104 女だらけの領主館
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サーナバラ領主館からぞろぞろと女たちが引き揚げていく。サブローに会わせろと詰めかけていた女たちだ。彼女たちは王国軍に付いてきた女たちで、戦が終わりサーナバラでの職を得ようと考えていた者たちだった。
サーナバラ領主が若く独り身であることに目をつけ領主館に押し寄せていたのだった。
女たちが引き揚げて騒々しさが消えた館の食堂に領主一族の関係者たる彼女たちはいた。ナビ、バレンナ、ラズリとその使用人たちだ。
「凄かったね。あの人たち、ちょっと怖かったかも。トアちゃんとフィナちゃんも頑張ってね」
「そんなぁ、私は困るよバレンナちゃん。領主のサブローさんに言って何とかならないかな」
「サブロー兄さんは、相性があるからトアちゃんに任せるって言っていたよ。ちゃんと立ち会ってふたりで決めた方が良いと思うよ。合わなさそうな人だったら嫌じゃない」
「フィナは、合わない人と仕事するのは嫌ですよ。優しい人が良いです。だから、フィナはやりたいです」
フィナは、小さな手でカップを包み込むように持ちお茶を飲んだ。
「やっぱり、やらないとダメなのかあ」
トアは両手を伸ばしてテーブルにうつ伏した。
今日はサブローとホスバが揃ってパオースへ出掛けて不在だった。南地方と東地方の貴族たちの身代金分配について話し合いをするためだ。手に入れた身代金をパオースとサーナバラで山分けする話だ。
サブローは不在、それを知らない女たちが館に押し掛けていたのだが引き揚げてくれて一段落。みんなでお茶会するよとナビの一声で、ソル、トア、フィナも大きなテーブルを囲んで座りお茶を飲んでいた。
お茶請けのお菓子を頬張っているナビにバレンナが聞く。
「ナビ姉、何て言ってあの女の人たちを帰らせたの。みんな微妙な顔して帰っていったよね。フィナちゃんといっしょに何か言っていたみたいだけど」
「ん、カリッ、モグモグ、興味ある、カリッ、モグモグ、教えて」
「んぐんぐ、モグモグ、カリッ、んぐんぐ、モグモグ、カリッ、んぐんぐ」
「ナビ姉、なに言っているかわかんないよ。ラズリもナビ姉の真似しちゃダメ」
「ん、モグモグ、お菓子が悪い、意外と美味しい」
ラズリは、そう言うとまたお菓子に手を伸ばす。
コネロド商会から大漁に購入したお菓子が、テーブルの大皿の上に盛り付けられ、みんなで食べていた。ナビは両手にお菓子を持ち、右側を食べてはモグモグ、左側を食べてはモグモグとバレンナの質問に答えるには難がある状況だ。
「バレンナ様、フィナがお教えしますよ。ナビ様は、押し掛けた皆さんにサブロー様の愛人になりたいんだったら、順番待ちになるって言ったんです。6番目以降だけどそれでいいかって」
「えぇぇ、それだけで、あの女の人たちが帰えっちゃったの」
「いえ、その後にもう一言。サブロー様はフィナみたいな娘が好みなんだって。サブロー様はロリコンだから、フィナより若かったらここに残ってサブロー様を待った方が良いよって。フィナ嬉しいです。本当はフィナの事を大好きだったんですね、サブロー様」
フィナは両手の指を組んで、天井を見上げうっとりとしている。
「ナビ姉……」
バレンナは、バクバクとお菓子を頬張っているナビを見た。
「そっか、サブローさんはロリコンさんだったんだ。まっ、私には関係ないか」
「ん、トアは4番目」
「えっ、ラズリ。私、4番、なんの事?」
「そうでした。フィナよりひとつ前にトアさんがいたんでした」
「えっ、何? えっ」
うつ伏せから復活したトアが、ラズリとフィナを交互に見るが、ラズリはまたお菓子に手を伸ばし、フィナはお茶の入ったカップを見つめ項垂れている。
バレンナは苦笑いしながらソルに聞いた。
「そう言えばソルの知り合いは、ここに残るって」
「いや、依頼された仕事があるので王国のジーベニに行くと言っていた」
「それは残念だね」
「いや」
「えっ、知り合いなんでしょ。どんな知り合いなの」
「小山の温泉を探りに来たので追い返した者たちだ」
「ソル、それは知り合いとは言わないんじゃないかな」
「そうだ。我は主には知っている人間だったらいると伝えた。あとは、みなの勘違いだ」
「そうなんだ」
バレンナはトアを真似して、両手を伸ばしてテーブルにうつ伏した。
「ああ、美味しかった。コネロドさんやるなあ。これはいけるよ」
「ん、なかなか良かった」
ナビは満足したのか、お腹をさすりながらお菓子を誉める。
「よし、みんな。あらためて確認するよ」
ナビは、パンパンと手を打ち鳴らしみんなの注目を自分の集めた。
「サブローと私が、サーナバラ領主家への就職希望者を一次面談します。ここで害意を持つ人間は全部弾くから、みんなは安心して自分の受け持ちの二次面談をしてね」
ナビは、言葉を切りみんなの顔を見る。みんなのナビの言葉に頷く。
「領主館のメイド、料理人、下働きは、ホスバとトアちゃんとフィナちゃんの3人で面談してね。何人雇うかはホスバに確認してね」
「「はいっ」」
「サーナバラ商会の従業員は、ホスバとラズリの担当だよ。良い人は全員雇って」
「ん、わかった」
「最後に領軍は、バレンナとソルと領軍のみんなで2チームで面談だよ。人数が多くて大変だけど頑張ってね。こっちも人数制限はないよ」
「うん、わかったよ」
「承知」
「じゃあ、みんなよろしくね」
サーナバラのみんなで就職希望者を面談する話でした。
次回、部隊編成




