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020 えっ、3人も捕まったのか?

 ◇


「!」

(サブロー、きっと兄貴の男が褒賞金が一番高そう、私たちの服や食事の向上のためにも逃がさないで!)

 俺の諦めかけた顔を見たのだろう、ナビの思念が頭の中に響く。


(了解! 任せときな、ナビ、悪いがもう少し頑張ってもたせてくれ)

(こっちも了解、なるべく早くね)


 手下が来て、俺を持ち上げようとするタイミングで俺は全身の力を抜いた。

 どうだ、必殺タコタコの術!

 俺が子供のころ、場所を動きたくないときはこの術で親に対抗したものだ。外でやると放置されるので使用するときは注意が必要だがな。

 手下は持ちにくいのか、一向に兄貴と呼ばれた男のもとに俺を連れていくことが出来ない。どうだ兄貴と呼ばれた男よ。


「もういい、情けねえな、まったく、とっとと終わらせて戻んなきゃいけねえのによ」

 兄貴と呼ばれた男は、腰を上げ俺に近づくようだ。手下の男は足先で俺を小突き、舌打ちとともに後にさがる。


 よし、俺の勝ちだ。と思ってナビたちを見ると盗賊たちに捕まっているし。


(もう、捕まっちゃったの?)

(ムリムリ、か弱い女の子が盗賊たちとやりあえるわけないでしょ)

(いっしょに落ちるか? 怪我しないようにしてあるから)

(いやー、やめて、ドロンコになるのはいやー)

(ナビって泥とあんまり変わんないんじゃない?)

(服が汚れるでしょうよ、それは絶対いや!)

(……)


 そっちかよ、よくわからんがなんとかしないと。俺は兄貴と呼ばれた男に交渉した。

「兄貴さん、金の在処を言うから妹たちを解放してくれないか? 恐がりだから触られてるだけで泣きそうなんだ、素直に金のこと言うから」

「……」


 兄貴と呼ばれた男は少し考えて言った。

「おい、娘っ子どもを放してやれ! ……そら、放してやったぞ、金の在処をしゃべってもらおうか」


 よし、今度こそ勝ったな!

 ナビ、バレンナ、ラズリから盗賊たちが離れたのを確認して俺は兄貴と呼ばれた男に言ってやった。

「金の在処は……」

「在処は……って早く言わねえか! 俺たちは忙しいんだ」


「金の在処はあんたの足下に埋めてあるよ」

「はあぁ、本当か? ……ぐぇぶ」

 兄貴と呼ばれた男がしゃがんで土に触ろうとした瞬間、視界から消えた。表層の魔力を抜いて兄貴と呼ばれた男を落とし穴に落としたのだ。

 周りにいた盗賊たちが呆然している間に次々と落とし穴に落としてやった。最後のひとりを落とした後の俺の顔は土だらけだ、盗賊たちを視界に入れるために無理矢理動いからだ。うえっ、口の中がジャリジャリだぜ。


「みんな、大丈夫か?」

「なんとかね」

 ナビありがとうな、思念で会話出来るからリラックスして対処出来たぜ。

「ん、大丈夫」

 ラズリ大丈夫か、ちょっとづつ話すようになって嬉しいぞ。

「はい、大丈夫です」

 バレンナ頑張ったな、ラズリを良く守ったよ。


 辺りにできた落とし穴を避けて、3人は俺の側まで来て俺を見下ろす。

 あれ? ナビの眼には炎が、バレンナの眼には涙が、ラズリの眼には虚無が、どうしたのみんな?


「大丈夫かって聞いた? 大丈夫かって聞いたよね! ……もとはといえばサブローが原因でしょうが」

 ゲシゲシとナビは俺を足で踏みつける。

 痛い、地味に痛いから止めてくれ。


「もう兄さんとは呼びません、恐かったんだから、兄さんがぐるぐる巻きになってるし、盗賊たちに囲まれるし、捕まるし」

 バレンナもナビを真似てポフポフと俺を足で踏みつける。

 ごめん、ごめんよ、俺もなんでこうなったかのか、よくわかんないんだ。


「サブロー、ダメ兄貴、矯正」

 ラズリもふたりを真似てフミフミと俺を足で踏みつける。

 ダメ兄貴で申し訳ない。


 あぁ、少女たちの足で踏みつける痛みが快感に……俺、目覚めそう……ってなわけあるかー!


「みんなごめんよ、俺も何が起こったのかわからないんだ」

 ごめんよ、だから縄ほどいてください。みなさん、俺はミノムシじゃないよ。助けてー!


