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018 別の陰謀を企む者たち

 ◇


 あれから俺たちはパオースの町と塩の洞窟を何回か往復して、塩を運び約6トンほどの取引をした。

 パオースの町と南端の村の間は4人いっしょだったが、南端の村から塩の洞窟までの道ではバレンナとラズリは村のオドンに預けて、ナビとふたりで往復した。

 バレンナにはうらめしそうな目で見られたが、砂漠の民がどのように反応するか解らず危険ということで納得してもらった。砂漠の民が本当に存在するのかわからないが。


 彼女たちを村に残したのは、まだ俺の正体を教えることが早いと思ったからだ。ほかにも、ナビにいろいろ相談したかったこともあった。町で暮らすこと、魔法のこと、ラズリの目のこと、そして家に帰る方法についてだ。

 家に帰る方法についての話は、ナビはとにかく大丈夫だよの一点張りで、具体的な帰る方法の話はなかった。

 ナビは砂漠の神殿に着くと、ふらっと数日間いなくなったりした。塩の洞窟まで行き塩の積み込みを終えて村に戻り着くまでの間だが。

 俺帰れるのかな?


 ともかく、こうして俺たちは塩の取引で金貨240枚という庶民の年収20年分に相当するお金を得たのだった。


 ◇


 宿屋一階の食事処の片隅でこそこそと密談する4人組がいた。昼飯を食べながら話をしているが、時より大声を出し争っているようだ。


 お金の使い途に困った俺はみんなに相談したことが発端だった。

「みんな聞いてくれ、俺たちはちょっとお金持ちになった、どうしたらいいと思う」

 ってのが始まりだ。


「だから、ぱーて使おうよ」

「いやいや、何に使うんだよ」

「……」

 こいつ、ぱーて使いたいだけであんまり考えてないな。

「バレンナは何か希望ある?」

「……」

 悩んでる、悩んでるよこの娘、こりゃ、しばらく帰ってこないな。

「ラズリは?」

「いえ」

 家か、確かに魅力的だ、ずっと宿屋も気が抜けなくて疲れるんだよな。


「ラズリちゃん、グットアイデアだよ、家建てるならいい所があるんだ、絶対みんな気に入ると思うよ」

「ええぇ、ナビ、ぱーて使えるから言ってる訳じゃないよな」

「違うって、実は……があるんだよ」

 ナビは肝心なところを周りに聞こえないように、さらに声を小さくして言った。

「なにー!?」

 ナビの話を聞いた俺はびっくして大声を上げてしまった。


「「?」」

 バレンナとラズリは言葉の意味が分からないのか、キョトンとしている。盛り上る俺とは対称的だ。俺も小声で話す。

「本当か、ナビ、本当なんだな」

 ナビはしっかりと頷く。決まりだ、家建てます。


「で、その場所はどこなんだ?」

「それが困ったことに……なんだよね」

 ナビがまた声を小さくして、その場所を教えてくれた。

「なにー!?」

 また、大声で叫んだら腹にズドンと衝撃が来て俺はテーブルの下に這いつくばった。気絶できない調節された力加減だ、これはキツイ。


「サブローうるさい! 殴るよ」

 いやもうすでに、転がってるよ俺は。

 俺が呻いている間、ナビはふたりにそれがいかに素晴らしいものなのかを布教していた。その素晴らしさについては俺も異議はない。


 ◇


 ハイ、わたしめに良き考えがあります。

「サブロー、何か考えがあるなら言ってみなさいよ」

「ハッ、わたしめの拙い考えでありますが、元を絶つのが良いかと」

「……」

 ナビの沈黙を了解と受けとり俺は話を続ける。


「大商いで儲けたお金もった商人を盗賊が襲うが、商人に返り討ちにあったあげく拠点を放棄するというのはいかがでしょうか」

「そう簡単に襲ってくれるかな?」

「少しは皆さんにも働いてもらいます。数日間いろいろな所で買い物したときに、大儲けしたからお金持って村に帰えると言ってください、噂を流せば盗賊の耳にも入るかと」

