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おまけ06 級友、い、ろ、は


い「おまえら、恨みっこなしだからな、それに一度だけだぞ、いいな」

ろ「ふんっ、お前こそ」

は「無論」


い「よし、いくぞ、……じゃん、けん」

いろ「「ぽっん」」


ろ「よっしゃあ、かちぃ、ワハハハ、正義は勝つ」

い「くっ、くそー」

は「是非もなし」


い「次だ、次いくぞ、じゃん、けん、ぽっん……ぐぬぬぬ、なぜだ。なぜ俺が敗ける。神は去ったのか」

ろ「ふっ、お前が坊やだからさ」

い「なんだとぉ、お前も同い年じゃねえかよ。よこしまなお前に言われても納得できねえ」


ろ「ふ、ふは、ふははは、歴史は常に勝者によって書かれるのだよ。歴史とは勝者の歴史、敗者のことなど誰も気にしない。ふははは」


い「ぬぬぬぬ、へっ、早くしろ? す、すみません。おいっ、早くしろっ、早く座る席を選べ、お待ちかねだ」


ろ「すみません。では、俺は一番奥で……妖精さんをでさせていただきます。……えっ、ええ、もちろん、お姉様のご質問にもお答えいたしたく存じ上げます。はい、これでも俺は紳士の端くれです。ノータッチはもちろんの事、視線も連続1分以内にて対応させていただく所存でございます」


い「何を訳のわからんこと、とっとと奥に入らんか、後が詰まっているんだ。俺の蹴りを受けろ、とうっ」

ろ「んげっ」


い「すみません、変な奴で。よし、お前はどうする」

は「拙者は姉上様の御前にて」

い「では俺が真ん中だな。先に入る……どうした、座らないのか」

は「姉上様の許しがあるまでは座れぬ……はっ、ありがたき幸せ、ご無礼つかまつる」


い「めんどくさい連中で申し訳ありません。……いえいえ、俺たちは構いません、どうせ、暇な休日ですから。さて、何を召し上がりますか……えっ?……えっ!?……わ、わかりました」


ピンポーン


い「すみませーん、注文お願いします」


い「俺にはこのコーヒーのケーキセットを。それから、こちらのお姉さんにはこのデラックス・スーパー・プリンアラモード・ザ・チャレンジを。……そして、こっちのお嬢さんには、……ここからここまでで……ええ、そうです。ここからここまで……」


い「お前らは勝手に頼め」

は「拙者はこのあんみつを。ん、姉上様、ご興味ございますか……これは和菓子と言うものでごさいます。洋菓子とはまた違った食感や風味が楽しめまする。……御意、これ店員、あんみつをふたつお願い致す」

い「お前は一体なに時代の人間だっ」


ろ「ぐぬぬぬ」

い「おいっ、後はお前だけだ、早くしろ」

ろ「ぐぬぬぬ、同じものを食べたいが、同じものを食べたいのだが……妖精さんは本当に食べるのか、これだけの量を? ぐぬぬぬ」


い「……店員さんとりあえず以上でお願いします。……お待たせしました。さて、俺たちに聞きたい話とは一体なんでしょう。うちの母親の話では三郎の母親から頼まれたからとにかくこの店に集合しろとだけで全然内容はわからずで。果たしてこの店に来てみれば、まさかのあなたと妹さんが待っていようとは。話には聞いていたのですがおふたりとも……」


ろ「この町で噂の妖精さんと同席できるとは、三郎が居ない間のホームステイとは聞いてますが、三郎が居ないことに感謝です。神にも仏にも正月にもお盆にも感謝を捧げます。ああ、俺は幸せだ、妖精さんが目の前にいるなんて、我が一生に悔いなし」


は「姉上様、我らにめいを、いかなる困難も打ち砕き果たす所存、さあ、遠慮なく下知くだされ。そして、もし、命を果たせなかった折はいかなる罰も受けましょうぞ。鞭だろうが、竹刀だろうが、縄であろうが、この我が身にて。はあ、はあ、はあ」


い「こら、お前ら、やめんか。おふたりもと引いているだろう。えっ、かまわん? 俺たちの行動は面白いと、だから気にしないと、ですが妹さんはさすがに気に……していないだと。というか、俺たちに興味がまったくない様子」


ろ「馬鹿野郎、お前には分からんのか。このアンニュイな妖精さんの姿、この儚い中にこそ妖精さんの神秘があるんじゃないか。実体がありながら存在さえ疑わしいこの神秘性は、普通にかわいいだけのロリでは表現できん。俺たちは妖精さんのおかげで神秘の世界をこうして体験できるんだ。いのれ、おがめ、あがめろ、疑うな、俺たちにできることはただひとつ、それは、妖精さんを愛でることだ」


