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011 バージョンアップ

 ◇


 俺は、オドンの言うことがまったく理解できなかった。詳細な説明を要求する!

「オドンさん、詳しく教えてください」

「バレンナもラズリも肉親が亡くなっていてな、これまでは代々の村長が代表で世話をしていたが、この子たちのことは、なんでも二の次になってしまってな」


「……」

「二人には食いもんも満足に与えることも出来ず、ラズリは目も悪くさせちまった、ふたりには申し訳なくてな」

 俺は黙ってオドンの話を聞く。


「村は盗賊との戦いになる。そのとき、この子たちはどうなるかわからねえ、昨日の夜、長老たちと相談したんだが、おまえさんに預けてはどうかって話になったんだ」

 バレンナはさらに視線に怒気を含ませ睨んでくる。

 絶対この子嫌がってるよね? ちょっと怖い。


「バレンナは嫌がっていたんだがわかってくれてな、おまえに預かってもらったほうがこの子たちが幸せになれるんじゃって思ってる。どうだサブロー頼まれてくれないか?」


 えー、責任重大じゃねーか! 重いよ!

「そこまで俺を信用していいんですか? ふたりを売っちゃうかもしれませんよ?」

「ガハハハ、それは心配ない、おまえさん自分を売ってもこの子たちのことは売らんだろ、俺はわかる」

 そんなに出来た人間じゃないよ! 俺はいつも不安だし、逃げるし、自分が心配だわ!


「少し考えさせてください」

 俺は空を見上げ考えてる振りをした。


(ナビ、どう思う? 自分のことで精一杯なのに)

(いいんじゃない! リアルハーレムルートの分岐だよ、フラグ立てないでどうすんの?)

(お、おまえどこでそんなこと覚えるの?)

(私だって日々勉強して成長してんだよ)

 俺の世界の文化だぞ。俺の頭の中覗いてんのか? いゃー、嘘と言って!


(いいんじゃないって言うけど、この村に着いて一息ついたけど、俺、生活力ゼロだぞ!)

(でも、何も持ってないのに今日まで生き延びたでしょ、すごいことと思うけど?)

(そ、それはナビが居てくれたから……)

(じゃあ、私がいるから大丈夫じゃない?)

(……)


 そうだな、何かあったら戻れるようにしておくか。おし、決めたぞ!


「オドンさん、わかりました、ふたりを預ります」

「おお、預かってくれるか、よかった、よかった」

「でもひとつだけ条件があります」

 オドンがなにが不満なんだという目でみる。なんで?


「俺がヤバクなったらふたりをこの村に戻しますから、受け入れてほしいんです」

「なんだ、そんなことか、あたりまえじゃないか! 離れても俺たちの村の娘なんだ、俺が約束しよう」

「よかった」


 俺は、バレンナとラズリに向かい合い、少し屈みなるべく不安を与えないように言った。

「俺の名はサブローだ、これからいっしょに生活することになったけど、よろしくね」

「「……」」


「これからは兄と妹として家族になるんだ、遠慮なく思うことを言ってくれ、俺はまだまだ力不足だけど妹たちのために頑張るから」

「「……」」


「それから呼び方だけどサブローって呼んでくれればいいよ、勿論兄さんでも兄様でも歓迎だぞ!」

「「……」」


(サブロー、なにやってんのよ、退かれちゃってるじゃない、ちゃんと挨拶しなさいよ)

 やべえ滑った。こりゃ前途多難だな。


 ◇


 お互いに準備のため一旦別れて、準備ができたら広場に再集合するとした。

 村の外に出てトカゲゴーレムの所に戻った。

「なんだか大変なことになっちゃったな、大丈夫かな俺?」

 などとぶつふつ独り言を吐いていると、目の前にダイヤモンドダスト状の光の粒が現れては人の形に集まってナビの姿になった。

 いつも、無駄に格好いいな。


「サブロー、魔石何個持ってる?」

「ん? ええと……ぜんぶで12個で内9個は充填済、充填済の内トカゲゴーレムに2個使ってるけど」

「じゃあ、2個ちょうだい」

「いいけど、どうすんの?」

「地面に置いたら、ちょっと下がってくれる」

 うん、と返事して魔石2個を地面に置き後に下がった。すると、ナビが光の粒になり残像を残しながら消えてしまった。

 体にだるけを感じたかと思ったら、魔石が地面に吸い込まれた。


 そのまま、何が起こるのかと見ていると地面が盛り上がると人の頭に形が変わり、さらに光の粒が呼び寄せられたと思ったらナビの桜銀色の髪になった。徐々にナビが地面から生えてくる。サンダルまで出現すると左手を腰に当て右手で俺を指して言った。


