027 美女+ゴーレム
◇
コネロドからの呼び出しに応え、コネロドの店に来ていた。手代に案内され応接間で、コネロド本人をナビといっしょに待っている。いまごろ、バレンナとラズリは町で買い物と食事を楽しんでいることだろう。この町では人口が少ないわりに東西交易のお陰で店は多い。ナビもふたりといっしょに町の買い物と食事に行くかと思っていたら俺に付いてきた。こっちのほうが面白そうだとよ。
ふたりで待っているとぼどなくコネロドか入室してきた。挨拶がわりにお互いの肩を叩き合い応接間のソファーに座った。
さて、話とはなんだろう。
「サブロー君、君にはひとりもいないのだろうか?」
はっ、なんのことだろうか?
(なんの話だろうね、サブローのお嫁さんのことかな?)
(俺に嫁さんはいないよ)
(わかったサブロー、ハーレム分岐だよ、コネロドの孫娘かな?)
(いやいや、急にそんなこといわれると困るよ、心の準備が……)
(サブロー、ハーレムが順調に出来てるよ)
(そ、そうかな?)
(コネロドと町には貢献したもんね、きっと認められたんたよ)
(そうだよな、俺頑張ったから認めらてもおかしくないよな)
(コネロドがきっと言うよ、私の後継者にならないか? ついては孫娘の婿にって、どうするサブロー)
(いやぁ、まいったな! ポリポリ)
ナビと目を会わせ思念で会話する。ナビはまた面白いことが起きそうだぞ、と好奇心で目が輝いていた。
「はい、独り身の独身です、ナビ、バレンナ、ラズリはみな妹です」
義理の妹ですが……
コネロドはそうですかと答えて眉を上げた、君は何言ってんだって眉だ。
えっ、コネロドの孫娘でハーレム話じゃないの?
「申し訳ないな、言い方が悪かったようだ、君の護衛の話だ」
「はぁ、護衛ですか?」
護衛ってなに? それ美味しいの? 護衛と書いてハーレムって読むみたいな?
「先日の盗賊討伐騒ぎから君は商人の間では注目されている。塩の取引もそうだが金を持っていて護衛もいないとなれば、良からぬことを考える人間も出てこよう」
「……」
「君には取引でも盗賊討伐でも良い縁があるようだ。要らぬ世話かと思ったがことが起こってからでは遅いと思い、ここに来てもらったのだよ」
「……」
あのぉ、ナビさん、ハーレムは関係ないみたいだぞ! って横見るとお茶うけ菓子食べてしあわせそうに、私は最初から関係ありませんてな顔をしているし。
「サブロー君にあてがなければ紹介もするが、考えておきなさい。私も得意先がひとつ減るのは望んではいないのでな」
「はぁ」
俺はハーレムのこととばかりと勘違いしてしまったので、どうしても気が抜けた返事となったようだ。
「忠告ありがとうございます、妹たちと検討してみます」
「そうしなさい、わざわざ来てもらってすまなかったね」
コネロドは呼び鈴を鳴らし手代を呼びつけ、俺たちが帰るのを誘導してくれる。
「ナビさんは、この菓子が気に入ったのかな?」
「はい、この菓子おいしいですよね、お茶と合います、それに見た目の形がいいし、これ売れますよ」
「さすがサブロー君の妹さんだ、こんど売り出す予定の菓子だが気に入ってくれたかな」
「はい、でも……」
「でもなんだね。遠慮なく言ってくれたまえ」
「このお菓子は、出来れば一口で食べられたほうがいいかなって、それに入れ物にひとつひとつ分けて入れれば高級感もでますよ」
「なるほど……」
護衛の話よりお菓子の話のほうが盛り上がっている、本当は、お菓子について意見を聞くために呼ばれたんじゃと疑ってしまいそうだ。商人恐るべし。
「ナビさん、参考にさせてもらうよ。手代さん、お土産に菓子を持っていってもらいなさい」
「コネロドさん、ありがとうございます。また新作のときは呼んでください」
「もちろん、宜しくたのむよ」
フォッフォッフォとウフフフと笑っているが顔は商人だ。なにか商売のヒントはないか、利益になることはないかと探す商人の目がそこにある。
ふたりには付き合えないよ。ああ、お茶がうめえ。
◇
コネロドの商店から出た俺たちは、バレンナとラズリを探しに行く。マーカー設定を覚えたから楽に探せる。
バレンナとラズリと合流してお互いの出来事について話しながら小山に帰る。バレンナとラズリは服などは見るだけで買わず、屋台でちょっとしたものを食べただけらしい。ナビが後でお菓子食べようと誘っている。俺の護衛の話を聞くと俺に一任するということになった。
護衛は必要か?