は「そうじゃ、そうじゃ、お主は何もわかっとらん。拙者らに向ける姉上様の関心のない瞳、単なる物を見るような瞳、しかし、それは本質を見抜く瞳。拙者の心の鎧をさえ一目で粉砕し拙者を従わせる強者。そんな姉上様に尾を振り、身も心も任せることになんの躊躇があろう、いや、まったくない」


い「……あのう、こんな俺たちでもまったく問題ないと……ありがとうございます。す、すみません、少し涙が……おっ、さっ、さあ、注文の品が来ました。食べてください、食べてください」



は「ははっ、それはよろしゅうございました。お気にめしていただき恐悦至極に存じます。では、お持ち帰りいたしますか? ……しばしお待ちを」


ピンポーン


は「これ店員、あんみつを持ち帰りとしたいのだが、……なに、できぬと申すか。なぜだ、なぜできぬ」


パコーン


い「こら、無茶言うな。すみませんね、無茶言って、下がってもらっていいです。すみません」

は「待て、それでは」

い「うるさい、お前は黙れ。早く行ってください、……いいです。後はこちらで黙らせるので……まったくお前は……ほら、お姉さんもいらないと言っているじゃないか」


は「姉上様、申し訳ございませぬ。拙者の力が足りぬばかりに。残念至極。この責はいかようにも受けましょうぞ」


い「おいっ、お前のことなどどうでもいいみたいだぞ。見よ、一心不乱に戦った後の彼女たちの姿を、けだるげな肢体、わずかに上気した頬、艶やかな赤い唇、そして、潤んだ瞳。だが、ふたりとも、彼女たちと目を合わせちゃダメだ。目を合わせたら吸い込まれてこっちに戻れなくなるぞ。っておいっ、ダメだ、ダメだ、戻って来いっ」

ろ「俺はもうどうでもいいんだ。俺は妖精さんの世界で生きるんだ。邪魔しないでくれ、放っておいてくれ。ただ俺は妖精さんを愛でたいだけなんだ」

は「拙者も悟りを開いたぞ。この世の……」


い「あああ、聞きたくない、聞きたくない。お前らの話しを聞くとこっちまでおかしくなりそうだ。俺はこれでもまともなんだからな。うっ、うるさいと、ごめんなさい、ごめんなさい。この後いかがしましょう」


い「……えっ、もう帰る? もう、お腹いっぱいになったから帰ると言いましたか。えぇと、今日我々から話しを聞くと言うのはよろしいのでしょうか。……はあ、今日はいいと、日を改めて連絡するから今日のは延期。えっ、延期ですか、まあ、我々は構わないですが、なあ」

ろ「もちろんです。延期がいいです。延期にしましょう。絶対、延期です。その日がくるまで崇めて待ってます」

は「承諾、快諾、延期に賛同、では次回まで腕を磨いておきまする」


い「お前たち……」


ろ「あっ、お金は結構」

は「我らが後程のちほど払いまする」

ろ「俺たちの気持ちですから」

は「拙者たちの心意気を汲んでくだされ」


い「……」


ろ「ああ、幸せです、嬉しいです」

は「ありがたき幸せ」

ろ「お気をつけて」

ほ「お達者で」


い「……」



ろ「……」

は「……」

い「……つかれた」


ろ「し、しまったぁ……でもいいか」

い「ど、どうした、急に大声を出して」

ろ「いやな、折角だから妖精さんの写真を取れば良かったなと思ってさ」

は「不覚」


い「だが、あんまり悔しそうでもないな」

ろ「まあな、また会えるというのもあるんだが、……妖精さんを写真に残しちゃダメかなと思い直したんだ。写真を撮ることは妖精さんを汚すことになるんじゃないかとな、だから俺は心のアルバムにたくさんの妖精さんを残すんだ」

は「同意」


い「……お前ら……」


い「今日は一体何だったんだ。これと言って彼女たちと話しをしたわけでもなく、食ってお開きだからな。俺たちに何を聞きたかったのやら」


ろ「馬鹿もん」

は「この、痴れ者が」

い「なんだとっ、お前たち何の話なのかわかっているのか」


ろ「当たり前だ。いいかよく聞け。妖精さんたちは三郎の家にホームステイしているんだ」

い「そんな事はわかっている。それがどうした」

は「だから三郎の話に決まっておろう。ふんっ」


ろ「わかってない奴だ」

は「何もわかっとらん」


い「ぐぬぬぬ、お前たちに言われると何だか無性に腹が立つ。次回お呼びがかかったら召集をかけるからな、拒否はなしだ。本当に三郎の話か確認するからな」


ろは「「おうっ、望むところだ」」





三郎の世界の級友たちの話。その事は王国編へとつながるか。


次回のおまけ、〇〇〇


し、しまった。構想をまとめていたら別の話を思いついた。うーん、どうしよう。

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