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003 ゲスト登録

 ◇


 ムシャムシャ

「うまい」

 神殿の周りある低木に実った実を食べている。ブルーベリーのような見た目と味だ。


 神殿の隣の池で顔を洗い食べ物を探していたら、神殿の周りの木は砂漠の低木と種類が違うのに気が付いた。木に近づき観察したら木の実を発見した。食べれるか迷ったが食った。

 神殿の周りの木はなにか宗教的な意味があって植えられたのかもしれない。

 とにかく食べ物にありつけて助かった。数日は持つ量がありそうだ。


「腹五分だけど、限りある食糧を大切にしないと」

「ここがどこかの手がかりを見つけて、家に戻る方法を考えないとな」

「まあ、バックパッカーの旅で資金が尽き、アルバイトとかで資金調達して次へ移動と思えばいいか」 

 だんだん独り言が多くなってきた。

 手がかりを探しに遺跡を調査することにした。街を一周してみよう。


 崩れた壁、乱雑に転がる石、遺跡に溜まる砂、これといった発見はなかった。ここはいったいどこなのだろう。車の轍、火を焚いた跡、銃痕、ビニールやプラスチックといった現代のゴミなどがまったく見つからない。人間や動物の足跡なども見つけことが出来なかった。

 食糧が無くて人間や動物が周りには住んでいないようだ。また、観光地でもなく、戦略的用地でもないらしい。鳥も見かけていない。

 

「どこだよ! ここは?」

 歩き続けたため汗をかいて気持ちが悪い。池に戻って水浴びをしよう。


 ◇


 湧き出ている池の水は街に向かって小川となって流れてだし、神殿敷地の縁の崖で小さな滝となっている。落ちた水は街に向かっているが途中の砂に吸い込まれて消える川となっている。

 俺は滝に打たれていた。


「これは、気持ちいいぞぉぉぉ」

 真昼間に全裸で水浴びし奇声をあげる。だれもいないからできる暴挙である。これがテレビだったらモザイクものだ。 


「ひゃっほー」

 ぶるぶると体を振ったものの水気が飛ぶものでもない。体が乾くまで近くにある石に腰掛けて次の行動を考えてみる。街を調査しつつ街の外に人工物や砂漠以外の土地があるか見渡したが期待するものはなった。いつまでもここに居るわけにもいかない。危険ではあるがこの地を離れること考える。


 どちらに向かうか?

 ここをパルミラもしくは、その近郊の遺跡と仮定する。東西南北どちらにいっても危険地帯。西に行けば地中海にでる。


「うーん、西かな?」

 危険度がまったくわからん。神頼みだなこりゃ。

 まずは旅の準備だ。水筒の代用品の発掘、塩の調達、木の実の採取、やることは沢山ある。

「よし、やるぞ」


 ◇


 幸いなことに、へりがかけた壺を2つ発見した。これで水が運べそうだ。トレナーの上着を脱ぎ、うまく壺を担げるように体に巻きつけて具合をみた。うん! なんとかなりそうだ。木の実と塩は隙間に入れれば良さそうだ。


「移動は日の出に始め、正午には終わり、日蔭を見つけて休むことにしよう、暑いと体力の消耗が激しいからな」

「水、食料は、2日もつとして移動限界は40Kmぐらいかぁ、ハードモードだな」

「2日間で次の拠点を見つけないと」


 ここに居ても先がない。先に進んでも2日間で何も見つけれなければ終わりである。切羽詰まった状況であるが、何とかなるような気がする。


「たった2日経っただけだけど、人生観って変わるもんだなぁ」

「なんだか細かいことが、気にならなくなったぞ、これが旅の経験値なのかな」

 危機に対して免疫が出来てきたのだろうか? それが成長なのか? たった2日だけど。今日は、早く寝て明日の日の出とともに出発しよう。まだ、陽は高いが寝るため昨日寝た所に戻った。石の祭壇を見て指を差し宣言した。

「今日はやらんぞ、魔法もなしだ」

 横になると意識を失ったようにすぐに寝てしまった。


 ◇


 まだ暗い中、起きだし神殿横の池に行き顔を洗ってしっかりと目を覚ました。

 意識がはっきりすると、これから出発することが不安に思えてきた。


「でも、先に進まんと」

 不安な気持ちを抱えたまま日の出を待っていた。徐々に明るくなり日が地平線より顔をだすと、神殿の祭壇に光があたり輝いている。輝いている祭壇をみて思った。


「そうだ、旅の安全を祈願してから出発しよう」

 祭壇に木の実を数粒置きお供え物とした。軽く礼をして、なんとなく柏手を打ってしまった。


 パーン、パーン

 目を閉じ手のひらを合わせて祈願した。

 (どうか、家族もとに帰れ……)

 祈願している最中に突然、頭の中になにかが問い合わせてきた。


『あなたは、ゲスト登録しますか?』

「えっ?」

 何が起こったのかわからない。周りを見渡したが誰も居ない。 


「……」

「もう一度、もう一度、お願いします」

『あなたは、ゲスト登録しますか?』

 俺は何も考えず反射的に答えてしまった。

「はい、お願いします」  


『あなたは、ゲスト登録されました。』 

 どうやら俺はゲストというものに登録されたようだ。

 


俺、ゲスト登録しました。


次回、義妹

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