037 新村の名前
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俺はソルと領地に来た村人2人と南端の村に向かっている。トニーの尾には町で購入した荷車がくくりつけられていて、引っ越し仕様だ。
ソルには塩調達と引っ越し班をやってもらう予定だ。魔物が少ないとはいえ、引っ越しの村人の護衛も兼ねての班長を。
今回は南端の村への道、塩の洞窟までの道、トニーの魔石交換タイミングを覚えてもらうため俺も同行している。
道中ではソルから、俺たちが留守の間の出来事を教えてもらった。特に俺に伝言を頼んだ女性のことを詳しく教えてもらった。
いやあ、まったく酷い目に会った。あの伝言のことでナビたちから不潔だとか、いやらしいとか、いつのまにと物理で攻められ、身に覚えがないと答えると男らしくないと精神をなじられる。ああ、いつものパターンだなあと感じながら。
で結局、卵の持ち主が現れ礼を言ったのだろうということに落ち着いた。抱いてくれとは卵のことだろうということだ、卵だけに。俺は鳥じゃねえよ。
だが、俺が気にしたのは女の事だ。ドラコンに乗りソルより強い、その女はソルが気に入りまた来るよと言って去った。
トラブルの匂いしか感じねえよ、ああ、胃が痛くなる。
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一方、バレンナはオドンといっしょにコネロド商会のガンオのおっさんと戦闘訓練だ。将来の領主候補と領軍幹部候補だからな。バレンナに話しをしたときは涙目になりながら頑張るって言ってくれた。
不安だろうが頑張って欲しい、いつまでいっしょに居られるかわからないし。
そして、ラズリはナビと他の村人とともに収集班だ。コメカリの実は村人が、ラズリとナビは魔石かな?
ラズリには商会の主人として切り盛り出来るようになってもらいたいと話したら、いつものごとく短い返事を返してくれた。
バレンナもラズリも大変だが、いい方向でやる気になってくれて嬉しい。
ナビは村や町の人の服装を変えるのだと息巻いていた。ファッション革命だと。まあ、良くわからないが、お嬢様として適当にバレンナとラズリの二人を助けてくれるだろう。
ホスバはひとりで塩を売って金を調達し、近郊の農村での食糧の買い付けに奔走している。早く領地に戻って倉庫を作らないと食糧が野ざらしになってしまう。
皆がみな、忙しくなってきた。
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移住第一陣の家族と一緒に領地に帰って来た。
帰り道は全部歩きだった。というのも、移住家族の家財道具を荷車に、じいちゃん、ばあちゃんと奥さん子どもたちはトニーの座席に座らせたからだ。
一往復で一家族の移住になりそうだ。ソル頼んだぞ!
ソルは、また明日から塩の洞窟、南端の村と領地を往復する。帰りには移住家族をともなって。
さあ、やっと俺のターンだ。みんな、期待してくれ。誉めていいんだぞ。
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小山の麓から南街道まで続いている石道をメインストリートとして碁盤の目になるように道、広場、領主館、行政区画、官舎、商店街、住宅、共同浴場、共同炊事場、公園、上水道、工業区画、演習場の縄張りをする。ミニ近代都市計画だ。
土が足りない箇所は小山を切り崩して埋め立てをする。ゴーレム移動だけどね。
水辺は土の流出を防ぐため切り出した石を板状に分割して打ち込んた。割れた石もあったが気にしない。さらに小山の山頂周辺に生い茂っている木の根元をゴーレム化して水辺と公園まで歩いてもらい植林する。おかげで小山は低くなり禿げてきた。
公園、メインストリートの街路樹以外の敷地は重量級ゴーレムに歩きまわってもらい地盤を固めた。特に道になるところは念入りに。
道になる所には下水道の本管を埋め込み、上流の水で流れるようにした。出口は新村から離れた所にしたが、上手く流れるか不安だ。また下水道の支管は各建物の下部予定位置に配置した。
川からの上水道は当面は保留だ。川からの上水道の建設が大変なためと、温泉の水が飲めることがわかっているからだ。川から水を引くにしても出来るだけ水源地を選びたい。
温泉の源泉から麓まで石菅で繋げ分水場を作り、領主館、共同浴場、共同炊事場に配水する。
共同炊事場は力作だ。源泉の熱い蒸気で調理出来るようにした。これで食材が蒸せる。コメカリも炊けるはずだ。燃料やその代金を確保するのって村人の重荷になるからな。
領主館と共同浴場の敷地に各二つ湯槽を作り温泉を通す、これで毎日温泉に入れる。共同浴場の建物は後回しだ。村人に木の枝とかで柵などの目隠しを作ってもらおう。
道には石を煉瓦ぐらいの大きさに分割して並べた。これはちょっと苦労した。車輪型ゴーレムを作って、ゴーレムが自壊するような感じて道に石を上手く並べることが出来た。そして、こだわりのポイントは車道と歩道の区切り石だ。今は車道を通る馬車もいないんだけどね。
各住居になる敷地には、邪魔にならない片隅に道と同じ大きさに分割した石を積み上げて置く。一軒分相当なのでかなりの量だ。家の建築については各家族に任せるつもりだ。しかし、ある程度の建築基準が有った方が村全体の景観が良くなるだろう、建築基準についてはラズリとホスバに丸投げだ。
各家族の家がある程度出来るまでは俺たちの家で寝泊まりしてもらう。女子供だけ家の中で男たちは外だ。そのくらいは我慢してもらう。
ナビ、バレンナ、ラズリは町の宿屋を利用し俺とソルは野宿だ。ソルはほとんど居ないけどね。
小山の麓を半周して町に至る道を作る。これは、南街道から小山の麓に作った道と同じ要領で作った。これで町との行き来も楽になった。ちなみに東門の近くに道を通した、コネロド商会に近いからな。
新村を囲む壁も保留だ。当分、俺かナビかソルが居れば、早期に外敵を察知できるからだ。余裕が出来たら作ろう。
うう、石材が足りん。
こうして俺は、石切場と新村を行き来して開発を進めた。
新村の名前を考えないと……!
サーナバラでいいか。
新しい村の名は、サーナバラです。
次回、サブロー倒れる!