「どうよ!」

 どうよ! ってどうよ。仕方ない付き合ってやるか。

「おお、すごい、すごい、パチパチ」

 義理で手を叩く。ナビは凄い速さで右手を引いたと思ったらすぐに突き出して俺の腹をぶち抜いた。


 ぐえっ!? 俺は地面に倒れ悶絶した。

 ナビは両手を腰に付け胸を突き出して言った。

「どうよ!」

 ナビ(物理、ゴーレム)のデビューだった。


 ◇


 魔石を差し出し、魔力を取られ、腹をぶち抜かれて、妹がチートなりました。おしとやかな妹設定だったはずなのに解せぬ。


「ああ、空が青いな」

 木々が少ないので視界いっぱいに雲ひとつない空が広がっている。

 俺は目を覚ましたがまだ起き上がる気力が湧かないので仰向けで寝ている。腕で日差しを遮りながらナビに疑問をぶつけた。


「そういえば、ナビって魔法使えなかったよね、ナビゴーレムって魔法で作ったんじゃないのか?」

「うん、魔法じゃないよ」

 ナビは俺の頭を指でつんつんしながら答えてくれる。しゃがんでいるから視線をずらすと生足が見えるんだよね。ふくらはぎだけど。


「魔法じゃなかったらなんなん?」

「んん、秘密かな? でもサブローが使かった魔法はほぼ再現できるよ魔石がいるけど」

 なるほど、わからん。でもナビゴーレムは作れると、いつものナゾ仕様だけど俺の魔法を再現できるとはいいこと聞いたぞ……メモメモ。

 はっ! それで、俺に魔石ほれほれをやらせてたのか! なぞはすべて解けた!

 ぐだぐだと妄想に耽っている間にナビは立ち上がって俺の脇腹を足で小突いた。

 だから見えそうだってーの! ゴーレムだけど。 


 なんとか気力が回復するとナビに次の仕事が申し渡された。

「サブロー、いつまで寝てんの? つぎはトカちゃんのバージョンアップだよ!」

 なぬ?

「かよわい女の子が三人も旅に加わるんだよ! まさか、ずっと歩かせるつもりじゃないよね」

 拳を握らないで! 拳で語らなくてもわかります。俺は理解早い男です。ってかナビ、おまえは疲れないだろ! 俺が疲れても! とはつっこまないよ。


「よし、もう少し大きなトカゲゴーレムにしよう、四人乗れるぐらい」

「なまえ、どうしよっかなぁ」

 とナビは暢気に考え込み初めた。

 さて、どうしようか?


 ◇


 トカゲゴーレムのバージョンアップのレシピ


 ・トカゲゴーレムから卵を取り邪魔にならない所に置きます。

 ・壺も取り外し卵の横に置きます。この際、水や食料をこぼさないよう注意します。

 ・塩を入れた土箱は取れないので、魔石を箱の上に置き、箱に四足が生えた箱ゴーレムにしてトカゲゴーレムから分離させます。

 ・箱ゴーレムをトカゲゴーレムの尾を経由して卵の所まで自走させます。尾の先端は細いので手を添えてあげます。

 ・魔石4つをトカゲゴーレムの額に埋め込み魔石を合計6つにします。

 ・魔力をトカゲゴーレムに込めて、周囲の土を取り込み8mぐらいの大きさにします。この時ひとり用の座席などを吸収させると良いでしょう。

 ・前足からトカゲゴーレムに上れるよう足場を作ります。

 ・足場から上った位置の前後に二席づつ座席を作ります。二席の間に人がなんとか通れる隙間を空けておくと便利です。

 ・席には転落防止のため肘置きと足置きを付け加えましょう。

 ・トカゲゴーレムの前足と後足の間の腹の部分を空洞にしトランクスペースとします。サイドから物の出し入れが出きるようサイドスライドドアにします。

 (注)自重が大きいと維持魔力が沢山必要です。強度や武装に問題ない程度に空洞化しましょう。

 ・卵、壺、塩箱をトランクに収納したら完成です。塩箱ゴーレムから魔石を回収することを忘れないでください。


 ◇


 俺は塩箱ゴーレムから回収した魔石をトカゲゴーレムの額に埋め込んだ。これで魔石7個だ。三日間ぐらいなら無充填稼働できるかな?

 かなりだるいがこれで準備は終わりだ。

「ナビ、トカゲゴーレムのバージョンアップ終わったぞ、名前決まった?」

「トカゲゴーレム2号、略してトニー、どうよトニー?」

 もう、どうよネタから離れようよ、パンチが飛んできそうで怖いです、プチトラウマになってます。


「トニーかあ、なんかゴーレムの名前ぽくないが、そこがいいかも」

 どうだ?

「でしょう、なかなかのセンスでしょう」

 そうだなと相槌を打つ、俺の反応は合格らしい。


 ナビと俺はトニーに乗って村の入口まで行くことにした。




バレンナとラズリが妹になりました。

ついでにナビが物理になり、トカちゃんがトニーにバージョンアップしました。


次回、(訪問者)訪問者

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