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105 部隊編成

 ◇


 俺たちの面談も終わり、サーナバラ領主家の就職イベントは終了した。


 領主家で採用した者たちは約300人。相当な人数となった。サーナバラ村に住みたいと言って来た者たちも入れると、サーナバラ村の人口は800人を超える規模になりそうだ。戦いの前の約3倍だ。


 衣食住の全てが足りない。またブラックな領主家に戻ってしまった。と言っても働くのは俺とホスバだ。頑張れ男の子とナビは言ってくれたが限度があるよ。


 俺は、新しい部下を連れて仕事に邁進する計画だ。宅地造成、田んぼ造成、カエル捕獲と捕獲場増設、湿地帯より南側の土地灌漑、板ガラス製造、ガラス食器製造、石切そしてレンガ型への分割、植樹等々、そして底なし沼の戻し作業。

 ああ、そうだ。ヨーマイン太守がやって来たら接待もしなきゃ。


 俺って領主……いや、もう何も言うまい。


 俺は、宅地造成から手をつけ始め、領軍と大工の棟梁と連携して増えた住民の住居から作り始めた。


 ◇


 古参の領軍メンバーが集まっていた。私とソルとオドンたちを合わせて7人だ。私は、みんなに向かって話を始めた。


「みなさん、面談お疲れさまでした。おかげて領軍は240人を超えました。サブロー兄さんにも言われたんだけと、軍を部隊編成したいと思います」


「そうだな。こんだけ人数が増えたんだ。うまく指揮しないと大変なことになるな。だが、どんな風にするんだ。俺もその辺はよくわからないぞ」


 オドンが言うと他の者たちも同意を示す。


「うん、サブロー兄さんに聞いてきたよ。10人一組を小隊として部隊編成するんだって」

「何で10人なんだ?」


 私は両手の指を広げてオドンに見せ答える。

「ちょうど良いんだって」

「なるほどな、指で小隊のみんなに指示が出来る訳だな。親指は小隊長と副小隊長ってところか」


 あっ、私も今わかったよ。サブロー兄さん凄い。


「そして、3小隊で中隊なんだって。古参領軍のみんなには中隊長をやってもらうよ。給金も上がるよ」

「「「「えっ」」」」


「良かったなお前ら、小隊が3つだから30人の部下持ちだ」


 オドンが古参領軍の4人の肩を叩き回る。4人もお互いに肩を叩き合う。嬉しい顔をしている。


「オドンさんも中隊長だよ」

「おっ、そうか俺もか。おし、やるぞぉぉ」

 オドンが雄叫びを上げるとみんなが笑った。私も嬉しい。みんなの笑いが収まったのを見計らい話を続けた。


「サブロー兄さんが言うには、3中隊で大隊って言うらしいんだけど、まだそこまでは早いだろうって」

「そうだな。組織を作り過ぎても、みんな急には馴染めないからな。まず、小隊、中隊ぐらいで十分だろ」


 オドンが良いって言ってくれたのでひと安心だ。私はほっとした。


「良かった。それで中隊は6隊作るんだって」

「6中隊? なんか人数が合わないような。ええと中隊が30人だから、30、60、……」


 オドンが指折り数える。オドンの計算が終わるより早くソルが答えを出した。 


「180だ、オドン。6中隊で180人だ。軍は240人と言っていなかったか、60人合わないぞ、バレンナ」


 ソルが計算した人数差を私に聞いてきた。オドンはまだ自分の指を使って数えている。


「うん、私も合わないことをサブロー兄さんに聞いたんだ。そしたら、私を守る親衛隊と強力な魔法を使う者たちを集めた術者隊を作って、あとは事務と料理の予備部隊だって。ただし、予備部隊にはサーナバラ商会の商隊護衛をしてもらうって」


