おまけ04 コネロド
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……
はい、サブロー君とナビさんたち兄妹に初めて会ったのは町の門のところです。彼らは金がなくて入街できず困っているときでした。
その時の私は、町の南にあった小山に陣取っていた野盗たちがパオースの西にある農村を襲ったと聞き、事後の視察に行く用事があったのです。
今、思い出してもサブロー君もナビさんもおかしな格好をしていたのです。ひとめでこの地方の人間ではないとわかりました。ですが、それが目を引いたのでしょう。
パオースは開かれた町、東西交易を主な生業としている町なのです。商品を持って訪れた者を追い返したとなると町の存亡に関わる話となります。そこで私は、サブロー君が商品だと言う塩を買い取ることにしたのです。
単なる気まぐれだったのかもしれません。野盗たちが荒らし回っていた時期だったので、少しでも困っている人間を助けたかったのかもしれませんね、ほぉっ、ほぉっ、ほぉっ。
出会ったあとのサブロー君たち兄妹の活躍はご存じの通りですよ。今では彼らは新しい村、いやもう町といっていい規模ですが、町へと拡大を続けているサーナバラの領主一家です。最初は野盗たちの拠点が欲しいとのことで、いったい何をするつもりなのかと思ったものですが。
いやはや、サブロー君には一本取られました。まさかあのような物があの小山に眠っていようとは。ですが、所有者がサブロー君でよかったと思います。貧富の分け隔てなく、いや、貧しい者にこそ丁寧に扱いっているのですからね、サブロー君らしいかもしれません。
おや、その菓子がお気にめしましたか。それは、ナビさんの意見を取り入れた菓子でございます。
我々男でも甘味が好きな者はいますが多くはありません。ですが、この菓子は塩味です。ほどよい塩加減とカリッとした食感、これと酒さえあればいうことはないと多くの男たちは言うに違いありません、あなた様のように。
……
さて、そろそろ本題に入りませんか。
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いえいえ、私は小さな町の一介の商人です、王国の政治のことは全く存じ上げませんよ。
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ほほう、なるほど、そのようなことを王国は恐れているのですか。ですが、それは買い被りと言うものですよ。この町にはそんな力はありません。
……
王国貴族軍と一戦を交えて退けたではないかとおっしゃられても私どもは何とお答えしたらよいか皆目見当もつきません。
……
なるほど、おもしろい提案です。ですが仮にパオースとサーナバラがたもとを分かちこの地域の覇権を争ったとしましょう。その場合、我々パオースの町は数日、いや数刻のうちにサーナバラに降伏することになるかと思います。あなたもサーナバラ温泉にあった、あの塔の上で見たはずです、パオースの町の風景を。サーナバラはあそこからパオースのすべてを破壊できるのですよ。
あなた方のご提案はとても魅力的ではありますが、パオースの町を破壊されては元も子もありません。残念ですがここでの話はなかったことにしましょう。
……
ええ、では、あなた様の主によろしくお伝えください。
パッン、パッン
手代さん、塩菓子をお客様に包んでくれますか。
コネロドへの訪問者のSSでした。その訪問が王国編へとつながるか。
次回のおまけ、〇〇〇
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