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016 俺、頑張るよ!

 ◇


 番屋に連れていかれた俺たちは自己申告の内容で入街証なる金属プレートを作ってもらった。

 プレートには、名前、歳、出身、職業の順で文字が打ち込まれている。


 サブロー、18、南の村、商人

 ナビ、16、南の村、商人見習い

 バレンナ、15、南の村、商人見習い

 ラズリ、14、南の村、商人見習い


 えっ、ラズリ14歳だったの、痩せてて小さいから10歳くらいかと思ったよ平だし。

 げっ、ラズリが俺を見ている。


 もっと大きくなれるようにたらふく食べさせよう、俺はぽっちゃり系が好きなんだよな。おーし、頑張って稼ぐぞー、絶対あの娘は大きくなるキリッ。バレンナには無い何かを感じるぞ。

 げっ、バレンナが俺を見ている。


 目標があると頑張れるよな。


 それにしても門番のチェックは甘い、自己申告って何だよ、ウソでもいいのか?

 門番との会話から推測すると、申告する内容はどうでも良く金属プレートを売る商売のようだ。無くしたらまた作れば良いとの話だった。


 入街証の金属プレート代ひとり銅貨5枚、入街料ひとり半銅貨1枚しめて銀貨2枚と銅貨2枚になりました。全額借りだけど。

 「おまえたち、次から町に入るときは、この入街証を見せてひとりあたり半銅貨1枚を支払え、町から出るときは無料だ、もう行っていいぞ」

 俺たちはやっと解放され自由になった。この場を離れ町を探索しながら東門へ行くことにした。


 ◇


 少しお金の話をしよう。

 この世界には、金貨、銀貨、銅貨がある。概ね銅貨10枚で銀貨1枚、銀貨10枚で金貨1枚と交換できる。ただし硬貨の質や種類によっては若干レートが異なる場合がある。

 硬貨には半銅貨というものがあり最少硬貨単位となる。この硬貨はちょうど銅貨の半分の重さである、ゆえに半銅貨2枚で銅貨1枚の交換となっている。

 半銅貨でリンゴ10個が買え、平パンが10枚焼いてもらえる。この地方ではパン生地は家庭で練りパン焼き屋に持ち込んで焼いてもらう、燃料を節約する市民の知恵である。

 王国の都市部と物価を比較すると、この町の近隣で生産される食品類や革製品は安く、王国などから流入する布類、武器など金属製品、魔法関連製品は高い。


 各硬貨については国家が、または鉱山を所有する貴族が国家から委託されて鋳造している。この硬貨の鋳造権は莫大な利益を生む、ゆえに鉱山をめぐる争いが絶えなく貴族同士の争いや国家間の戦争の原因となっている。

 また争いに備え武器を大量保有するためにも鉱山所有は欠かせないものとなる。そして争いになると流通が止まって一番困るのが塩である。塩は水とともに生命を長らえるための基本要素であるからだ。

  

 金貨よりさらに大きい取引の場合、国家、貴族や大商人たちはどのように金銭のやり取りをしているのか。すべて金貨で取引するのか、紙幣はあるのか、否である。

 大きい取引や遠隔地での決済では手形を作成する。金銭の授受を約束した証書だ。

 もちろん偽造などについては魔法の力を借り防止に努めている。


 もし手形の決済が出来ない場合は……身をもって清算することとなる。 

 

 ◇


「どうもありがとうございました。助かりました、コネロドさんによろしくお伝えください」  

 と俺は礼をいい、バレンナとともにコネロドの店を出た。ナビとラズリは店の前で留守番だった。

 

 東門付近で通行人にコネロドの店を聞き店を訪ねた。そして店の手代に西門での出来事を説明して塩を買い取ってもらい借りた金を返した。

 この辺の商家では旦那、番頭、手代、丁稚というランクがあり、町の門で出会ったコネロドさんは旦那さんだった。馬に乗っていたことでもわかるが東門界隈で一番の商家である。

 残ったお金は銀貨1枚になった。塩の値はいま急騰しており壺一つの塩が銀貨1枚銅貨6枚になった。 

 トニーに残りの塩が同じぐらい残っているので売れば銀貨4枚にはなりそうだぞ。手代さんにはまた売りに来ると約束したので問題ないだろう。

 

 ◇


 手元には銀貨が4枚ある。あの後トニーに戻り塩を回収して売ったお金だ。

「みんな、美味しい物でも食べて今夜は宿に泊まってのんびりしようぜ」

「ん」

「サブロー、たまにはいいこと思いつくじゃない」

 みんな喜んでくれたみたい。あれバレンナは?