「なるほど。親衛隊と術者隊は女たちが主力だな。そして、予備部隊は腕の劣る者や見習いや引退を考えている者たちの仕事にする訳だな。ソル殿も中隊長なのか?」


「いや、我は中隊長ではない。バレンナの側近だ」

「じゃあ、もう一人の中隊長は誰なんだ。まさかバレンナがやるのか。領主の妹だぞ」


 アハハハ、違うよと私は手を振りながら軽く笑った。中隊長については私じゃないけど、オドンの言う事も合っているし、ソルの言う事も合っている。中隊長はソルであり、ソルじゃない。


「違うよ、オドンさん。私は中隊長じゃないよ。サブロー兄さんが私はサーナバラ領軍の象徴だから、みんなの意見を聞いて認める係りなんだって言ってたの」


「よかった。領主の妹が最前線で剣を持って戦うなんて聞いたことがないからな。今回の戦いは魔法戦だったから仕方なかったけど。しかし、バレンナでも、ソル殿でもないとすると、まさかサブロー本人が」


「いやいや、それもないよ。サブロー兄さんは単純に240人の中から選べって言ったの。そして、強くて癖のある人たちをその中隊に集めろとも言ってたの。その中隊はソルが率いるサーナバラ最強部隊にしろって。給金も上げるし、部隊の服や甲冑も特別にするのもありかなって言っていたの。どうしてだろう」


「ははあん、なんとなくサブローの考えが読めたぞ」


 オドンは顎に手をあてがい、俺はわかったぜって顔をしている。

 仕方ないなオドンさんも。サブロー兄さんと同じで子供みたい。聞いてもらいたくてうずうずしている様子がバレバレだよ。


「オドンさんはわかったの。教えて」

「おう。自分の腕に自信のある奴てえのは癖があってな、俺が一番だっていつも思っているもんなんだ。そんな奴が中隊長や小隊長になれなかったらどう思う」


「面白くない?」


「そうだ、面白くないだ。下手すると他の者たちを誘って上の邪魔をするかも知れない。そこで、お前たちは隊長じゃないかも知れないが最強部隊の一員だって言われたらどうだ」


「自慢出来て嬉しい?」


「そうだ。俺様は強いんだって認められたって思うさ。それに事実上の中隊長はソルだ、誰も勝てないさ。そこがまた味噌なんだろう。中隊長はいるが、俺たちの本当の中隊長はソルだってさ」


「じゃあ、その中隊には強いけどうまく人付き合い出来ない人たちを集めれば良いって事なのかな」

「ああ、言い方は良くないがな」


「とりあえず、1カ月間は訓練で見極めだね」


 私が言うと、ソルとオドンたち古参の者たちは頷いた。


「あっ、そうそう、6中隊以外は当面私の直轄部隊で、6中隊の戦闘部隊の指示管理はオドンさんに任せたらって、将軍をやってもらえって、サブロー兄さんが。だからオドンさん、将軍を任せます。よろしくお願いします」


 私はペコリと軽く頭を下げる。


「お、俺が将軍か? 何すりゃ良いんだ」

「それもサブロー兄さんに聞いてきたよ。将軍は中隊長たちの意見を聞いて、方針を決める係なんだって。だから、今までとあまり変わらないと思うけど」


「なるほどな、人が多くなったから役割をはっきりしろってことか。中隊長は部下の面倒を見て作戦を考えて将軍に意見を言う。将軍はみんなの意見を聞いて方針を決める。そして、バレンナに認められて動くってなるわけだな」


「サブロー兄さんは他に、中隊長が一番忙しくなるから、そのうち偵察するだけの部隊とか作戦を考えるだけの部隊を作ったら良いよって言ってたの。部隊編成は固定化する必要はなくて、オドンさんたちといっしょに、上手くいきそうな部隊編成にどんどん変えていったら良いよって。いろいろ試してごらんって」


「見かけはあの通りだが、さすがサブローだな」


 オドンはサブロー兄さんの考えをしきりに感心して何度も頷く。その仕草を見た私たちは苦笑した。


 さあ、部隊編成を兼ねた訓練を開始するよ。





いよいよ、サーナラバ軍が編成されます。ちなみにサブローも適当です。


次回、悪いが俺が中隊長だ

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