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111 フィナは見ました。

 ◇


 フィナは見ました。見てしまったのです。

 奥方様、奥方様、大変です。旦那様が浮気をしています。


 あれっ、この屋敷に奥方様はいないか。じゃあ浮気じゃあないですね。気が動転してしまいました。ハハハハ……


 いえ、浮気です。フィナはあれを浮気と断定します。だって狡いじゃないですか。ソルさんは確か3番目のはず、フィナは5番目ですが全然順番が回ってくる気配がありません。


 それに、バレンナ様、ラズリ様、トアさんとは何も無いように感じます。いえ、何もありません。フィナの女の感がそう告げています。


 どうして、ソルさんだけ……ハッ、サブロー様がロリコンと言うのは仮の姿、本当はやはり大きい胸の人が好きなのでしょうか?


 バレンナ様、ラズリ様、トアさん、フィナ……みんな残念さんです。きっと、みなさん大器晩成型のはずです……きっと。


 やっぱり、これは浮気です。裏切り行為です。ちゃんと順番を守るべきではないでしようか。サブロー様に苦情を言いましょう。でも、サブロー様は素直に苦情を聞いてくれ改善してくれるでしようか。少し不安です。


 あっ、そうだ。こんな場合は大御所のナビ様に相談しましょう。ドラゴンのことさえ恐れないナビ様だったら、何か良い知恵を授けてくれるかもしれません。


 フィナは、調理場の片隅から出ます。ソルさんにじっと見られたときはドキドキしました。ひょっとして、ソルさんはサブロー様といっしょに部屋に行くことを自慢していたのでしょうか。悔しいです。さあ、ナビ様の部屋に向かいましょう。まあ、小腹が空いていますが良しとします。


 ◇


 トントン、トントン


 ナビ様の部屋の扉をフィナは叩きます。しばらく待ちますが一向に返事はありません。フィナはナビ様から何かあったら起こして良いからと言われているので、扉を開け部屋の中へ入いろうと思います。


 手に持つ光の魔石を頼りに、ナビ様の天蓋(てんがい)付きのベッドまでたどり着くとナビ様が寝ていました。


 ナビ様は、それはあんまりですというぐらいの寝相で寝ています。掛布はベットから落ち、シャツと短パンとナビ様が呼んでる寝間着は大きくはだけ、お腹を出して大の字で寝ています。


 ナビ様、日頃からお姫様になりたかったのにと言っているではないですか。こんな寝相では夢のまた夢ですよ。


「ナビ様、ナビ様、起きてください。大変な事が起きています。ナビ様、ナビ様」


「う、ううん、起きるよ、起きるから。だから寝させて。くかー」

「ナビ様、お腹が冷えますよ。ひゃあ」


 フィナはナビ様のお腹にシャツを戻してあげようとして、ナビ様のお腹に触ってしまいました。冷え冷えのお腹です。白い肌といい、これで反応がなかったら死体ですよナビ様。女の子はお腹を冷やしてはいけません、フィナも良くお母さんに叱られました。