 しばらく、3人の少女が縄で縛られた男をゲシゲシ、ポフポフ、フミフミと足で踏み続けていた。


 ◇


 俺はバレンナのナイフで縄を切ってもらい無事解放された。足跡がたくさん付いているのはご愛嬌だ。

 体が自由になってまずは盗賊たちの始末をした、といっても妹たちに落とし穴範囲から外に出てもらい、表層の魔石を全て回収した後は表層を維持している魔力を徐々に弱め表層の土を雨のように落とし穴に降らせた。表層が無くなり盗賊たちが泥沼でもがいている隙に、泥沼の表層をカチコチに固めた。

 盗賊が汚ない言葉で俺たちを罵ったり脅したりするのでひとりひとり、かろうじて鼻で息が吸える程度を残し土を盛り固めてやった。

 いやー、盗賊たちが吠える吠える、汚ない言葉のボキャブラリーが増えちゃったよ、使わないけど。


「ナビ、こいつらの中に術者っていないのかな? いたら逃げられるかな?」

「大丈夫だよ、そもそも術者が盗賊しているってことはまれだと思うよ、魔法が使えたら真っ当にもっと稼げるでしょ」

 そりゃそうだ。


 ◇


 さて、ここからが本題だ。ナンデコウナッタノ?

「サブロー兄さん、うううん、サブロー……がなかなか町に戻って来ないので、心配になってナビ姉を探しに行ったの」

 もう、兄さん呼びはないのかな? 兄さん悲しくて涙目だよ。

「サブロー、よく聞く」

 ラズリよ、お前もか!


 とりあえず町に戻ることにした俺たちは、道々これまでの経緯を聞かせてもらいながら歩いている。

「ナビ姉とラズリを屋台で見つけて、サブローが帰って来ないので心配だから相談したの」

「バレンナはすごく心配してたんだよ、私がサブローは大丈夫だよって言っても」

「ラズリ、屋台の串美味しかったか? ナビとどっちがたくさん食べた?」

「ん、美味しい、ナビ姉、また行く」

 ナビさん、屋台の串焼き食べるのに忙しくて俺のことどうでもよかったんでしょう? って視線をナビに飛ばすとナビはあさっての方を向いた。おい!


「ラズリ美味しくてよかったな、今度は俺も連れてってくれ」

「ん、わかった」

 んと、それで続きはバレンナかな?

「みんなで、サブローを探しながら南端の村に行く道を進んだら、盗賊たちが集まって何かしているのを見つけたの、一旦は隠れたんだけどナビ姉が大丈夫だから行くよって……」


 ナビは頭をポリポリ掻きながら言い訳する。

「えーと、サブローの作った落とし穴の上にみんないるから大丈夫かなって思って出ちゃった、テヘ」

 テヘじゃねーよ、隠れた所から思念飛ばせばいいだろ! ジロ。

(サブロー、意識なかったら思念飛ばしても通じないからね)

(さーせん、ナビ姉)

(よろしい、サブローくん、よく勉強するように!)


 てくてくと歩くうちに町の西門が見えてきた。西門に大勢の人間が集まっているようだ。やっぱり今日が盗賊討伐の日のようだ。


 バレンナが経緯の続きを話してくれた。

「3人で出て行ったら、サブローがぐるぐる巻きにされてるのが見えて、サブローを放してって頼んだけど聞き入れてくれなくて」

「盗賊、当たり前」

 ラズリさん、的確なツッコミありがとう、そしてツッコミキャラ覚醒か?


「ナビ姉が起こせば全部解決するから大丈夫って、みんなで起きてって叫んだけど、なかなか起きてくれなくて……」

 バレンナが思い出して涙目になってきた。


「ごめんな、なかなか起きれなくて、バレンナが朝起こしてくれたら嬉しいぞ」

「うん、サブローを朝起こして」

「ダメだよ、バレンナ、サブローを甘やかしちゃ、サブローも甘えちゃダメだからね、むしろサブローがお兄ちゃんなんだから朝は一番早く起きなきゃ」

 なんでやねん!


 バレンナが俺を朝起こしてくれる約束をする前に遮って口を挟む。

「うん、わかったナビ姉」

 うむ、絶対俺よりナビのほうを上にみてるなぁ、挽回せねば。

「私たちはバレンナが話した通りだけど、サブローはなんでぐるぐる巻きにされてたの?」

「多分……」


「多分なに?」

「多分、朝早かったのと魔力切れで気を失ってたからかな」

「……」

 あれ、どうしたのかな、みんな白い目で見て? ……挽回できませんでした。

 俺たちは町の西門に着いた。

 



何とか盗賊たちを捕まえました。

サブローを兄さんと呼んでくれなくなりました。サブロー涙。


次回、(訪問者)鍋

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