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024 陰謀の結末

 ◇


「ぜーはー、ぜーはー、やっとたどりついたぞ、盗賊の首領はどこだ」

 俺は大きな声で言い放った。


 俺とコネロドと戦闘指揮官の男を含めたコネロド隊の4人が、小山の山頂の平地にたどり着いた。背後の南側斜面からは剣を交える音と怒声が聞こえる。戦いの姿は木々や傾斜で見ることは出来ない。俺たちは持っている武器を構え、盗賊たちの小屋に近づいた。


 盗賊の首領が律儀にも俺たちの到着に気づき、粗末な小屋から手下ひとりを連れて出てきた。

「てめえら誰だ? 生きて帰れると思うなよ」

 盗賊の首領がいろいろ過程を飛ばしたセリフを言い放った。俺たちが来ることがわかっていて、待ちくたびれたのかも知れない。


「お前が盗賊団の首領だな、おとなしく捕縛されろ、命だけは助かるかも知れんぞ」

 コネロド隊の戦闘指揮官の男が言う。

 おっさん、さっきの打ち合わせでは首領は絶対処刑対象だって言ってなかったか。


「おい、てめえら、とっとと片付けて登ってこい」

 首領が南側斜面に向かって怒声をかける。南側斜面からは、おうっと返答があり、それを聞いた首領はニンマリと笑う。

「捕まるのは俺たちじゃなく、おまえらじゃないのか。商人さんよ」

 なんで商人ってわかってんだよ。だれかと繋がってるのがバレバレだろ。


 おっ、やっと西商人筆頭の登場だぞ。俺は戦闘指揮官の男に合図を送った。

「いや、捕まるのはお前たちだ。おうっ、西商人の。遅いではないか」

 西側斜面から西商人筆頭の隊が現れたので、戦闘指揮官の男が大きな声を上げた。

 俺たちは盗賊たちを挟み討ちとなるようにと東側に位置をずらして、西商人筆頭たちが来るのを待つ。


「東商人の、待たせましたね」

 西商人筆頭が悪びれもせず答えると、そのまま盗賊たちに近づく。盗賊の首領はニヤニヤして西商人が近づくのを待っている。

「西商人の、後ろから盗賊たちが登ってきている、早く盗賊の首領を捕まえてくれ」

 戦闘指揮官の男が西商人に声を掛ける。


「東商人の、手柄を譲るぞ、お先にどうぞ」

 西商人筆頭は両手を広げて砕けた感じで誘ってくる。戦闘指揮官の男も同じような顔と仕草で西商人筆頭に言葉を返す。

「いやいや西商人の、どうぞどうぞ、あなた方の手柄にしてくれ。いつもは商売で儲けさせてもらっているから、こんな手柄ですまないが貰ってくれ」


 西商人筆頭と盗賊の首領は笑顔が固まり、目に殺意が灯ったように見える。西商人筆頭にはお前よりこっちが儲けているぞと聞こえ、盗賊の首領には三下扱いに聞こえたら、ふたりとも怒るのは当たり前だ。それが、これから陥れようとしている相手から言われたのだからなおさらだ。