「ナビ様、ナビ様、起きてくさい。サブロー様が浮気しています」


「起きる」

 ナビ様がピンと上半身を起こしました。きっと頭の上に光の魔石があったらピカッと光った事でしょう。


「フィナちゃん、詳しく教えて」

 ナビ様の目が猫目になっています。きっと好奇心を刺激する話と思っているのでしょう。これは、早まったかもしれません。


「はい、実は先ほど小腹が空いたので何か食べようと調理場に行ったんです。そしたら、そこにサブロー様とソルさんが先にいて話をしていたんです」


「何の?」

 ナビ様は、ベッドをポンポンと叩き座れと手招きします。フィナは座ってナビ様に話をします。


「ソルさんが、生めるって言って、サブロー様が、ソルが望むなら俺も協力しようって言っていたんです」

 フィナはナビ様に話すうちに、なんだか腹が立って来ました。


「他には?」

「ソルさんが今夜お願いしたいと言って、サブロー様が出来るまで頑張るかって」

「ふーん」


 ナビ様は順番待ちしていないから、興味がないのでしょうか。フィナは頑張って、臨場感が出るようにサブロー様の物真似をしてみます。


「そのあと、サブロー様は「凄く魅力的だぞってソル」って誉めていたんです。確かにソルさんは、羨ましい体ですけど」

「うーん、難しいな」


 何が難しいと言うのでしょう。


「で、サブロー様はソルさんを、「ここじゃあなんだから俺の部屋でやろう。出来るまで頑張ろうな」って言って、ソルさんを部屋に連れていきました」

「ダメか。なかなか良い台詞が思い浮かばないな」


 ナビ様は、頭をひねって何やら考えているみたいですけど、絶対に別のことを考えているに違いありません。やっぱり、バレンナ様の所に行くべきだったのでしょうか。


「ナビ様、何がダメなんですか?」


「うん、落ちがないんだよ。言ってみたい台詞とか思いつかないし、なかなか良いシチュエーションなんだけどね。話の落ちが、落ちが、思いつかないんだよ。あれっ、フィナちゃんどこ行くの。とりあえず私も付いて行くよ。面白くなるかも知れないから」


 フィナがバレンナ様たちの部屋向かうと、ナビ様も付いてきました。ナビ様はダメダメです。


 バレンナ様とラズリ様は同じ部屋で寝ています。たくさん部屋があるというのに仲がとても良いのです。扉を叩いてみるものの返事はないので、ナビ様といっしょに部屋に入ってふたりを起こしました。


 ふたりにもナビ様と同じ話をするものの、反応が鈍いのです。ラズリ様は上半身を起こしているのに、コクリコクリと舟をこいでいます。ふたりもダメです。


「あれっ、フィナちゃんどこ行くの?」

「ナビ様もダメ、バレンナ様もラズリ様もダメダメです。もう、こうなったら4番手のトアさんしかありません」


 フィナは、ぞろぞろと付いてくる領主一家とトアさんの部屋に押し掛けて同じ話をします。


「フィナちゃん、私が4番目って話が良くわかっていないんだけど」

「良いんです、そんな細かいことは。全てはサブロー様が悪いんです。順番を守らないから。もうみなさんの力はあてにしません。フィナが乗り込みます」


 フィナがそう言ってトアさんの部屋から出てサブロー様の部屋に向かおうとすると、ぞろぞろと4人が付いてきます。その時、バンと何かを叩きつける音がしました。ダメですよ、夜ですから扉は静かに閉めてください。


 サブロー様の部屋に着き、ドンドンと部屋の扉を叩きます。ひとり一個づつ光の魔石を持っているので周りがとても明るくなっています。しばらく扉は開かないかと思っていましたが、すぐに扉が少し開きソルさんが顔を覗かせます。


 ソルさんの顔は紅潮していて、ベビードールという寝間着から肩が出て乱れています。なんという色っぽさでしょう。フィナも頑張らなくては。


「サブロー様はいますか?」

「あ、ああ」


 珍しくソルさんが目を背けました。何かやましいことをしていたに違いありません。


「部屋の中に入れてください」

 フィナは言うやいなや扉を開けて部屋に踏み込みました。フィナの後から4人も入ってきます。


 ベッドの上にサブロー様がいません。全裸のサブロー様が。


 ベッドの上や下を探してみましたがサブロー様はいません。おかしいです。


 おやっ、みなさんどこを見ているのでしよう。みなさんの視線の先には……サブロー様が足を天井に頭を床に向けて泡を吹いて倒れています。まるで壁に叩きつけられたかのように。


「ん、魔素が濃い」

「あれっ、ソル、魔素を生めるようになったの?」

「ああ、主に教わった気功というもののお陰で、魔素を産み出せ使えるようになった。お陰で身体強化も魔法も使えるようになった」

「ええぇ、凄いよソル。身体強化を教えて」


「もう、目が覚めちゃったから。眠くなるまでお茶しながらソルの話でも聞こうか」

「じゃあ、お茶をいれますね」

「トアちゃん、ついでにこの間のクッキーも出して」

「ん、賛成」

「ダメだよ。ナビ姉、ラズリ、夜に食べたら太るよ」

「バレンナ、サブローはぽっちゃりさんが好みだよ」

「……」


 フィナ以外のみなさんは食堂に行ってお茶をするようです。


「ソルさんが魔素を生める……出来るまでやろう」

 フィナは、サブロー様とソルさんの会話を思い出します。おかしなところはありません。


「フィナちゃん、行くよ」

「はいっ、フィナも行きます」


 フィナは、サブロー様の部屋から出てみなさんを追いかけます。




サブローは泡を吹いて倒れています。ソルがバージョンアップしました。ちなみに夜の領主館にサブロー以外の男はいません。ある意味、ハーレムなのですが……


次回、領主をやっているサブローです

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