 バレンナは悩んだ顔をして立ち止まっている。

「バレンナどうした、迷った顔して、とりあえず言ってみればみんな助けるから」

「そうだよバレンナ、思ったことは言ったほうが解決するよ」

「うん、サブロー兄さんとナビ姉さんは服を買ったほうがいいかなって思う、ラズリもそう思うよね」

「ん」


「ナビはともかく、俺はそんなに変じゃないだろ」

 なにげにナビをデスってみるがすぐに返された。

「サブローが可笑しくなかったら誰が可笑しいって言うのよ、サブロー自覚無いの? オドンも言ってたでしょ」

 ん、オドン? そういえば俺を見た目が悪いように言ってたな、俺って変な服装なのかな。


「俺ってそんなに変?」

「当たり前でしょ」

「ん」

「変だと思う」

 なるほど、みんな変だという意見なんだね、そうなんだ俺いじけけるよ、そんなにハート強くないし、でもここはキレルが正解だ。


「どこが変だっていうんだ、温厚な俺だって怒るぞ」

「「あたま」」

 あたまだと、顔が変だといいたいのか、ムキー。

「なに変顔してんのよ、帽子を巻いていないからじゃないの」

 なぬ、帽子?


「だから言ったじゃない、この地方の人、とくに耳有人から見ると頭を出しているのはヘソを出して歩き回っているのと同じだって、サブローだってヘソ出しの服装の男が近くにいたらイヤでしょ」

 また、ムッキムキのヘソ出しタンクトップの男をイメージしてしまったじゃないか。

「……わかった、服屋に行こう」

 俺たちは最初に服屋行き、そのあとで宿屋に行くことにした。



 服は意外と高い、綿花から糸を紡ぎ染色し布を織る、そして服へ縫製するまでのすべてが人の手による作業となるからだ。 

 庶民が買うのは基本的に中古品である、それだけ服は高価なのだ。


「悩ましいな、この貫頭衣と帽子で銀貨1枚か、ナビそっちはどうだ」

「こっちもズボンと帽子で銀貨1枚だって、意外と高いよ」

 

 バレンナとラズリが離れた場所で布地や服を見ているを確認しナビに近づき囁いた。

「おまえ別に買う必要ないだろ、映像で付け足せばいいんじゃない」

「甘い、砂糖より甘いよサブロー、映像は増やせば増やすほど使う魔力は大きくなるんだよ、いざって時のことを考えると映像でなく現物がいいんだよ」


「……ナビはただ欲しいだけじゃないのか」

 おい、目が泳いでるぞ、できない口笛を吹くんじゃない! 魔力の話は本当じゃないのか?


「さっき服屋の主人に聞いたんだけど、宿屋ってひとり銅貨5枚なんだって、だから高い服はもっとお金稼せいだらで」

「わかってるって、さて、どれにしようかなぁ」

 

 結局、俺は貫頭衣と帽子を購入しナビはズボンと帽子を購入することした。

 俺の購入したものは新品ではないものの、女子の意見を取り入れ小奇麗なものを選んだ。俺が選んだものはことごとく却下されたからだ。

 購入額は銀貨2枚だったが銅貨2枚を値引きしてもらった。俺が値引きを頼んでも半銅貨もまけないと言っていた主人が、ナビに言い寄られて頼まれたら即答でまけやがった。


 購入した服、帽子を身に着け宿屋に行った。

 事前に聞いていた通り宿屋はひとり銅貨5枚で1部屋借りた。部屋は8畳ぐらいの広さに木枠の2段ベットが3台があり他の家具などなかった。

 ベットは板張りになっていてそこに寝るだけだ、敷布や掛布などない。自分のマントなど掛けるのが一般的なようだ。もっと値段の高い宿には干し草にシーツをかけたベットなどがあるそうだ。

 夕飯と朝飯は付いていたが両方ともパンとスープのみだった。パンは硬くぼそぼそ、スープには何かわからない肉と煮込んだ野菜に足りない塩気。

 バレンナの料理はうまかったんだと改めて感じた、塩を振っただけの焼蒸した芋だったけど。


 もっと稼いで家を購入したいものだ。妹たちのためにも頑張るぞとベットに横になりながら俺は誓った。

 おやすみ妹たち、兄は頑張るぞ。



服を買い、宿に泊まりました。

サブローの思っていたイメージとはちょっと違ってたいました。

頑張りを決意。


次回、陰謀を企む者たち

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