「おまえら勘弁しねえぞ、覚悟しやがれ」

 俺もそうだけど、盗賊の首領もボキャブラリーせまっ。もう少し上手く言えないもんかなぁ、頭悪そうに見えるぞ。

 盗賊の首領は西商人筆頭と頷き合うと腰の剣を抜き放ち俺たちに向かって歩き出した。


「おいおい、お前たちふたりで俺たち敵うとでも? 素直に降参したらどうだ」

 さらに追い討ちを掛けるように、戦闘指揮官の男はふざけて挑発する。


「ふざけるな。二度とふざけたことを言えなくしてやる、西商人の旦那、悪いが俺たちが討ち取らせてもらうぜ」

「仕方ない人達ですね、まあ良いでしょう。それから私は西商人筆頭ですよ、すぐに町商人筆頭となりますがね」

 西商人筆頭は盗賊の首領の行動を認めて傍観するようだ。西商人筆頭の部隊も筆頭に合わせ、剣を抜いてはいるが下に向けて観客となっている。


 俺たち4人はじりじりと東側の傾斜方向に下がる。戦闘指揮官の男は大声で叫んで西商人筆頭を非難し始めた。

「何てこった。西商人の、お前たちは町を裏切ったのか。盗賊の仲間だったのか」

 おっさん、大根だぞ。台詞が棒読みだ。


「裏切るなどとは人聞きの悪い。私はあなた方に手柄を譲っているだけですよ、頑張ってください」

 おっさんの大根ぷりがあまりに酷く、俺とコネロドのもうひとり部下とふたりで下を向き震えていた。それを見た盗賊の首領は勘違いし囃し立てる。

「そこのふたりは震えてるじゃねえか。おいおい素人かよ」


 盗賊ふたりが剣を振り上げ迫る。戦闘指揮官の男と隊のもうひとりの男が、コネロドと俺の前に出て盗賊たちの剣を受ける。

「こっちは素人だが、そっちは腕が鈍ってんじゃねえか。これじゃ訓練にもなりゃしねえぞ。ほれ、ほれ」

 戦闘指揮官の男は、まるで隊員に稽古でもつけているように盗賊の首領を翻弄する。もうひとりの隊員も同じような感じで相手にもならない。


「そろそろ、訓練にも飽きてきたから少し速くするぞ」

 戦闘指揮官の男が言ったとたん剣のスピードが速くなり、盗賊の首領は捌ききれず後退し始めた。もうひとりの盗賊は利き腕を折られたのか、剣を捨て腕を抱えて西商人筆頭たちのグループに逃げ込む。


 剣が腕を切ったように見えたと思い、盗賊を切った隊員の男が盗賊を追わずコネロドの所に戻って来たので聞いてみた。

「盗賊の腕を切ったように見えたんだが、なんで切れてないんだ?」

 隊員の男は、お前素人かよと言い説明してくれた。

「剣は料理用の短刀じゃ無いんだから、それほど刃が鋭く無いんだ、野菜を切るようには切れないぞ。それに今のは当てただけだからな、打ち身程度じゃないか、切るつもりだったらもっと刃を立ててスピードのせてるよ」