俺は、ナビ、バレンナ、ラズリを順に見渡して言う。


「続けて」 

 ナビたちは俺の話に興味が出てきたのか身を乗り出して聞く。

「途中で襲われたら怖いなーということも合わせて噂を流すことでフラグを立てるんだ」

「フラグ?」

「そうさフラグさ、盗賊がこの話を聞けば、じゃぁ襲おうぜ、襲わなきゃ沽券にかかわるって思うはずだ、何もしなければ盗賊弱わって町の住民たちに思われるからな」

 ナビは目を閉じ沈黙している。

「……」


「サブロー兄さん、どうやって倒すの?」

 ナビが沈黙したことでバレンナが代わりに疑問をぶつけてきた。

「盗賊をまとめて落とし穴に落とすんだ、一網打尽だよ」

「でも、盗賊みんなで襲って来るかな?」

「そのために噂話の第二弾をばら撒くのさ、盗賊が怖いから傭兵を数人雇うかもって、そしたら盗賊だって人数集めて襲ってくるさ」


 ナビが目を開けて褒めてくれる。

「なるほどね、いいんじゃない、見た目は変だけどさすがサブローね」

「いい考えだろ、見た目は関係ないけど」

 俺はドヤ顔をしていたらしい、それが変顔だったのだろうか?


「じゃあ作戦の続きを話すぞ、数日間は西門まで行って出発するそぶりを見せて戻るのを繰り返す、それが一網打尽の秘訣なんだ」

「どうしてそれが秘訣なの?」

「盗賊たちは絶対俺たちを見張っている、そして町を出たところで襲うつもりだろう」

「それで?」

「数日間そういう行動を取れば、盗賊も合わせて襲う場所に待機するだろ、その場所さえわかればこっちのもんだ」 


 ナビがハッと気が付いたようで、俺の代わりに落ちを話してくれる。

「わかった! 盗賊が待機して襲って来る場所にあらかじめ落とし穴を作っておくのね」

「正解だ」


「盗賊を捕まえたら褒賞金もらえるって聞いたけど、あと武器防具も捕えた者の所有物になるって聞いたよ」

「そうなの? やる気が出てくるなぁ、そういうの」

「うまくいったら、美味しい物いっぱい食べようね、あと服も買ってね! なんなら、ほっぺにチューくらいしてもいいよ、ねっ、みんないいよね?」

「いい」

「えぇ……いいけど」 

 ラズリはいつもの表情だが、バレンナは少し赤くなって同意してくれた。

 やる気満々の俺は、ガッツポーズして宣言した。

「約束だぞ、俺がんばるよ、ナビ、バレンナ、ラズリ」

 

「よーし、今夜はみんな寝せないわよ、細かい所詰めるのよ」

「ナビ、悪い顔しているぞ」

「サブローには負けるよ」


 アハハハ、ウフフフと兄妹たちの笑い声が深夜まで続いたのであった。


 ◇


「ラズリ、私たちサブロー兄さんとナビ姉さんと兄妹になったけど、この先大丈夫かな不安になって来たよ」

「わかんない」

「そうだよね、でもふたりとも良い人だとは思うんだけど……」


 バレンナとラズリはふたりだけになるとよく話をしていた。村での思い出、これからのことを話すことで不安を和らげていたのかもしれない。

「サブロー兄さんは、お金持ちになったから欲しい物があったら言ってねって言うけど、欲しい物っていわれても困るよね」

「ん、食べ物、良くなった」


 ラズリが言うようにここ最近は食べる料理も、今までにない贅沢な内容に変わってきている。また、バレンナ、ラズリともに村から出てきたときの服ではなく、新品の服、下着や靴などを買ってもらっている。村で新品など着ている人などいなかった。

 生活が全然違ったものに変わっていくことに不安もあり期待もある。

「そうだね、何があっても、ふたりに付いていくしかないから……これからもよろしくね、ラズリ」

「ん、よろしく、バレンナ」


 小さな胸に大きな不安を詰め、少しでも前に進むように頑張るふたりの少女であった。



兄妹たちの企みでした。

バレンナはふたりの行動を不安に思っているようです。


次回、俺、捕まったの?

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