バレンナとラズリを守るためには確かに最低でもひとりは必要だ。
最近、みんなの仕事が決まってきた。俺は石切場で石を切り出しゴーレムで小山まで行くように指示する。暇な時間はひたすら魔石に魔力充填が仕事になった。
ラズリとナビは、小山に来たゴーレムに指示し適当な場所に石を置かせゴーレムを解除して魔石を集め俺に届ける。また町や小山の周辺で魔石を見つけてくるのもふたりの係りだ。たまに泥だらけで帰ってくるんだよね。
バレンナはみんなの食事係りだ、朝夕二食だけれどかなり大変だ。この辺は食事は一日二食が一般的で小腹がすいたら果物など食べている。護衛をつけるとしたらバレンナにだろう。町での買い出しなど一人でやってることも多い。
俺もひとり作業だがどうしょうか? トニーを改造して護衛とするかな。
バレンナといっしょってことは男より女がいいと思うのだが、先日の盗賊討伐のときでも町の傭兵は男だけだった。やはり女性の傭兵はいないのか、少ないのだろう。
「バレンナ、やっぱり男の人が四六時中いっしょにいたらいやだよな?」
「うん、絶対いや!」
「そうだよなぁ、俺だってやだもんな、おっさんとずっとと思うと……」
バレンナは想像しちゃったのか、涙目になっちゃったよ。
「大丈夫だよ、バレンナ! 男の傭兵は雇わないから、おっさんは無いから大丈夫」
「うん、サブロー、絶対やだからね」
「そうすると、もっと大きな町で募集出さないとダメか」
俺が思案にくれてると、ラズリといっしょにリンゴみたいな果物をかじっているナビが言う。
「女性の傭兵がいないんだったら、作ればいいんじゃない!」
ナビ、おまえはどこのアントワネットだよ! パンはケーキじゃねえよ。
でも作ればって、作れんの?
「ゴーレムの延長だし、ノウハウはあるから大丈夫よ、きっと」
そういえば、ナビもゴーレムの造形だった。余りにも自然過ぎて忘れてしまうぞ。
どうしてそんなに自然なんだよ。なに、師匠に造形のなんたるかを教えてもらったって! なんのこっちゃ?
「ナビって今は何個魔石使ってんの?」
バレンナとラズリには聞こえないように囁く。
「6つよ、この間の盗賊とのやり取りで力不足だったから3倍にしたの、3倍速いし3倍力強いわよ、この間の盗賊ぐらいだったら軽くあしらえるわよ」
得意気に言うナビ。全然赤くなってねえな、赤くなくっちゃ3倍名乗っちゃだめだぞ。
「ナビ、あと2個追加して8つにしろ、6つじゃだめだ!」
こだわりから強く言っちまった。するとなにを勘違いしたのか、ナビが嬉しそうにしている。
「サブローたら、心配性なんだから、仕方がないわね。魔石増やすわよ、でもサブローのためじゃないんだからね!」
「……」
◇
みんなの意見を取り入れてゴーレムを作った。もちろん俺のこだわりも入れさせてもらった。こだわりすぎてみんなに白い目で見られたが、譲れないところがある。
女性形、身長は俺より若干高い。スレンダーだがボッキュボンとゴージャス。髪の毛は短めの紺色、瞳の色は薄い紫色の目元がキリッとした美人さんだ。年は年上として細かい設定なしでって3人が強く要求。魔石はナビの倍の16個積んだ。この辺で一番強い魔獣とも互角に渡り合えるだろうとナビ曰く。
最後に名前だがソルとした。俺の命名だが決してソルジャーから取ったわけではない。
当面、ソルはバレンナはいっしょに行動することになった。まだぎこちないので町ではフード付きの服を購入して、深々とフードを被ってもらっている。慣れるまでは、人としての生活や人との接し方を教える。バレンナとはうまくやっていけそうな感じだ。
数日後、俺はコネロドに護衛を雇ったことを伝えて、出来れば戦闘訓練をつけて欲しいと頼んだら快く承諾してくれた。
俺がびっくりしたのは、バレンナも戦闘訓練に参加したいと言ってきたことだ、積極的になにかを始めるのは良いことだと思い訳も聞かず了承した。
バレンナとソルのコンビは午前中は訓練を午後からは買い物と夕食準備が日課になった。
ソル登場回でした。美人さんのゴーレムです。
次回、芽生えた自我