 周囲を警戒しながら教えてくれた。

 なるほど、よくわかった。

「隊長の訓練のおかげで、俺たちの部隊は町で一番強いからな、一対一じゃ負けないよ」

 へえ、コネロド隊やるじゃないか。


 俺が説明を受けている間に、戦闘指揮官の男も盗賊の首領の剣を弾き飛ばし、顔面に拳を入れて西商人筆頭のグループに蹴り飛ばした。

「西商人の、貰ってくれ」

 と決め台詞を残しコネロドのところまで戻り俺に、どうだ俺様の演技は? って顔をする。

 あーはいはい、上手い上手い、パチパチ。


「口ほどにもない盗賊たちです、少しは訓練してはどうですか。全く手の掛かることだ、仕方ないですね、お前たち相手しなさい」

 西商人筆頭は部下たちに命令する。部下たちは野太い声で承知の返答をすると、剣を構え俺たちを囲むように歩き出す。


「それがお前の本性だな。最初から俺たちを騙ましてたとは不覚だ」

 戦闘指揮官の男は無用なほどの大声を出す。

 おっさん、もう少し上手く言質取れないもんかな。台詞も棒だし演技もぎこちない。

 そういえば、コネロドは一言も発していない。チラッとコネロドを見るが無表情だ。こんな大根役者とは一緒に演技するのは俺もいやだからな。


「ハハハハ、騙されるあなた方が愚かなのです。ここで亡くなってもらいますよ、盗賊に殺られてね」

「やっとわかったぞ。お前たちが俺たちを()って、盗賊のせいにするつもりだな」

「ハハハハ、本当に頭の悪い人だ、やっとわかったのですか」

戦闘指揮官の男は、もう良いですかね? とコネロドに合図し返事を待つ。

「十分でしょう」


 囲んで来る男たちに合わせて後退しなから、東側斜面に向かって大声を掛ける。

「ということだ、市民代表の、聞いていたか?」

 すると、東側斜面の木々から7人の男たちが剣や短槍を構えながら出てきた。

 その中の隊長らしき男が西商人筆頭に向かって大声を出す。

「貴様の所業しかと聞いたぞ。町を裏切るとは言語道断、市民代表のわしが許さん!」

 また髭面のむさいおっさんが出てきたなぁ。このおっさんのほうがよっぽど盗賊の首領に似合っているぞ。


「なっ!」

 西商人筆頭はびっくりしている。また、彼の部隊も俺たちを囲むを止め少し後退した。

「西商人の、これで互角だな。お前たちの悪巧みの証人も増えたし、観念したらどうだ?」

「ハハハハ、観念だと、観念するのはお前たちだ。首領、部下たちを呼び寄せろ」

 西商人筆頭が腕を抱えて脂汗をかいている盗賊の首領に命令する。首領は南側斜面に向かって怒声をかけた。


「てめえら、いいかげんにしねえか。もうそいつらの相手はいいから、登ってきやがれ!」


 盗賊の首領の怒声で、南側斜面の剣の交わる音が止み、男たちが斜面から登って来る。来たのは4人、コネロド隊の男たちだ。


「どいうことだ、てめえら、さっさと戻らねえか!」

 盗賊の首領はさらに怒声をあげるが、何の返事も音も聞こえない。

 戦闘指揮官の男が、西商人筆頭に優しい声で降伏を勧めた。

「西商人の、残念だがいくら呼んでも部下の盗賊たちは来ないぞ。捕まえてあるからな、なんなら気が済むまで呼んでみるか」

「ぐぬぬ」

「それに東側に足止めに来た盗賊も、わが隊がもう捕まえた頃だろう。その隊員がここに来たら俺たちはお前たちの2倍だ」

「……」

「もう観念したらどうだ、西商人の」


 西商人筆頭の隊の5人が急に西側斜面に走り出した。

「商人さんよ約束が違うぞ、悪いが抜けさせてもらう」

「おいっ、お前ら戻れ、金は払っただろう」

 離れた男たちは、そんな言葉には反応せず西側斜面を駆け降りて行く。コネロド隊の位置が悪く追いかけられず、みすみす見逃してしまった。


「もう終わりだ、全員を捕まえろ」

 戦闘指揮官の男が捕縛を命令する。


 ここからはあっという間だった。西商人筆頭の隊の隊長と副隊長は剣を取り抵抗したが捕縛され、他の隊員は剣を捨てて降伏した。盗賊ふたりは隙を狙って逃亡しようとしたが失敗し捕縛された。西商人筆頭はその間ただ呆然と次々捕縛されるのを見ていた。最後のひとりが捕縛されるのを見て西商人筆頭は崩れ落ちた。


 ◇


 俺は何もしなかった訳だが上手くいってよかったよ。途中でびびって動けなかったからな。やっぱり戦闘は恐すぎる。まだ、どきどきしているぜ。


 戦闘指揮官の男が俺に近づき言った。

「サブロー世話になったな、とても助かったぞ……それから俺の名前はガンギオモスだ、ガンオと呼んでくれ、これからもよろしくな」

 おお、おっさんの笑顔が眩しと思う日が来るとは……吊り橋効果じゃねえだろうな。


 俺はガンギオモスと握手しお互いの肩を叩きあった。

 こうして盗賊討伐は終わった。



陰謀の結末でした。戦闘指揮官の男は、眩しい大根役者でした。


次回、広がる噂

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