


 あとは住民に実験してもらう。苗床である程度成長させた苗を稲田に植え替える方法。種籾を直接、稲田に蒔き発芽成長させる方法。稲田の種類と合わせ4パターンだ。

 どれが一番実るだろう?住民と掛をしたら盛り上がるだろうか? 楽しみだ。


 町とか反とかの単位を使うのは俺のこだわりだ。田んぼだからな。


 ◇


 カエルの飼育場を作るぞ。これも実験用だ。直径30mぐらいの円状に20cm間隔で石柱を湿地に立てる、以上。


 当分、捕まえたカエルを逃げないよう入れておくだけだ。あとで食べるけどね。


 しかし、どうやってカエルを集めようか? カエル班を作る? でもみんな、忙しいしなあ、ってか忙しすぎだよ。こんなにハードワーク続いたら体を壊すわ。


 おっ! 良いこと思いついた。

 カエルの日を作ろう。

 すべての仕事を休む日にしょう、領主命令で。代わりにカエル取り大会を開こう。

 捕まえたカエルは俺が買い取り、一番多くのカエルを捕まえたチームには報奨を出すとか。そして宴会するとか……いいじゃん。

 細かい事はホスバに丸投げだけど。


 でも、5日間で1日休みとか休みの日のことも考えないと。町の人も休みの日って感じないもんな。どうなってのかな?

 まあ、これもホスバに丸投げしよう、とりあえず心のメモにカキカキ。


 ◇


 小山の開発だ。でも何にしよう?

 城か、スーパー銭湯ランドか、空中庭園か、もうめんどくなったから開発止めるのもありかな。


 小山を領地にした頃は漠然と高い城壁に守られた温泉つき領主館を作るつもりだったが、小山の登り降りが苦になって夢も消えた。とりあえず、小山の麓の木をゴーレム移動させ、水堀の幅を考慮して切り出した巨石を小山の回りに並べ積み上げて行く。巨石の石垣だ。


 石が足んねえ!


 石の搬入口を残し高さ5mぐらいの石垣が出来たところで、俺は倒れた。急に魔力がなくなった気がした。


 ◇


「サブロー、大丈夫? 倒れたんだって」


 心配そうに俺を覗き込むナビ。隣にはバレンナとラズリもいる。俺は家のベットに寝ていた。借りて住んでいる住民たちは俺たちに遠慮してか姿が見えない。


「働きすぎ」

「私が居ないときも、ちゃんと食べてたの?」

 ラズリもバレンナも声をかけてくれる。なんか俺、可愛い子たちに囲まれて介護されている、嬉しいかも。


「ちゃんと食べてたし、寝てもいた、ここんとこ魔法が絶好調で、自分でもびっくりしていたんだけど……無理してたのかなぁ」


「女」

「あの女だね」

 ラズリが言い出しナビが追従する。ふたりは目を合わせ頷きあう。


「「?」」

 俺とバレンナは何のことか分からず、ふたりを見ている。


「魔素」

「そうだね、ラズリ、あの女だね絶対!」

 ナビとラズリは俺が倒れた事に興味は無くなったらしく、二人だけの世界で会話している。


 ねえねえ、俺とバレンナは全然分かってないよ、説明ぷりーず。

「ナビ姉さんとラズリは何か知ってるの?」


「南端の村に移住の話をしに行ったときがあったでしょう、私たち4人で、ソルがここで留守番で」

「うん、それがどうしたの?」


「村から帰ったときに気がついたの、濃くなってることに。でも、あの女もそういう連中だったら、おかしくないから、まっいいかって思ってたのよね」

「濃いって何が?」

 バレンナの質問にはラズリが答えた。

「魔素」

「「えっ」」

 俺とバレンナはびっくりだ。


「帰ったら魔素、濃かった」

「えー、ラズリ、魔素わかるの、いいなぁ」

 バレンナ、そっちかよ!

 いろいろ、突っ込みたい事があるけど、ナビに聞いても答えてくれそうもないネタだ。


「たぶん、魔素が濃くなったのは、あの女が原因だよね、ラズリ」

「ん、あの女」

「へえ、あの女の人なんだ」


 あのね君たち、あの女、あの女って言うけど、君たち会ってないよね。会ったのソルだけだよね。どんな女の人を想像しているのかはわかんないけど。


 俺はソルに聞いたとおり、ナイスバデーな褐色肌の美人なお姉さんの全裸がイメージできるぞ。

 ポフポフ叩くな、ラズリ。顔に出てたか?


「ナビ、俺が倒れた事と魔素が濃いことって関係あるの?」


「サブロー、魔法絶好調」

「魔素、なくなる」

「サブロー、魔法負荷増」

「サブロー、倒れる」

 なるほど、よくわかった。解説ありがとう、ラズリ。


「なるほどな、魔素が濃いと魔法効率がいいってことだな、そして魔法を使うと魔素が無くなると、効率が良かったときの感じで魔法を使うと、疲れるってことか」

「ん」


「そんなの、サブローぐらいだけどね。普通、魔法を使っても急激に魔素が消費されることないから、濃い魔素も匂いといっしよで自然に拡散されるのが普通だから」

 えっ! 俺ってチートだったの?


 魔素が薄いところで、魔法を使うと疲れるのか?

 ん! ってことは……心のメモにカキカキ。


「あの女が魔素なんだ」

「「?」」

 バレンナとラズリは、何のことって感じだ。ナビはどうかな?


「さてと、サブローも元気になったことだし、ラズリ、町の串焼き屋に行こうよ」

「ん、バレンナも」

「バレンナも行くよ、さあ、早く」

「うん、でもサブローにい、サブロー本当に大丈夫?」

 ちっ! ナビめ、引っ掛からないか。


「ああ、バレンナ大丈夫だ、それと前みたいに兄さんって呼んでいいぞ、どんと来いだ」

 バレンナは赤くなった顔を隠して部屋から出ていった。ナビとラズリもヒラヒラ手を振りながら、じゃあねーと言ってバレンナを追いかける。部屋には俺ひとり。


 俺も誘えよ、串焼き食べたいぞ!


 ◇


 翌日、俺はコネロドに呼ばれた。

 コネロド商会に俺だけで訪ねるとコネロドが待ち構えていた。


「サブロー君、例の話ですが術者が沿海州の町に現れたそうです、行きますか?」

「はい、是非」

「わかりました、早速手配しましょう」

「ありがとうございます」


 コネロド商会から戻って村の建築の手伝いをしていると、コネロド商会の丁稚がやって来てコネロドの伝言を伝えてくれた。


「明後日の朝の出発で、3席を用意できました。日の出の頃に商会まで来て下さい、準備は…………となります」

 とのことだった。


 3人で沿海州に行くことになりそうだ。



領地開発はざっくり出来ました。あの女のおかげかも知れません。


次回、沿海州へ



更新は10/31予定です。



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